28話 武闘大会の練習
武闘大会の出場が決まり、僕と葵はそれぞれの準備に取り掛かることにした。大会はすぐにでも始まりそうだったので、しっかりと練習しておく必要がある。特に葵とのコンビネーションや戦術の確認は欠かせない。
「ねえ、葵。」
僕が声をかけると、葵は手を止めてこちらを見た。
「何?」
葵がちょっと不安そうに答える。その顔がなんだか可愛くて、少しだけ笑いそうになるが、すぐに真剣な表情を作り直す。
「大会で戦うには、もっとお互いの動きに合わせる必要があると思うんだ。」
僕はそう言いながら、剣を握る手に力を込めた。葵も手に持っている短剣を握りしめ、静かに頷く。
「うん、私もそう思ってる。」
葵は小さく息を吐くと、剣を構え直した。
僕たちはまず基本的な動きから練習を始めることにした。お互いの動きに合わせて、攻撃を避け、カウンターを決める。葵の敏捷性と素早さを活かして、彼女が攻撃を仕掛けた後の隙に僕がカバーする形で戦う。逆に、僕が攻撃を仕掛けるときには、葵がその隙間を埋めるようにサポートしてくれる。
「行くよ!」
葵が軽く足を踏み出し、素早く間合いを詰める。僕はその動きに合わせて剣を振り下ろし、彼女の動きをサポートする。
葵は軽く体をひねり、僕の攻撃を回避してから反撃のチャンスを作ろうとするが、僕の体がそのまま彼女の動きに合わせて動き、相手を制圧できるようにサポートする。
最初のうちはぎこちなかったが、次第にお互いの動きが合ってきた。葵の小さな体でも、確かな力を込めて一撃を繰り出す。その瞬間に、僕の剣が相手の隙間を突く。二人の動きが完全に一致し、まるで一つの生き物のように戦うことができるようになった。
「いい感じだね、葵。」
僕が息を切らしながら言うと、葵も疲れた顔をしながらも、嬉しそうに微笑んだ。
「うん。君のサポートが上手だから、私も戦いやすいよ。」
葵は自分の短剣を軽く振って、さらに気合を入れる。
「でも、まだ足りない。大会で勝ち抜くためには、もっと連携を深めないと。」
僕は少し気を引き締めて言った。大会で戦う相手は、ただの冒険者ではない。強い者が集まる場所だ。二人の連携を完璧にして、どんな状況でも対応できるようにしなければならない。
「次は、少しスピードを上げてみよう。」
葵が提案すると、僕は頷きながら構えを取った。
その後も練習を続け、互いの動きをさらに速く、正確にすることに注力した。葵の身のこなしは本当に素早く、しなやかで、どんな攻撃でもかわしながら反撃することができる。僕はそんな葵を支えるために、自分の技術を磨きながら、常に彼女の動きに合わせることを意識した。
練習の終わり頃、葵が一度立ち止まって僕を見つめた。
「健斗、もしも私たちが大会で戦ったとき、君はどんな戦い方をする?」
葵の質問に、僕は少し考えてから答えた。
「まずは冷静に相手の動きを見て、戦いのペースを掴む。その後で、葵が得意な戦術を活かす。僕は、相手の隙間を狙ってサポートする役割を果たすよ。」
葵は少し考え込むようにしてから、にっこりと笑った。
「なるほどね。君の言う通りにすれば、私はどんな相手でも倒せる気がする。」
その言葉に、僕は少し驚きながらも、嬉しさが込み上げてきた。
「じゃあ、君の力を信じて、俺も全力でサポートする。」
僕は真剣に答えると、葵は再び短剣を構え、戦う準備を整えた。
その日から、僕たちはさらに連携を深めるため、戦術的な練習を続けた。大会に向けて、準備は着々と整っていく。二人のコンビネーションが完璧に合致するその瞬間が、少しずつ近づいてきていることを感じながら、僕は自信を深めていった。




