第72話 変わり果てた姿
「じゃあ、行ってくるから」
「いってらっしゃい!」
「あなた、気を付けてね」
幼少期から、父は頻繁に家を出ていた。
父の仕事は、言わば国を守る仕事、自衛隊員だ。
父はいつも言っていた、「俺はお前たちを守ると同時に、国全部を守っているんだ」と。
俺が誰かを守る仕事に就きたいと考えたのは、そんな父親の影響もあったのかもしれない。
そんな父親だったんだが……
「父さん! 父さん!」
ある日、いつものように家を出た父が、変わり果てた姿で戻ってきた。
訓練中の事故で、帰らぬ人となってしまったんだ、当時、高校生ぐらいだったかな……
憧れていた父親が急にいなくなる、いつかはそうなるだろうと思ってはいたけど、こんなに急に来るとは思っていなかった。
やっていた部活も辞めてしまい、変わり果てた父を見てトラウマになったのか、何かと言い訳して自衛隊にも、警察にも入ることは無かった。
それで、防衛産業の会社に入って、仕事して、怒られて、それで……
☆
「……ん?」
俺……なにしてたんだっけ? 確か、ミオちゃんと洞窟の中に入って、それで……
「……」
部屋の中に響く一定のリズムで鳴る電子音、それで俺は全てを思い出した。
そうだ、社長さんとジャスミンさんが血まみれになって、一緒に救急車に乗って、俺は……
「社長さん……」
目の前に眠る社長さん、それは前まで調子よく俺をからかっていた元気な姿ではなく、ベッドの上で点滴とコード類が繋がれた姿だった。
繋がれた心電図が生きていることを示してはいるが、果たしてこれは生きていると言えるのだろうか……
「……常盤様、起きましたか」
……後ろから声が聞こえ、俺は振り返った。
「ジャ、ジャスミンさん……」
「なんですか、そんなバケモノを見たような表情は」
「い、いや……その……生きてたんですか」
「御覧の通りピンピンですよ」
ジャスミンさんは確かにピンピンしている……のだろうか?
頭には包帯が巻きつけられていた、傍目で見たら心配になる姿だ。
「あの……ジャスミンさんは大丈夫だったんですか?」
「えぇ、私は何とか……ですが……」
「……」
ジャスミンさんの言いたい事は分かる、社長さんは……守れなかった。
ジャスミンさんの表情は、どこか複雑に見えた。




