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5話 腕がもたらす戦術



新たに手に入れたバグスキル“伸びる腕”。その不思議な力を試しながら、俺はFランクダンジョンの奥地へと歩みを進めていた。これまで頼りにしていた突進スキルに加え、このスキルをどのように活用すればいいのか模索している。


「まるで漫画や映画に出てくるヒーローみたいだな…。」


腕を前に突き出し、意識を集中させると、伸びる挙動を再現することができた。手のひらが数メートル先にまで達し、そこで物を掴んだり、引っ張ったりすることができる。


「これ、単に攻撃だけじゃなくて、いろいろ使えそうだな。」


進む途中で見つけた小さな岩をターゲットに、試し撃ちをしてみる。伸びた腕で岩を掴み、力を込めて引き寄せた。

「おお、これならアイテムを拾うのにも便利だ。」


さらに、腕を伸ばした状態で物を叩きつけるような動きを試してみた。

「…威力もそこそこあるな。」


ただし、スキルには癖があることもわかった。発動には意識が必要で、スムーズに扱えるようになるには練習が必要そうだ。特に、距離感やタイミングを掴むのが難しい。


「うーん、遠くから攻撃できるのはいいけど、動きが遅いと反撃されそうだな…。もっと工夫しないと。」


新たなエリア


ダンジョンを進むと、今度は水辺のエリアに差し掛かった。小さな川が流れており、その上に吊り橋のような古びた橋がかかっている。


「…渡るしかないか。」


橋を渡り始めたその時、水面に影が揺れた。


『ウォータースネーク レベル:6』


「来たか…!」


水中から飛び出してきたのは、青白い体色をした巨大な蛇だった。鋭い目でこちらを睨み、舌をちらつかせながら橋に巻きついてくる。


「こいつを相手にするのか…!」


蛇の尾が鋭く振り回され、橋が大きく揺れる。俺はバランスを崩しそうになりながらも、咄嗟に伸びる腕で橋のロープを掴んで体勢を立て直した。


「助かった…!このスキル、こんな使い方もできるのか。」


だが、蛇は攻撃の手を緩めることなく再び迫ってくる。鋭い牙がこちらに向けられるのを見て、俺は冷静に次の行動を考えた。


「ここは新しいスキルの出番だな…!」


腕を伸ばし、蛇の体に巻きつけるような形で掴む。蛇が暴れるが、腕の力でしっかりと固定し、動きを制限することに成功した。


「効いてる!このまま…!」


さらに、もう片方の腕でナイフを持ち、蛇の頭部に狙いを定める。伸びた腕で動きを止めた状態で、跳躍しながら力を込めてナイフを振り下ろす。


「これで終わりだ!」


ナイフが蛇の頭に突き刺さり、体が大きく痙攣した後、力なく水中に沈んでいった。


「倒した…!」


俺は深く息をつきながら、伸びた腕を元に戻した。スキルを使いこなすにはまだ練習が必要だが、攻撃と補助の両方に使えるこのスキルの可能性を確信した。


「これなら…もっと強い敵にも立ち向かえるかもしれない。」


今回の戦闘で得た経験値により、ステータスが更新される。


『レベル:4』

『新スキルポイント獲得:1』


「新しいスキルポイント…どれに割り振るかは慎重に考えないとな。」


新たなスキルへの期待を胸に、俺は次のエリアへと足を進めた。このダンジョンの奥には、まだ未知の敵や仕掛けが待ち構えているだろう。しかし、この力があればきっと突破できるだろう。


水辺エリアを抜けた俺は、次のエリアへと足を踏み入れた。そこはこれまでと異なる雰囲気を持つ空間だった。薄暗い空間の中に、巨大な岩がいくつも点在し、その隙間からは怪しげな光が漏れている。


「…ここは何かあるな。」


ダンジョンの構造は進むごとに複雑になってきた。単純な一本道ではなく、複数のルートが入り組み、まるで俺を迷わせようとしているかのようだった。


「とりあえず、行けるところまで行くしかないか。」


俺は慎重に足を進める。モンスターがどこに潜んでいるか分からない以上、常に警戒が必要だ。


不気味な空間


しばらく進むと、突然広い空間に出た。天井が高く、中央には石の祭壇のようなものが設置されている。その周囲には、光る文字が浮かび上がっている。


「なんだこれ…?」


祭壇に近づくと、文字が俺の視界に入り込んできた。


『試練の間へようこそ。この先に進む者は己の力を示せ。』


「試練の間…ってことは、また戦闘か?」


油断できない。これまで戦ってきたモンスターよりも、さらに強敵が待ち構えている可能性が高い。


俺は装備を確認し、回復結晶が手元にあることを確認してから、祭壇の奥に続く道へと足を踏み入れた。


次の瞬間、空間全体が揺れた。


「うわっ…地震か?」


天井から砂が降り落ちる中、暗闇の中から巨大な影が現れた。


『ストーンゴーレム レベル:8』


「レベル8…!?」


これまで戦ってきたモンスターの倍以上の強さを持つ相手だ。その巨体は圧倒的で、拳を振り上げただけで空気が震えるのを感じた。


「やるしかない…!」


ゴーレムが地面を砕くほどの一撃を繰り出してくる。俺は突進スキルでそれをかわし、岩の陰に身を隠した。


「こいつは…普通にやり合ったら勝ち目がないな。」


ここで役立つのが、新たに発見した“伸びる腕”だ。このスキルをどのように活用するかが勝敗を分ける。


俺は腕を伸ばし、ゴーレムの体の隙間にある魔力の光を放つ部分を掴んだ。


「ここが弱点だな…!」


腕で引っ張ると、ゴーレムがバランスを崩して体勢を崩した。その隙を突き、ナイフでその部分を叩きつける。


「効いてる!」


だが、ゴーレムはすぐに体勢を立て直し、拳をこちらに向けて振り下ろしてきた。間一髪でかわすものの、衝撃で地面が揺れ、俺も体勢を崩してしまう。


「くそ…!」


再び腕を伸ばし、今度はゴーレムの腕に巻きつけて動きを封じる。そして、スキルポイントを使って新たな技を獲得することを決断した。


『スキル:ハイジャンプ』


獲得したスキルをすぐに発動。ゴーレムの頭上に一気に飛び乗り、弱点と思われる頭部を狙って全力でナイフを振り下ろした。


「これで終わりだ…!」


ゴーレムの体が崩れ、岩の塊となって地面に崩れ落ちた。勝利の余韻に浸る間もなく、俺のステータスが更新される。


『レベル:5』

『新スキルポイント獲得:1』


試練を越えて


戦闘後、祭壇の前に再び文字が浮かび上がった。


『試練を越えた者よ、新たな力を手にせよ。』


文字が消えると同時に、祭壇の中央に光る宝箱が出現する。


「新たな力…?」


慎重に宝箱を開けると、中には金属の腕輪が入っていた。腕輪には精巧な彫刻が施され、魔力を帯びているのがひと目で分かる。


『アイアンアームリング:腕力を上昇させる装備』


「…なるほど、これは使えるな。」


俺は腕輪を手に取り、自分の右腕にはめた。腕が少し軽くなり、力がみなぎる感覚があった。


「よし、これでさらに戦える。」


祭壇を後にしながら、俺は次のエリアに進む決意を固めた。未知の力を試しつつ、さらに強敵に立ち向かっていく。


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