第62話 氷の洞窟
「……ん?」
……ここは? あの洞窟の中なのか?
辺りを見渡すと、氷柱のようなものが点在していて、まるで鍾乳洞のようになっていた。
というかちょっと寒いな……
「なんだここ……息も白くなってる…‥」
外と気温差がありすぎる……こんなん凍え死ぬ……
あ、そういえばミオちゃんは?
「……」
ミオちゃんは予想通り、肩をすくめて震えていた。
このままじゃ風邪引いちゃうな……そうだ。
「ミオちゃん、これ羽織って」
俺はそっと上着を脱いでミオちゃんに差し出した。
こういうのよくベタな漫画で目にするけど、まさか本当にやることになるとは思わなかったな、状況が状況なだけにロマンチックでもなければそういう雰囲気でもないんだが。
「あ、ありがとう……ございます……た、為朝さん……寒く……ないんですか?」
「そりゃ寒いけど、別に死ぬほどじゃないし、ミオちゃんの方が寒そうだったし」
「そ、そう……ですか……ありがとう……ございます」
ミオちゃんは腕をクロスさせて己の体を隠すように上着で自分を覆っている。
多分焼け石に水だろうが、何も羽織らないよりかはマシだろう。
えっと武器は……確か念のために催涙スプレーとライターがあったはずだ。
よし、準備は万端だ。
「と、社長さんに連絡しなきゃな、グローディ、鏡ルカに電話を繋げて」
『かしこまりました、グローディネットワークより、鏡ルカ様に繋げます』
さぁ、繋がれ……というか、調子乗って上着渡したけど、寒いな……
『トムか!? お前無事なのか!? 向こうの方でダンジョンらしき魔法陣が見えたからまさかだと思ったんだが……』
社長さんはワンコールで通話に出た。
「社長さん! 今どこにいるんだ!? 早く来てくれよ!」
『馬鹿! 今日傘しか持ち合わせがない中行ったら玉砕するだけだろう! 今ジャスミンを待っているところだ! 恐らくすぐに来るとは思うが、それまで出来るだけ先へ行け! すぐに追いつく!』
「……わかった! で、できるだけ早くな……」
寒いから早く来てくれないと凍え死ぬ……
『いるのはお前だけか!? 番場さんに聞いたところ廃工場らしいが……』
「い、いや……」
ふとミオちゃんに顔を向けると、ミオちゃんは気まずそうな顔をしていた。
これは……言わない方がいいのか?
「……あぁ、俺一人だ、先へ進んでるから早くな!」
『わかった! じゃあまた後程な!』
電話を切り、俺はミオちゃんと手を繋いだ。




