第73話 襲われたときの事
「あの……あの時、何があったんですか?」
「……私も、突然の事で何が何だか……」
「覚えている範囲で良いので」
「……」
ジャスミンさんは心を落ち着かせるためか、深呼吸をし、話し始めた。
「あの時、私はルカ様の指示であの場所へ向かいました、それで……降り立った途端、前の方から変な人が来たんです」
「変な人?」
「あれは……言ってしまえば、狼のような手足を身に着けた人間……と、言いましょうか」
「……言っている意味がよくわからないんですけど」
「私も……それ以上どう表現すればよいのか、そんな人物が突然現れて……私たちに襲い掛かったんです」
ジャスミンさんの困惑気味を考えると、本当にそれ以上の表現は難しいようだ。
手足が狼? 狼人間がまさかリアルにってことか?
「それで……こんな風に」
「はい、私は守ろうとしましたが、そいつに吹っ飛ばされてしまって……ルカ様は……こんな姿に……」
「……」
ジャスミンさんは涙ながらに語った、俺は励ましの言葉を述べたかったが……言葉が出なかった……それがとても悔しかった。
「それで、その狼はどこへ?」
「……動かなくなったのを見た後にどこかへ行きました……確か、『こんな奴らにダンジョンを消されていたの』とかなんとか……」
「ダンジョン……あの洞窟の事か」
狼……怪物……まさか。
「もしかしてですけど……それって、あの洞窟の怪物たちと関連があったりするんじゃ?」
「確かに……ですが、洞窟でもないのに何故?」
「……しかも、何故、社長さんやジャスミンさんをピンポイントで」
謎が多すぎる……社長さんをこんな目にさせるなんて、ただ者ではないし……
「……社長さん」
思わらず俺は、社長さんの手を握った。
何故こんな変わり果てた姿にされなきゃいけないのか、一体社長さんに何の恨みが……
「社長さんの容態はどうなんですか?」
「……なんとか生きている、と言いましょうか、お医者さんも『運良く生きている』と仰っていましたね、一時は本当に危なかったので、まさに奇跡としか……」
これでもマシな方なのか、それは果たしていいのか、悪いのか……
『父さん! 父さん!』
……思い出してしまう、父さんが社長さんと似たような姿になってしまった時の光景が。
社長さん……頼むから、違うところに旅立たないで欲しい、また俺らの所に戻ってきて、引っ張ってくれよ……
「……常盤様、長居をすると病院に迷惑ですし、行きましょう」
「……そうですね」
可能であればずっとそばにいたいが、そうもいかないだろう。
やるせない気持ちはあるが、俺たちは立ち上がった。
「……社長さん、次会った時は……どうか、目を覚ましてくれ」
そう言い残して、病室を後にした。




