第88話 敵の本丸へ
「お二方、そろそろ目的地です」
「……よし、ミオちゃん、準備は?」
「……もうちょっと」
目的地である巨大な洞窟……遠くからでも、その存在感はすさまじいものだった。
「やっぱりあれは……洞窟というよりも」
「山……ですかね」
……あそこに行かなきゃいけないのか、ちょっと怖いが、都市一つ消えるのはそれはそれでまずい。
車は少し離れたところで止まり、準備を整えることにした。
「社長さんが託してくれた……この衣装」
社長さんが用意してくれた俺らの分の強化スーツ……なんだが、想像していた物とは違っていた。
まず、俺のスーツは……どういうわけか、RPGでよく見る男性魔術師みたいなローブと、装甲が入ったスーツ。
ミオちゃんは、忍者みたいな動きやすいもの。
ジャスミンさんは……前に映像で見たチャイナ服……から、少し装甲を足したものだった。
「この格好で行くのか……全く、社長さん、こんな時でもふざけてんのか?」
「結構な、ルカ様はいつでも真剣ですよ、戦いにもユーモアを、ということでしょう」
「ユーモアねぇ」
まぁ、社長さんは確かにそういうところあるかもな。
「……さて、俺は準備完了、お二人は?」
「僕……行けます」
「私も、準備完了です」
「……よし、行くか!」
車のドアを開け、俺たちは地に足を着いた。
そして、ゆっくりと、しかし着実に歩き、洞窟へと向かった。
☆
暗闇の中、リラはスキップをしながら歩いていた。
そして、しばらく進んだ後……立ち止まった。
「魔王様ぁ、いらっしゃいますかー?」
まるでやまびこをするように、暗闇に向かって叫んだ。
その声に答えるように、それは現れた。
リラの倍はある体、漆黒のローブを身に纏い、顔も暗闇に隠れていた。
「……作戦は順調か?」
「順調ですよー、こちらをどうぞぉ」
リラはタブレットを取り出し、世界中の報道を映した。
『国土の半分が洞窟に……』
『……首長は、軍隊を国境付近に……』
『侵攻を開始……』
「御覧の通り、洞窟は浸食、国は混乱、場所によっては戦争まで……順調でしょぉ?」
「フフ……素晴らしい」
魔王は暗闇の中で……高らかに笑った。
「そうでしょう……素晴らしいでしょう……でも」
リラは……タブレットを魔王に投げつけた。
「……何をする!?」
「……邪魔」
リラは……ハチのような怪物に変身した。
「邪魔なの……レイちゃんとの世界に……あんたは!!」
リラは踊るように一回転をし、毒針を複数発射した。
「ぐはっ……」
「痛い? でも安心してね……すぐに楽になって……私の言う事しか聞けなくなっちゃうからぁ」
リラが放った毒針、それは各国の首長の洗脳に使用したものと同一ものだった。
それを使用し、首脳らを洗脳し、混乱の隙に洞窟を蔓延させ、やがて自分らと同じ世界にする……それが作戦であったが、リラには別の思惑があった。
「さぁ……私たちだけ……レイちゃんと私だけの世界!! そこで私たちは幸せに暮らすの!! 私の事だけを認めてくれた、レイちゃんと!!」
魔王は苦しみながら、リラの奇怪な主張を聞く……
やがて、魔王は……何事も無かったかのように直立不動になった。
「やった……やった!!」
リラは、まるで何かを讃えるように喜んだ。




