第84話 宣戦布告
「現在私は、先日現れた巨大洞窟から数百メートル離れた位置にいます、ここから見てもわかる通り、巨大洞窟は出現当初、他地域にも存在する洞窟と同じようなものだったのですが、現在は、ここから見てもわかる通り、もはや洞窟と言うよりも……山のように見えます」
都市部に突如現れた巨大洞窟……現在、多くのメディアはそれに注目していた。
都市中心部に警戒区域が敷かれ、政府の中枢は他地域に移動、メディアのカメラは洞窟と言う名の山に視線を送っている。
「えー、つい先ほど、突如内閣総辞職が起き、国会が混乱している中ですが、防衛大臣が直々に出動要請をし、御覧のように、厳戒態勢が敷かれています」
警察が規制線を張り、自衛隊も出動要請が出るなど、厳戒態勢が敷かれていた……その影響で、規制線の外では、抗議の声を上げる者たちがいた。
「自衛隊出動反対! 防衛大臣の要請は職権乱用だー!」
「洞窟はアメリカ軍の陰謀だー!」
インフルエンサーの動画に影響を受けたであろう老若男女が、プラカードを上げ、洞窟に目掛けて罵声を浴びせていた。
彼らの目に映る洞窟は、まるで巨大な権力か何かのようだった。
そして、目線を向けているのは日本のメディアやデモ参加者だけではない。
『ご覧ください、日本国内にこれほど大きな洞窟が……』
『日本政府当局は、軍や警察を出動し……』
様々なテレビ局……海外の一部報道機関もこの洞窟に目を向けている。
その人種は多種多様で、この一帯だけ国際都市になっているようだった。
世界中で騒動となっている洞窟騒ぎだが、これほど大きな洞窟は前代未聞だった。
「これほど大きな洞窟は世界中を見ても例がなく、国連は……おや?」
規制線の中……そこから、金髪の女、レイが歩いてきた。
「ちょ、ちょっと君! どこから入ったんだ! 今すぐ出なさい!!」
警察の1人がレイを保護しようと向かった……が。
「……邪魔だ」
「うぐ……」
綿を掴むように警官の首を抑え、デモ隊に向けて投げ捨てた。
デモの参加者は叫び声を上げながら、持っていたプラカードや拡声器を捨てて散り散りになっていった。
カメラは例の釘付けになり、キャスターたちはその力を恐れ一歩ずつ下がっていく……
「……獣化」
レイは狼の姿になり……天に向かって咆哮を上げた。
報道陣は身の危険を感じ、一目散に散らばった。
自衛隊と警察はなんとか立ち向かおうと銃口を向けるも……
「無駄だ」
レイが腕を一振りすると、銃口を向けた一行は、埃のように吹き飛ばされていった。
レイはそのまま残されたカメラへと向かい、自分に向けて語りだした。
「……ダンジョンに対抗する愚か者ども、これは宣戦布告だ、いますぐこの洞窟へ来い……決着をつけてやる……12時間以内にやってこなかった場合、都市の一部をダンジョンで覆いつくす……」
そう告げると……レイはカメラを破壊した。




