双子の戦士
我々のパーティーには、双子の戦士がいる。
攻撃に長けた兄、防御に長けた弟。
この2人が、私達のパーティーの剣と盾だ。
彼らはとうに騎士のような高位職につける実力だが、「弟の護りに追いつくまでは」「兄の剣技に追いつくまでは」と戦士職を続けている。
これは2人の過去の物語
ダンジョンに人が集まれば、自然に都市が出来る。
ここは、そのスラム街だ。
両親がダンジョンで倒れ、孤児となったものがここには多くいる。
アランも、ここに捨てられた。
「ついてくんなよ」
アランの後ろを大柄な少年がついてきている。
顔をみれば、幼い。服も余り汚れていない。最近、ここに来たのだろう。
アランが、スラムに捨てられたのはまだ小さい頃だ。養母となっていた老婆は、昨年亡くなった。それからアランは1人で生きてきた。
「ひとりぼっちはいやだよ」
アランについて来ている少年はそういった。
「お前、名前は?」
「ディラン」
「暫く一緒にいてやるよ。ディラン。足手まといになるなよ。お前は俺の子分だ」
「わかったよ。兄ちゃん」
兄ちゃんと呼ばれたアランは、ちょっぴりくすぐったく思ったが悪い気分ではなかった。
スラムで生きるのは厳しい。アランの歳は10歳ほどだが、街からでる残飯や鼠などで食いつないで来た。街で盗みもやった。生きる為には仕方なかった。
ディランと一緒になってから、盗みの回数が増えた。ディランが見張りをし、アランが盗む。悪い事とはわかっていたが、生きる為には仕方がなかった。
ある日。アランは頭に強い衝撃を受けて、気を失った。盗み先の店主に木の棒で頭を殴られたのだ。
「ああ、俺はここで死ぬのだな」とアランは思った。
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アランは、自分の身体に大きな何かが覆い被さっているのに気づいて目を覚ました。ディランがアランに覆い被さっていた。ディランは、アランが目を覚ましたのに気付くと身を起こし、アランに言った。
「兄ちゃん。大丈夫?」
ディランは、全身に強く打たれた痣があった。アランは顔をグシャグシャにして泣いた。
「ひとりぼっちはいやだからね」
「もう盗みはやらない」とアランは言った。
「2人でダンジョンに潜ろう。俺たちは今日から、産まれ変わろう。俺たちは双子の兄弟になろう」
「わかったよ。兄ちゃん」
「俺もひとりぼっちはいやなんだ」とアランは言った。