夢じゃない!?運命的な出会い
まさかオムライスをるんるんで待っている時にこんなことが起きるとは思ってなかった。
私のちょうど斜め前の席で若い大学生くらいのワタワタした男の子がひとり、深刻そうな表情の店員さんと話し始めたのだ。
オムライスを待っていると視界に入ってきたのは慌てている大学生くらいの男の子。
食べ終わって席を立とうとしたところをどうやら慌てている様子。
?
「どうしよ、やばい、、、」
小さい声ではあるがぼそぼそとそんな言葉がこちらに聞こえてくる。
店員
「困りましたねぇ、どうしましょうか。」
店員さんも深刻そうな顔をして困っているようだ。
ちょうどお店は混雑していない時間帯で、周りがざわざわ騒ぎ始めたりすることはない。けれどこんな状況に滅多に鉢合わせない私はそわそわしてしまう。
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「お姉さん!!!」
明日香
「???」
突然その男の子が席を立ち上がって私のとこへ走ってきた。
明日香
「な、なんでしょうか?」
こわいこわい、なにこの状況!お姉さん何も持ってないよ〜(困惑)
?
「実は財布を忘れてしまって、後で返すので、あの、そのー、お支払いを今だけ!助けて貰えませんか!?」
まさかの!!!!財布を忘れて気づかずに食事を済ませてしまった少年……。
まぁでも大学生くらいだし、後で返すって言ってるしかなり困っててとんでもない状況だし、、モヤモヤと考えた結果、一旦私はその少年を助けることにした。
明日香
「いいですよ、私が払います。」
?
「わぁー!お姉さん!!!」
少年はキラキラした目でこちらを見ている。
こんなこと滅多にないんだからね!と思いながらとりあえずお支払い。
店員さんにペコペコと少年は謝ると一旦その場は落ち着いた。
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「あの、お金、、俺財布とってくるんで、お姉さんまだ食べてませんよね!?後で連絡ください!」
少年はそう言って連絡先を書いた紙を私のテーブルに置くと走ってお店を出て行ってしまった。
この数分ですごい展開だなぁ、、あの子がもしお金を返さずにそのまま逃げてしまってもしょうがないかぁくらいで払ったから別にいいけど、連絡先置いていったのかぁ、もしかして本当にうっかりで普段はちゃんとしてる子なのかな。
そんなことを考えながらやっと来たオムライスを食べて、彼が置いていったメモを広げると、ケータイに入力して連絡先を追加してみることにした。
IDを入力して、ぽんっとプロフィールの画像と名前が出てきた。
プロフィールはさっきの男の子の顔、名前はYになっている。
Yがつく名前の子なのかな。
とりあえず、
「初めまして。さっきのお姉さんです。」
と連絡をしてみる。すると秒速で既読がついた。
返信もすぐに来て、
「お姉さん!さっきはマジ助かりました!!お金どこで渡したらいいですか!?まだ帰ってなければさっきの店の前まで俺行きます!」
慌てて打ったように詰め込まれた文章が送られてきた。
悪い子ではなさそうだな、と感じる。
「それじゃあお店の前で会いましょう!」
と返信をすると、私はお店のお会計を済ませて外に出た。
数分すると、息を切らしながらさっきの男の子が走ってきた。その姿を見て犬、、、?とぼんやり思ってしまった私は失礼なのだろうか。
?
「おねえさーーーん!」
明日香
「そんな大きい声で言わないで!」
路上で手をぶんぶん振ってお姉さんなんて言うから通行人から大注目を浴びてしまう私、恥ずかしいです、、。
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「さっきはありがとうございました!マジ助かりました!」
駆け寄ってくるなり少年はお金を握りしめて私の手のひらにハイハイ!と渡してきた。
明日香
「あ!ありがとう!」
なーんだ!本当にちゃんとしてる子じゃない!
半信半疑だった私はちょっと嬉しい気持ちになった。
?
「俺ゆいと!平野唯斗!」
突然の自己紹介、若いなぁ。
明日香
「唯斗くん、私は明日香です。」
一応流れに合わせて自己紹介してみる。
唯斗
「明日香さん!いやー、マジ助かりました!家出る前は俺財布持ったつもりで、食べ終わったら何故か無くて家に忘れてて、明日香さんが助けてくれなかったら俺死んでたかもしれない…」
死ぬなんて大袈裟な!と思ったけど確かに大変なことにはなってしまったかなぁ。なんて思ったり。。。
明日香
「なんとかなってくれてよかったよ、それじゃ私はこれで」
用件は済んだし帰ろうと思ってそう言ってその場を立ち去ろうとした。すると、ぎゅっと腕を掴まれた。
なになになに!?
明日香
「はい!?」
唯斗
「もう帰っちゃうんですか!?」
帰るに決まってるでしょ?用が済んだんだから!
何を言ってるんだこの少年はという顔で彼を見てみる。
唯斗
「ちぇ、せっかく運命的な出会いだと思ったんだけどなぁ……」
どの辺がですか!?たしかにある意味運命だけど、、、!
明日香
「運命もなにも、もう用件は済んだので帰ります。」
唯斗
「えー、やだ、俺お姉さん結構タイプだもん」
新手のナンパ師のような発言をするとそのままついてくる唯斗くん。
少年、お家に帰る時間だよ。と思いながらしばらくスルーして歩いてみたけどまだまだついてくる彼。
えーん、困ってしまった。
私はこの子を助けないほうがよかったのか!?と今更後悔。