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44話 神殿の試練



神殿へと向かう道のりは険しく、毎日のように新たな試練が俺たちを待ち受けていた。数日間の移動の末、ようやく神殿の入り口が見えてきた。だが、その先に待っていたのは、予想以上の巨大な障害だった。


神殿の入り口には、古代の守護者が立ちふさがっていた。人間の姿をしてはいるが、その背丈は二倍以上、体の周りには闇の力が渦巻いている。


「こいつが守護者か…。」

アルディアが小さくつぶやく。彼女も予想していたものの、その威圧感に一瞬足が止まったようだ。


守護者は静かに我々を見つめ、低い声で言った。

「この神殿に足を踏み入れし者よ。試練に耐え、力を示すがよい。」


その言葉と共に、守護者の体が徐々に光り輝き、力を増していく。瞬間的に、周囲の大地が震え、神殿の石造りの壁が軋み始めた。


「どうやら簡単に通してはくれないようだな。」

俺は剣を引き抜き、戦闘態勢に入る。


守護者はその巨体にも関わらず、驚くべき速さで動き出した。その拳が大地を砕き、僕たちに迫る。俺はすぐに反応して躱そうとするが、地面が崩れるほどの一撃に、避けきれずに足元が崩れた。


「くっ…!」

俺は必死に体勢を立て直し、再び守護者の攻撃を防ぐ。だが、その攻撃は物理的な衝撃だけでなく、闇のエネルギーを含んでおり、受けるたびに体力が削られていくのを感じた。


「これじゃ持たない…!」

葵が杖を構え、魔法を放つ。霊火の炎が守護者に向かって放たれるが、守護者はその炎を一瞬で払うように手を広げ、力で消し去る。


「強すぎる…!」

アルディアがその場を離れ、間合いを取る。


「魔法だけではダメだ。何か手がかりを見つけないと、このままじゃ…。」


葵は一瞬の隙間を狙い、再び魔法を唱える。だが、今度は違うアプローチだ。


「霊火の増幅! 光の柱!」

その言葉と共に、周囲の霊火が集まり、守護者に向かって強烈な光のビームが放たれる。それでも守護者は耐えきり、そのまま攻撃を繰り出してくる。だが、その光に一瞬怯んだ隙を突いて、俺は一気に攻め込む。


「これでどうだ!」

俺の剣が炎を纏い、守護者の腕を切り裂く。だが、腕を切り落とすことはできず、代わりにその傷から黒い霧が立ち昇り、瞬時に腕が回復していく。


「回復…? これじゃ無限に戦わせられる!」


守護者はにやりと笑う。

「そう、私の力は尽きぬ。」


その瞬間、守護者の周囲の闇のエネルギーが急激に膨張し、空間が歪み始める。これまでとは比べ物にならないほどの圧力がかかり、俺たちの足元まで揺れ動く。


「まずい…! このままではみんな潰されてしまう!」

アルディアが叫ぶ。だが、守護者はそのままこちらを睨みつけながら言う。

「全てを飲み込み、試練を超えよ。さもなくば、消え去るのみ。」


守護者はその言葉を終わらせると同時に、闇の力が爆発的に放たれ、周囲の風景が変わり始める。地面が割れ、天空が歪み、全てがその力に引き込まれようとしていた。


「耐えろ! 全力で踏ん張れ!」

俺は足を踏ん張り、霧のような力を感じながらも、全身で守護者に立ち向かう覚悟を決める。


「この試練…絶対に乗り越える!」


そして、すべてが爆発的に交錯したその瞬間――


守護者の闇の力が爆発的に広がり、周囲の景色は崩れ、空気自体が圧迫される。俺たちはその場に立ちすくみながらも、必死に踏ん張った。


「くっ…これじゃ動けない!」

俺の足元が動かず、まるでこの闇の力に引き寄せられているかのようだ。


「何とかしないと、みんな押し潰される!」

葵も叫びながら杖を振りかざすが、闇のエネルギーが魔法を遮断し、攻撃が届かない。


守護者はその巨大な手をゆっくりと差し伸べ、俺たちに迫る。その手のひらから放たれる闇の光が、周囲を飲み込みながら近づいてくる。


「もう無理か…?」

俺はその圧倒的な力に圧倒され、意識が揺らぐ。


その瞬間、俺は一つのアイデアを思いついた。それは、この闇のエネルギーを逆手に取る方法だ。守護者の力は強大だが、それだけで無限に戦えるわけではない。その力には限界があり、それを突くことで突破できるはずだ。


「みんな、少しだけ引いてくれ!」

俺は必死にアルディアと葵に声をかける。


「どういうこと?」

葵が驚いたように答えるが、俺は言葉ではなく、その行動で説明した。


「俺が力を引き寄せる。その隙間を作ってくれ!」

アルディアは少し戸惑うものの、すぐにその意図を理解し、二人とも後退してくれた。


俺は自分の力を全て集中し、闇の力に反応させる。闇のエネルギーが俺の体に吸い寄せられ、少しずつ体内に集まっていく。痛みが走り、意識が朦朧とするが、それでも俺は力を引き寄せる。


「来い…もっと来い!」

全身を引き締め、俺は自ら闇の力に飲み込まれそうになりながらも、それを利用して力を高めていく。その瞬間、守護者が見せる闇の光が俺の体を包み、膨大なエネルギーを圧し掛けてきた。


だが、このエネルギーを逆に使うのだ。俺の中でそのエネルギーが暴れ、全身を焼くような激痛が走る。だが、その痛みの先に、強大な力を感じ取った。


「今だ!」

俺はその瞬間、剣を振り上げた。剣が光り輝き、闇のエネルギーが剣を通じて爆発的に放たれる。


剣の一振りとともに、闇のエネルギーは激しく暴れ、守護者に向かって炸裂した。その衝撃は周囲を揺るがし、守護者の体が大きく揺れる。だが、守護者はまだ耐えきる力を残していた。その姿勢を崩さず、再び闇の力を集めようとしている。


「今度こそ…終わらせる!」

俺はもう一度、剣を振り下ろし、その力を全て込めて突き刺した。剣が守護者の体に深く食い込み、闇のエネルギーが一気に爆発した。


「うおおおおお!」

俺の叫び声が響き渡り、爆風とともに守護者が崩れ落ちる。その瞬間、守護者の体から全ての闇のエネルギーが放たれ、巨大な爆発が起きた。周囲は一瞬にして明るくなり、爆風が俺たちを押し返す。


爆発が収まると、そこにはもう守護者の姿はなかった。闇の力が完全に消え去り、静寂が訪れた。俺たちは膝をついて息を整える。


「やっと終わったのか…。」

アルディアが息を切らしながら呟く。葵も安堵した表情で一息ついた。


「これで、試練は終わりだな。」

俺は剣を片手に、深く息を吐いた。


だが、試練の終わりと共に、新たな力が俺の中に宿っているのを感じる。それは、これまでの戦いとは比べ物にならないような、強大な力だ。


「これから先、どうなるんだろうな。」

俺はしばらく沈黙してから、再び神殿の奥へと足を踏み出した。



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