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39話 新たなる世界

戦いが終わった静寂の中、俺たちは残された闇の中でただ立ち尽くしていた。広場は崩れ、何もかもが変わり果てていたが、それでも終わりの予感は感じ取れた。怪物の姿は消え、残るはただ一つ、開かれた扉だけだ。


「これで…終わり?」


葵が呆然と呟く。その言葉には、疲れと達成感、そして少しの寂しさが入り混じっていた。全力で戦い抜いた俺たちにとって、この瞬間がどれほど重いものか、言葉にはできない。


「たぶん、もう試練は終わったんだろうな。」


俺はそう言って、ゆっくりとその扉に歩み寄った。扉の先には光が満ちていて、まるで新しい世界への入り口のように輝いていた。


葵も俺の後を追い、しばらく沈黙が続いた。しかし、やがて葵が静かに口を開いた。


「試練が終わったということは…次は、あの場所に進む時が来たってことよね。」


俺は振り返り、葵を見た。彼女の目に浮かんでいるのは、戦いを終えた後の平穏な表情ではなく、未知の未来に対する期待と決意だ。


「その通りだ。」


俺は頷き、最後にもう一度振り返った。あの怪物との戦いは、試練そのものだった。だが、これが終わりではなく、むしろこれからの新しい戦いの始まりを意味している。試練を超えて、次のステージに進むことになるのだ。


「さあ、行こう。」


俺は扉を押し開け、足を踏み入れた。その先に広がっていたのは、完全に異なる景色だった。光り輝く空、遠くに見える壮大な城。まるで異世界そのものが広がっているようだった。


葵がその景色を見つめ、しばらく言葉を失っていたが、やがて静かに言った。


「これが、次の世界か…。」


俺は彼女を見て、微笑んだ。


「新しい試練が待っているんだろうけど、俺たちはこれからも一緒だ。」


その言葉に、葵はゆっくりと頷き、二人で新たな世界に踏み出すのだった。


試練の終わりは、新たな始まりを告げていた。扉を越えた先に広がる世界で、俺たちの冒険は続く。これまでの戦いを超えて、さらに高みを目指すために。


そして、試練の守護者を倒したことで、俺たちは次のステージへ進むことになった。新しい敵、新しい仲間、そして新しい世界が、俺たちを待っているのだった。


「さあ、行こうか。」


その一歩が、これからの運命を大きく変えることを、俺たちはまだ知らなかった。


試練を乗り越えた先に広がっていたのは、これまでの世界とは全く異なる景色だった。


空は鮮やかな紫と金のグラデーションに染まり、見たこともない星々が瞬いている。地平線の彼方には巨大な木々がそびえ、葉の一枚一枚が虹色に輝いていた。近くにはクリスタルのように透き通った湖が広がり、湖面には不思議な光が踊るように映り込んでいる。


「ここ…本当に地球なの?」

葵が驚いた声を漏らす。俺も言葉を失いながら、この未知の光景に見入っていた。


「試験の先がこんな場所だなんて、聞いてなかったぞ…」

俺は手にした剣を握り直すが、この美しい風景にどこか違和感を覚える。


「ここは『ゼルフィア』――異なる次元に存在する地だ。」

不意に頭上から声が響いた。見上げると、宙に浮かぶ老人の姿があった。長い白髪と金のローブをまとい、その手には奇妙な形をした杖を持っている。


「君たちが次元の試練を超え、ここにたどり着いた勇者か。」


「次元の試練…?つまり、ここはもう試験じゃないのか?」

俺が問いかけると、老人は微笑んでうなずいた。


「その通りだ。ここは君たちの世界とは異なる次元の一つ。ゼルフィアに到達した者には、この地を探索し、新たな力を得る資格が与えられる。」


「新たな力…?」

葵が半信半疑の声を漏らす。


「ゼルフィアは未知の可能性に満ちた地だ。ここで経験するすべてが、君たちをさらなる高みへと導くだろう。だが、警戒を怠るな。この地の住人や生物は、君たちの常識をはるかに超える力を持っている。」


老人が消えた後、俺たちはゼルフィアの大地を歩き始めた。見渡す限りの美しい風景だが、その中には確かに異質な気配が漂っていた。


しばらく進むと、森の中から何かが現れた。それは6本の腕を持ち、全身を黄金の甲殻で覆われた巨大な生物だった。


「来るぞ、葵!」

俺は剣を抜き、構える。その瞬間、敵は目にも止まらぬ速度でこちらに突進してきた。


「速い…!」

ギリギリでかわしながら剣を振るうが、その硬い甲殻は剣を跳ね返した。


「防御力が高すぎる…どうする?」

葵が魔法の杖を構えながら言う。しかし、通常の攻撃では歯が立たない。


「バグ技を使うしかない!」

俺は剣に意識を集中し、バグ技「霊火拡張」と「霧散」を同時に発動させる。剣に宿る霊火が霧と融合し、敵の動きを鈍らせると同時に炎が甲殻を溶かし始めた。


「今だ、葵!」

「了解!」

葵が霊火の魔法を重ね合わせ、敵の甲殻を完全に破壊する。内部が露出した瞬間、俺は剣を突き刺し、一撃で仕留めた。


「やっぱりこの世界、簡単にはいかせてくれないみたいだな…」

息を整えながら、俺は剣を収める。


「でも、この場所…何かワクワクするわね。」

葵が微笑みながら言う。その表情は疲れを感じさせないほど明るかった。


「そうだな。この世界で俺たちがどこまでやれるのか、試してみるのも悪くない。」


未知の大地「ゼルフィア」。この世界が何をもたらすのか、俺たちにはまだわからない。それでも、一歩踏み出す勇気だけは失わないと誓った。

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