第54話 契約
それから数十分、休憩や飯を挟んで社長さんの家がある高級住宅街へと着いた…‥のだが。
「あの……このトラックはどこに?」
さすがにこんなトラックで住宅街を爆走するのはご近所迷惑だ。
それにいくら社長さんの家が広いとはいえ、こんなクソデカいトラックが入るスペースなんて……
「ご安心を」
ジャスミンさんはまるで俺がそんなことを言うのを予知していたかのように答えた。
前を走る社長さんは住宅街の中に……入らずに迂回しだした。
俺が乗るトラックも、まるでそれを追うように社長さんについていく。
しばらくすると、社長さんの家の崖の下へと着いた。
そこには……
「なんだ……あれ」
そこにあったのは、巨大なシャッターだった。
なるほど……納得したぞ、あれも一応社長さんの家の一部だな。
「あれはルカ様専用の車庫です」
「……でしょうね」
答え合わせ完了、やっぱりそういうことか。
シャッターに近づくと、劇場の垂れ幕のように上がり始め、中へと入る。
シャッターの中はスパイ映画のような感じだったが、中にあった車両は前に乗ったピンクの高級車だけだった。
トラックがバック駐車で止まり、俺も扉を開けて地に足が着いた。
社長さんもバイクを停めて、伸びをしていた。
「よし、部屋は前と同じだ、飯の用意ももうすぐだからな」
「あぁ、ありがとう……」
「ジャスミン、こいつの荷物を……」
「あぁそれはいいよ、ジャスミンさん飯の用意とか他にもやることあるんだろ?」
「遠慮しなくてもいいじゃないか、今日からお前の家でもあるんだぞ?」
「だからだよ、やれることならやるからよ」
そう言って荷物を取ろうとコンテナに向かおうとしていたのだが、既にジャスミンさんが抱えていた。
「いやあの……」
「別に、運べますけど? それに私は仕事ですから、仕事を奪わないで頂けますか? 常盤様」
「あ、はい……」
やっぱり圧があるな、ジャスミンさん……
「あぁそうだジャスミン、持っていくついでにミシェールを呼んできてくれ」
「かしこまりました」
「トム、契約の話を改めてするから先に居間へ行くぞ、来い」
社長さんの手招きで、俺は居間へと向かった。
☆
「よーし給料とか雇用契約とかもろもろの書類だ、あと社会保険と……」
社長さんが色んな書類を広げ始め、俺は一個一個目を通し、サインとハンコをしていく。
今時電子証明とかでハンコを廃止する動きがあるが、社長さんは「ハンコの方が信用性がある」とか言って譲らない様子だ、何故アメリカで生活していたのにそこは日本流なのだろうか?
にしてもこの初任給、明らかに桁違いだ、壱. 十. 百. 千. 満点……みたいな桁数だ、「桁数間違ってないか?」と言ったら「なんだ? 足りないってのか?」と返された。
危険手当など色んな手当を含めた価格などと言っていたが……
「よし! これでもうお前は正式にzAIの社員だ! ようこそ! 常盤為朝ことトム!」
「あぁ、改めてよろしくな、鏡社長さん」
お互いに握手をし、契約成立を表した。
「さて、あとはミシェールだが……なんか遅いな」
確かに、俺が書類を書いてある間に来てもいいはずなのだが……何かあったのだろうか?
そんな風に考えながら待っていると、突然けたたましい足音が鳴り響き、今の扉が思い切り開いた。
「はぁ……はぁ……ルカ様……大変です!」
「ど、どうしたジャスミン」
姿を現わしたジャスミンさんは息を切らしていた。
社長さんも驚いたのか、困惑している様子でジャスミンさんに向かった。
俺も驚いてジャスミンさんに使づいた。
「こ、こんな置き手紙が……」
ジャスミンさんが見せた紙切れに走り書きで書いてあったのは……
『いままでおせわになりました なにもおれいできなくてごめんなさい ミオ』
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