第58話 いかにして導入したか
地下鉄で移動し、工場が数多く存在する駅で下車した。
この辺は何回か通過したことはあるが、降りるのは初めてだ、小さい町工場からデカい企業の工場もあったりして、いつも朝ラッシュの時間は作業服を着ている人や工場関係者と思われる人や、工場に用があるであろうビジネスマンが一斉に下車をする、周辺もその経済効果でかなり潤っているとも聞いたことがある。
実際、駅を降りた瞬間、大量の工場の中にコンビニやラーメン屋やファミレスが点在していた。
「さて、まずはあそこだ」
社長さんが指を差したのは、小さな工場が立ち並ぶ区間だ。
「この傘も、お前が使ってるスプレーも、水鉄砲も、あと私が着ていたバイク用スーツも全てあそこの工場の人たちが作ってくれたんだ」
「へぇ、そんで、グローディも導入してくれたんだってか?」
「そうだ」
「でもグローディって工場のどこに使われるんだよ?」
これは率直な疑問だった、言い方は悪いがAIといえばどちらかと言えばそういう町工場の職人さんの仕事を奪ってしまう立場だと勝手に考えていた。
社長さんはそんな俺の考えなどお見通しであるかのように語り始めた。
「あのな、今の時代みんなスマホを持っていると言っても、年寄りは決済アプリやメッセージアプリぐらいしか使わないだろう?」
「まぁ例外はいるけど大多数はそうだろうな」
「町工場は高齢化が進んでいて後継者がいない状況だ、故にイレギュラーが起きた時に瞬時にリカバリーをする方法とか、新たな得意先の提案とか、仕事の効率化を諮る時に助言する人もいないわけだろう? そこでグローディの出番ってわけだ、いくら高齢者もスマホを持つ時代とは言え、グローディみたいなAIを使ったことある人はごく少数だからな」
「なるほどな」
年を取るほど固定された考え方に捕らわれ、新しいものを拒絶したり怖がったりする……これはいつの時代も変わらない。
実際前の会社の部長も「上の連中は違う事をやろうとしない」と不満を漏らしていたし、後継者がいないとなると若い考えも入ってこない。
そういう時に新しい考えを持つグローディが助言をする役目を担うってわけか。
「で、その結果『新しい我が子ができたみたいだ』と評判でな、前も言ったかもしれないが工場設備にグローディを入れたんだ」
「でもそういう職人さんって拘りとか強いんじゃ?」
「あぁ、だからそういうこだわりを阻害させないように私も工夫したんだ、大変だったんだぞ? 『この工程は自分の考えでやらせるようにしてくれ』とかなんとか注文が多くてな……ま、その結果今我々が使ってる品々があるわけで、職人さんのタメになる話も聞けて楽しかった」
「へぇ」
楽しかったねぇ……正直職人さんって硬いイメージがあって、頑固な人が多そうな感じがするが……なんか怖いな。
社長さんを日光から守りながら、俺たちは歩き始めた。




