第92話 他人の力
「ダメだ……グローディ……」
あと少し……あと少しなのに……
「常盤様!」
「……為朝さん!!」
わずかな視界の中、2人が俺に近づいてくるのが分かった。
「早く取らないと!!」
ジャスミンさんにヘッドギアを撮られたのか、俺は情報の海から引き揚げられた。
まるで悪夢から解放されたように、俺は正気に戻り、その場に倒れ込んだ。
「為朝さん……大丈夫……?」
「あぁ……な、なんとか」
ミオちゃんに抱えられ俺は立ち上がった。
「全く……無茶しすぎです」
「す、すみませんねぇ……ほんと」
まるで長距離走を走り切った陸上選手のように、俺はジャスミンさんから飲み物を無理やり飲まされた。
しばらくすると、奴が人間の姿に戻り、ふらつきながら立ち上がった。
「おのれ……人間め、どこに……そんな強さが……」
強さ……か。
「残念ながら、これは俺の強さじゃない……こいつは……社長さん、そして社長さんが作ったAIの力……かな」
「社長……AI……だと?」
「あぁ、俺はただこいつを制御できただけのラッキーな奴だったってだけさ、こいつがなきゃ、あんたをここまで追い詰めることなんてできなかった、俺は……所詮、誰かの力を借りなきゃ、強くなれなかったんだよ」
そうだ、俺だけの力じゃ、こんな強敵、勝てるわけがなかったんだ。
所詮、俺は……
「……フッ、なるほどな、誰かの力を借りる……か」
「?」
「私はわからなかった、人間にはなぜ、ここまで拒む力が存在するのか……それはやはり、誰かの力を借りているから……ということか」
「……」
「私は、他人の力など借りず……一対一で強さを極めていた……誰かの力を借りようなどと考えたこともない……どちらかといえば、貸した数の方が多いかもな、だが……誰かの力を借りるだけで……これほどまでの強さになるとは……私も、まだまだ勉強が必要なようだ」
なんだこいつ、急にしおらしくなったぞ。
「行け、奥に我らが長がいる、そいつを倒せば……」
奥か、よし、じゃあ……
「ッ!?」
……後ろを振り向こうとしたその瞬間、女が急に立ち上がって走り出し、俺らの後ろへと向かった。
そして……
「……え?」
女は……両手を広げ、血まみれになっていた。
女を襲ったのは……。
「な、なんだありゃ……」
見た目は……二足歩行をするコウモリの怪物だった。
しかも、普通じゃないのは雰囲気で分かる、この距離からでも、奴のまがまがしいオーラが伝わってくるのだ。
「くっ……外したか……」
その声は……あのVtuberの? あいつが俺らに妙な噂を?
って、今はそんなことどうだっていい!!
「おい! しっかりしろ! おい!!」
俺は女に駆け寄り、体を寝かせた。
「くっ……私の心配よりも……自分の心配をしたらどうだ?」
「何故だ……なんで俺たちを!?」
「素晴らしい戦いをしてくれた礼だ……奴は戦いの結果に水を差した……それを防いだだけだ」
「そんなことで……」
なんだよこいつ……そんなことの為に命を張るなんて……
「常盤様! あの怪物……様子が変です!」
「え?」
コウモリのバケモノは突如人間の姿になり、頭を抱えて苦しんでいる様子だった。
あれは……女?
「な、なんで……完璧に吸収したと思ったのに……どうして……嫌だ……リラ……きゃあああああああああ!!」
奴は叫び声を上げると、再び怪物の姿へと変貌した。
「フフ……馬鹿な奴だ、この私を取り込むことなど……できはしないのだ!!」
ど、どうする? と、とりあえずグローディを……
「……くっ」
ダメだ……眩暈が……クソ……俺には、こいつを使いこなせないというのか!?




