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8話 未知との遭遇

「Eランクか…一歩ずつだな。」


俺は手のひらにじっとりと汗をかきながら、目の前の掲示板を見上げていた。そこには、次に挑むべきダンジョンの情報が記載されている。


『Eランクダンジョン:横浜地下遺跡』


Fランクとは段違いの難易度になるという話は聞いていた。敵が強くなるのはもちろん、トラップや迷路構造など、全体の仕掛けも格段に複雑になるらしい。


「本当に行くの?」


隣で心配そうな顔をする葵。


「もちろん。前に伸びる腕のバグ技を見つけた時から、これが俺にとっての大きな武器になるって思ってる。あれを使えば、この先も突破できる。」


「でも…まだ慣れてないんでしょ?無理しすぎないでよ。」


彼女の心配はもっともだ。伸びる腕のバグ技を見つけたのは以前のFランクダンジョンでのことだったが、まだ完全に使いこなせているとは言えない。だが、この先の戦いでは、間違いなく切り札になるだろうと感じていた。


横浜地下遺跡に挑む前に、装備やアイテムの準備を念入りに行った。ダンジョン協会の支部では、回復結晶や解毒剤、状態異常対策のアイテムが販売されている。


「これだけあれば大丈夫だろう。」


俺は買い揃えたアイテムをバッグに詰め込み、準備を整えた。また、防具の点検も行い、前回のFランクダンジョンで手に入れた軽装鎧をきれいに磨き上げる。


「準備ばっちりだな。」


「気を抜かないでね。Eランクは今までとは全然違うって話だし。」


葵も一緒に自分の装備を確認し、気を引き締めていた。


翌日、俺たちは横浜の古い教会の地下に設置されたダンジョンの入口に立っていた。


『横浜地下遺跡』の名にふさわしく、入口は石造りの重厚な扉に囲まれている。扉の上部には古代文字のような刻印がされており、どこか不気味な雰囲気を醸し出している。


「本当にここに入るのか…。Fランクの洞窟とは全然違うな。」


「これがEランクのダンジョンなんだね。」


俺たちは緊張しながらも扉を押し開け、ダンジョンの中へと足を踏み入れた。


ダンジョン内は薄暗く、冷たい空気が漂っている。進むうちに、壁や床には明らかに人工的な仕掛けが見受けられた。


「これ…床に違和感があるな。」


「またトラップかもしれない。慎重にいこう。」


葵の指摘に従い、俺は拾った石を色の違う床へ投げ込んだ。すると、床が崩れ落ち、鋭い槍が飛び出してきた。


「うわ、危ない!」


「Fランクにはなかった仕掛けね…。これからどんどんこういうのが増えるのかな。」


そんな話をしていると、次の敵が現れた。


『アーマードスケルトン レベル:8』


以前戦ったスケルトンナイトと似ているが、全身に金属製の鎧をまとっている。さらに、片手に持つ剣からは禍々しい気配が漂っていた。


「これがEランクの敵か…!」


俺はすぐに剣を構え、相手の動きを見極めようとした。


スケルトンの剣が風を切って迫ってくる。俺は紙一重でそれをかわし、反撃に転じる。しかし、敵の鎧が想像以上に硬く、こちらの剣ではほとんど傷をつけられない。


「くそ、普通の攻撃じゃ歯が立たない!」


追い詰められながらも、俺は伸びる腕のバグ技を試すことにした。以前の戦闘では偶然発動したこの技だが、今回は意図的に使えるかもしれない。


「集中しろ…イメージだ…!」


俺はバグ技を意識しながら攻撃のタイミングを計る。そして、スケルトンが再び剣を振り下ろしてきた瞬間、腕を伸ばして相手の頭部を掴んだ。


「これで…終わりだ!」


そのまま腕を引き戻し、スケルトンの頭を鎧ごと砕く。骨が砕ける音とともに、敵は地面に崩れ落ちた。


横浜地下遺跡の深部に向かうにつれ、空気が変わっていくのを感じた。冷たい風が頬を撫で、どこか湿っぽい匂いが鼻をつく。壁に刻まれた古代文字のような模様が一層不気味さを醸し出している。


「ここまで来ると、さすがに緊張感が違うな。」


「仕掛けも敵もどんどん手強くなってる。気を引き締めていこう。」


葵の言葉に頷きながら、俺は剣の柄を握り直した。


奥へ進むと、突然道が二手に分かれていた。一方は薄暗く、もう一方は青白い光が漏れている。


「どうする?」


「安全そうなのは明るい方だけど…罠の可能性も高いよな。」


俺たちは短い相談の末、明るい道を進むことにした。青白い光が何かを示しているのなら、それを見極める必要がある。


道の途中、床に奇妙な紋様が描かれている場所があった。


「これ、魔法陣か?」


「なんだか…嫌な感じがする。」


俺たちは慎重にその場を通り過ぎようとしたが、突然、紋様が光り出した。


「罠だ!」


次の瞬間、俺たちの足元から煙が立ち上り、視界が真っ白になる。


煙が晴れると、目の前には新たな敵が立ちはだかっていた。


『ゴーレム レベル:10』


全身が岩でできた巨大なモンスターだ。その存在感に圧倒されるが、今さら立ち止まるわけにはいかない。


「岩の塊か…普通の剣じゃダメージは期待できないな。」


「じゃあ、どうするの?」


「バグ技を試すしかない!」


俺は集中し、腕を伸ばすイメージを思い描く。そして、ゴーレムの隙を見計らいながら、その巨大な体に向けて腕を伸ばした。


「これで…!」


だが、ゴーレムは素早く動き、俺の腕をかわしてしまう。


「なんだと!?こんな大きな体でそんな動きができるのかよ!」


「健斗、気を付けて!敵の反応が速い!」


ゴーレムの動きは予想以上に速く、普通の攻撃では歯が立たない。それどころか、相手の一撃は地面を砕くほどの威力がある。


「くそ…このままじゃ埒が明かない。」


俺は戦いながら、バグ技の新しい使い方を模索していた。そして、あるアイデアが浮かぶ。


「腕を伸ばすだけじゃない…もっと応用できるはずだ。」


俺は伸ばした腕をゴーレムの足元に絡め、そのまま強く引っ張る。


「よし、これでバランスを崩せるか…!」


ゴーレムは体勢を崩し、大きな音を立てて倒れた。その隙を突いて、俺は関節部分と思われる場所に攻撃を集中させた。


「これで決める!」


剣を振り下ろすと、ゴーレムの体が徐々に崩れ落ちていった。


ゴーレムを倒した後、その体の中から小さな青い光が現れた。


「これ…なんだ?」


光はゆっくりと俺の方へ近づき、体に吸い込まれるように消えた。


「健斗、大丈夫?」


「うん、なんともない。けど、今のは一体…?」


その瞬間、システムメッセージが浮かび上がる。


「特殊スキル『岩砕き』を獲得しました。」


「スキル?新しい能力か!」


俺たちは再び気を引き締め、遺跡の奥へと進むことにした。未知なる挑戦と新たな力の発見。それが俺の冒険を一層加速させていくのを感じた。

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