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第14話 勝利を陛下に

「して、進捗はどうだ?」


 暗闇の中、わずかな光源に照らされて浮かぶは4人の男。

 最初に声を発したのはちょび髭を蓄えた長身の男だった。


「セテラムは7割方と言ったところだな。他はあまり芳しくない」


 応じたのは頭頂部の禿げあがった男。

 さらに小太りの男も続く。


「あまり悠長に構えている余裕はないぞ。王の機嫌を損ねれば我らの立場とて危うくなる」


 これに禿げ頭が顔をしかめる。


「そうは言ってもな、こういった手法は本来長い時間がかかるものだ。これくらいの進捗が妥当であろうよ」


「陛下は結果のみをお求めなのだ。その様な言い訳など考慮なされるはずもないわ。あーそうか。貴様が無能なのを忘れておったわ。これ以上を求めるのも酷であろうな」


「この場で唯一なにもしていない輩の癖によう(さえず)りおるわ」


 小太りが目を吊り上げる。


「貴様、愚弄するか!」


「お主が売ってきた喧嘩だろう」


 二人の口論でテーブルの上に置いてある酒が揺れた。

 それを見てちょび髭が不快そうに顔をゆがませる。


「まあまあ、お二方。落ち着きなすって」


 これまで黙っていたカイゼル髭の男が割って入る。

 そして、ちょび髭に視線を向けた。


「で、ミカコルス卿はどう判断なさいますかな?」


 ミカコルスはしばし黙考し、口を開く。


「セテラムはもはや少数でも落とせよう。軍の大半はハナアカ領に移動させる」


 小太りの男――ハナアカ卿が、表情を引き締めた。


「セテラムを落とせばレハチワ軍は小国群の増援に向かわざるを得まい」


 ちょび髭はニヤリと嗤う。


「あとは手薄になったレハチワに進軍すればよかろう。ハナアカ領のアルチュー平原からミカミイ要塞を落とすぞ」


 カイゼル髭の男が禿げ頭を見る。


「オリゴンフサオ卿の薬物工作で北の小国の守りを弱体化し、落とす」


 次に小太りを見る。


「ハナアカ卿の精強な軍を中心にして我らの混成軍を組織し」


 続けてちょび髭を見る。


「ミカコルス卿の呼びかけで我らが集い、卿の策で奴らの守りの要所を食い破る」


 最後にカイゼル髭は苦笑した。


「私は金と物資の提供くらいしか貢献できませんでしたが……」


 ちょび髭はグラスの中の酒をあおり。


「謙遜することはあるまい。其方の協力がなければそも、この作戦は実現しようもなかったのだ」


 口論をしていた二人も大きく頷く。

 事実、カイゼル髭の男――ヤマハマグナが薬物を用意し、武具の新調を行い、兵糧を用意したのだ。

 彼の貢献は計り知れないだろう。


 カイゼル髭が表情を引き締め続ける。


「レハチワ王都からの増援が来る前に落とせましょうか?」


 ちょび髭は鼻をフンと鳴らし、


「問題あるまい。たとえ増援が来たとて、たかが知れておろうよ。そのためのセテラム潰しであるのだからな」


 禿げ頭が続ける。


「やれることはやり切りましたな。あとは策が成就するその時を待つのみですな」


 小太りも明るく続く。


「あの忌まわしき要塞も、此度の戦で我らの物ですな」


 カイゼル髭は髭を撫でつつ。


「……ここまでずいぶん時間がかかりましたな」


 ここでちょび髭が立ち上がると、他の3人も立ち上がった。

 それぞれグラスを胸の前に掲げる。

 それを見計らってちょび髭が音頭を取る。


「では、勝ち戦に向かうとしよう。勝利を陛下に!」


「「「勝利を陛下に」」」


 暗闇の中、低い笑い声と杯の音だけが響いていた。

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