第20話 メイド
「おっと、多分……あの車だ」
社長さんが指を差した先には、こちらに近づいてくる一台の車……なんだが。
「おいおい……本当にアレなのか?」
「この辺に他の車が見えるのか? トム」
こちらに近づいてくる車、どうも周りと浮いている
ピンク色……というよりマゼンタの、遠目で見ても分かるくらい高そうな車、それがこちらに近づいているのだ。
エムブレムには王冠が描かれていて、傷つけたらその時点で10万円は吹っ飛びそうな車だ。
やがてその悪目立ちする車が、公園の入り口……俺たちの目の前に止まった。
「おい社長さんよ」
「なんだ?」
「なんでこんなクソ目立つ車を購入したのを忘れんだよ」
「いやまぁ、最後に乗ったの多分1か月前だし……」
だとしても忘れらんねぇよこんな車! こいつ本当にXetaで部長だったのか?
そんなツッコミを入れる隙もなく、運転席から人が降りて来た。
メイド服で、俺よりも数十センチも高い身長の人物、オタクの街にいそうなメイドさんではなく、海外の中世を題材にした映画に出てきそうなメイドさんだ。
「おぉジャスミン、早かったな」
「ルカ様、グローディの営業お疲れさまでした、地震に遭遇して災難でしたね」
「いやいや、まぁ面白い経験もできたからな、それよりも紹介しよう、これが私の所の使用人のジャスミンだ」
「初めまして、『ジャスミン・ホー』と申します、お見知りおきを」
この人がジャスミンさんか……随分丁寧な人だな、膝に手を合わせて綺麗な姿勢でお辞儀をしている。
しかも名前と見た目からして日本人ではないのに、日本語がとても上手だ、俺よりうまいかもしれない。
と、俺も自己紹介しなきゃな。
「常盤為朝と申します、社長のルカさんにはお世話になりました」
「常盤様ですね、よろしくお願いします、そちらは……」
ジャスミンさんは俺の後ろに隠れるミオちゃんに視線を向けた。
ミオちゃんは随分人見知りらしい。
「あぁ、この子も俺と同じ社長さんに世話になった、鞍馬ミオちゃんです」
「鞍馬様ですね、よろしくおねがいします」
ミオちゃんは、ジャスミンさんのお辞儀に対し、一応会釈を返した。
そんな怖がる必要はないと思うが……確かに言っちゃ失礼だけど、身長が高くて威圧感があるが。
「よし、自己紹介も済んだところで行こうではないか諸君、ジャスミン」
「はい、こちらへ」
ジャスミンさんが後部座席のドアを開け、俺とミオちゃんは乗り込んだ。
社長さんは自分でドアを開け、助手席に座った。
「では参ろう! わが家へ!」
ジャスミンさんがエンジンを掛け、社長さんの家へと走り出した。




