第89話 仇
「随分と……静かですね」
「あぁ、確かに……」
今まで迷い込んだ洞窟は、入った途端に怪物に襲われていた。
しかし、今回のは実に簡素だ。
ずーっと一本道が続いている、スマホを見ても一本の線がずっと先に続いていた。
なんだろうか、これは……歓迎されていると言うべきなのだろうか?
いや、あの狼の女の発言からしてただの挑発なんだが……。
「……おや?」
スマホを見ると、一本線の終着点が見えてきた。
巨大な長方形が表示されてきたのだ……ここに奴がいるというわけか?
「……為朝さん」
「どうしたの? ……あっ」
目の前、明らかに「どうぞお入りください」と言わんばかりの巨大な扉が見えてきた。
ただの扉だというのに、獰猛な生物かのように威圧感を放っている。
「さて……腹は決まってるわけだし……行くか」
扉に近づき、3人がかりで開けた……
そして、扉の中の様子が明らかになる……それはまるで鍾乳洞の中に部屋を設けたような感じだった。
なんか、いかにも「悪役の住処です」と言わんばかりの感じだった。
そして……この部屋の中央……そこに、一人の女が後ろ向きで座禅を組んでいた、あいつは……
「……あれは、ルカ様を襲った……」
「……」
あいつが……社長さんの仇。
女はこちらの気配に気づいたのか、こちらに振り向いた。
「……待っていたぞ、愚かにもダンジョンに立ち向かう者たちよ」
「ほう、そりゃありがたい肩書だな、全く嬉しくはないが……」
俺たちは攻撃の構えをしながら一歩ずつ近づいていく。
俺はスプレーとライターを持ち、ミオちゃんは刃物類、ジャスミンさんは己の拳を構えて。
「……で、あんたの目的は? ここで一戦交えようってか?」
「……無論だ、ただし、一対一で」
「はぁ?」
「私は元より、複数人で相手をするのは好まぬ……お前らのうちから一人……前へ出ろ」
「……人の仲間を不意打ちで鎮めておいて、よくそんなことが」
俺は率直に思ったことを口にした。
すると奴は……突然として、構えを解いた。
「……あいつは、無事なのか?」
「は?」
「無事なのかどうか聞いているんだ、あの傷じゃ、死んでもおかしくは無いだろう」
「……」
何故こいつは社長さんの安否を気にする?
「……瀕死だ、目を閉じたまま、目覚めていない」
「……そうか」
「……一体なんのつもりだ? 襲った結果を知りたがるなんて、卑怯者の癖に随分と……」
「……私は元より、不意打ちは好まぬ、一対一で勝負をして、勝利を勝ち取る……そんな美学を愛しているのだ、不意打ちについては謝ろう……すまなかった」
「……」
こいつ……調子狂うな、俺らを殺したくて呼んだんじゃないのか?




