第79話 遺言
『オホン、これを見ているという事は、私の身に何か起きたか、あるいは会社で何か起きたか、はたまた「ちょっとパソコン覗いて恥ずかしいデータ見つけてやろう」と思い込んでるかのどれかだろう、一番最後の意味でこれを見ているのなら今すぐ閉じろ、そんなものはないからな』
……社長さん、相変わらずだな、勿論一番最後の意味ではないのでこのまま再生を続けた。
『これを見ているのはトムか、ジャスミンか、はたまたミシェールか……まぁ誰でもいい、実は今この映像を撮っている段階で、切り札となるものを開発している』
切り札? なんだそりゃ?
映像の中の社長さんは、枠外からワイヤレスイヤホンのようなものを取り出してきた……これがそれ?
『今それが最終段階に進んでいるのだが……これがどうも厄介でな、これは言わば「グローディと人間を一体化させて、より作業効率を高める代物」なんだが……これを装着すると、脳が拒絶して、場合によっては……っとここからは言わんでおこう』
えぇ……そんな恐ろしいもの開発してたのかよ。
『これに対抗できるのは、「強い意思がある者」「誰よりも強い根性がある者」「何かを決意して全力で戦える者」……かもしれないな、そんで、試作品が今、私の部屋にある、試作品なので目立たない所にあるぞ、全力で探してくれ、ヒントは……「超絶素晴らしい者の中」かな、まぁこれを見ている奴ならすぐわかるだろうさ』
なんだそのヒント……ていうかそれ使ってどうしろってんだ。
『これを使えば、恐らく、今後の洞窟探索で大きく役に立つことだろう、グローディの検索能力、そしてお前たちの力があれば、きっと今後の為になる、私がいなくてもきっと大丈夫だろう』
「私がいなくても」って……まるで死を悟っているみたいじゃないか。
これが……遺言ってわけじゃないよな?
『おいおい、もしかして「これ遺言か?」とかなんとか思ってるんじゃないだろうな? 安心しろ! 私は無敵だ!』
やべ、思ってることバレた……なんか無敵だとか、社長さんらしいな。
俺は思わず笑みがこぼれた。
『きっと何かあっても必ず戻ってくる! それまで……この試作品を使って頑張ってくれ、お前らならできる、そう信じてる、だから遺産の分配とか今は言わないからな! 現時点で私の金や資産は誰にも渡さんからな』
信じてる……か、俺、本当にできるのかな?
『特にトム! お前は私が見込んだ人間だ、お前なら、きっとこの試作品を使えるであろう、それにジャスミン、お前ならこの試作品を改造することも簡単なはずだ、ミシェールは若いから、きっと柔軟に対応できるだろう』
なんでかな、まだ出会ってそんなに経ってないのに、どこからその信用が出るのであろうか。




