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26話 渋谷の迷宮 最深部にて



渋谷の迷宮の深層に進み続けて数時間が経過していた。僕たちは数々の異次元のモンスターと戦い、時には新たなバグ技を駆使して乗り越えてきた。だが、今感じるのは、ただの異次元の敵ではなく、もっと強力な存在が待っているという確信だ。


「この感じ、もうすぐだね。」

葵の言葉に、僕は静かに頷く。周囲の景色はますます歪んで、視覚や感覚が異常に感じられる。空間が揺れ、壁が一瞬で消え、また別の場所に現れる。まるで世界そのものが歪んでいるような感覚だ。


突然、前方に巨大な扉が現れた。その扉には、独特の力を感じる。僕の体が反応するのが分かる。この扉の向こうに待つのは、間違いなくボスだ。


「葵、準備はいいか?」

僕は振り返り、葵に問いかける。葵は真剣な表情で頷いた。


「うん。何が待っていても、二人で倒すしかないよ。」

その言葉に、僕は力強く握りしめた剣を見つめる。葵は弓を構え、二人でボスへの道を進む準備を整えた。


扉を開けると、そこには異次元の力が充満した空間が広がっていた。まるで別の世界に迷い込んだかのように、重力が不安定で、空気がひんやりと冷たい。


その空間の中心には、巨大な存在が浮かんでいる。体は黒い霧のように歪み、触手が無数に伸びている。目は光を放ち、空間そのものを支配しているかのような威圧感が漂っていた。


「これがボスか…」

僕の声が静かに響くと、ボスがゆっくりと動き出した。触手が異次元の力を放ちながら、こちらに向かって迫ってくる。モンスターの力は強力で、空間が歪んでいくのが感じられる。これまでとは比べ物にならない圧倒的な存在だ。


「動きが速い…!」

葵がその触手を弓で撃ち抜こうとするが、弓矢は触手に当たる前に消えてしまう。触手の力が空間を歪ませ、攻撃を無効化しているのだ。


「葵、気をつけろ!」

僕は瞬時にバグ技を発動させ、「空間崩壊」を使ってその攻撃を無効化する。ボスの攻撃が一瞬で消え、僕は瞬間移動でその隙間を狙って接近した。


「今だ!」

ボスの中心に向かって剣を振るうが、ボスはその攻撃を無効化するかのように触手を一振りで弾き返す。その力に押され、僕は後ろに飛ばされる。


「くっ、強すぎる…!」

その瞬間、ボスが異次元の力をさらに強化し、周囲の空間をさらに歪ませた。僕の体がその歪んだ空間に引き寄せられ、まるで動けないかのような感覚に陥った。


「このままじゃダメだ…!」

僕は必死に空間を操り、再度瞬間移動で距離を取る。そして、異次元の力を最大限に集中させ、空間崩壊を連続で使い、ボスの触手を無効化しながら接近する。


「葵、今度こそ決める!」

葵もそのタイミングを見計らい、ボスに向かって矢を放つ。矢はボスの中心に命中し、ボスの体が一瞬にして歪んだ。その隙間を突いて、僕は全力で剣を振り抜いた。


剣がボスの体に深く突き刺さり、異次元の力が一気に崩れ落ちる。ボスは叫び声を上げ、巨大なうねりと共に消え去った。


「倒した…!」

僕は息を呑みながら、倒したボスを見つめる。異次元の力が収束して、空間が元の状態に戻りつつある。ボスの姿は完全に消え、静寂が戻った。


「やったね、健斗。」

葵が微笑みながら僕に言う。その言葉に、僕は力を振り絞って答えた。


「うん、でもこれが終わりじゃない。まだ、何かが待っている。」

倒したボスの奥から、さらに強力な力を感じる。どうやら、この迷宮の本当の試練はこれからだった。


ボスを倒した瞬間、迷宮内の空間が一変した。静寂が広がる中で、異次元の力がふわりと漂い、周囲の景色が微かに歪んでいく。まるでボスを倒したことで、新たな力が解放されたかのようだ。


「健斗、気をつけて!」

葵が警戒の声を上げる。その瞬間、僕の目の前に一つの扉が現れた。それはまるで空間そのものが裂けてできたような、異次元の扉だ。扉の縁には薄い光が漏れ、異様なエネルギーを感じる。


「これは…また新たな試練か?」

僕の声に、葵が不安そうに答えた。

「多分。こんな扉、今まで見たことがない。」


僕はその扉をじっと見つめた。何かを引き寄せられるような感覚があり、体が自然とその扉に近づいていく。空間が歪んでいくのを感じ、足元がふわりと軽くなる。


「でも、行くしかない。」

僕は決意を固めて、扉に手を伸ばした。その瞬間、扉が開き、眩い光とともに異次元の力が溢れ出す。僕と葵はその光に引き込まれ、気づけば、また別の世界に立っていた。


異次元の扉を越えた先には、どこか異質な場所が広がっていた。周囲には無数の光の粒子が漂い、地面は浮遊しているかのように不安定だ。空気が粘っこく、異次元の空間とは言え、まるで無重力空間にいるかのような感覚だった。


「ここは一体…?」

葵が疑問を口にするが、僕も答えようがなかった。周囲の景色には明確な物理法則が存在しないようだ。何もかもが崩れそうで、逆に何も崩れない、まさに異次元の領域。


そのとき、遠くの空間から、低い唸り声が響いてきた。じわじわと迫る音に耳を澄ませると、その正体が見えてきた。無数の光の粒子がまとまって、巨大なモンスターの形になりつつある。


「また、モンスターか…」

葵が弓を構えながら、慎重に目を光らせる。モンスターはさらに成長し、体が異次元のエネルギーで満たされているのが見て取れた。


そのモンスターは、まるで異次元の力を吸収して巨大化したような存在だった。形は不規則で、浮遊しながら急速に迫ってくる。目を光らせ、僕たちを捕えるようにその腕を伸ばす。


「くっ、間に合うか…!」

僕は瞬間移動のバグ技を駆使して、モンスターの攻撃をかわすと、すぐに反撃を仕掛けた。僕が近づいた瞬間、モンスターがその巨大な爪を振り下ろし、僕を捉えようとする。


その爪を回避しながら、僕は新たなバグ技「空間解放」を発動した。これまでの瞬間移動とは異なり、空間内に存在する「隙間」を見つけ、その隙間を使って異次元の力を反転させてモンスターを一瞬で遠くへ飛ばすという技だ。


モンスターは目を見開き、驚いたようにその場から弾け飛んだ。


「よし、今だ!」

葵の弓矢がその隙を突き、一矢がモンスターの中心に命中した。矢が爆発的に弾け、モンスターが一瞬で歪んで崩れ始める。


だが、モンスターは完全に倒れることなく、まだその力を持っていた。光の粒子が急速に集まり、再び形を成し始める。


「しつこいな…!」

モンスターが再生し、さらに強化されていくのを感じる。だが、今度こそ僕は力強く踏み込んだ。


「葵、集中して!」

僕の言葉に応じて、葵は再び弓を構え、今度は矢を連射してモンスターの動きを封じ込める。僕も「空間解放」を使ってその動きを追い詰めながら、最後の一撃を狙う。


モンスターはもう逃げることはできない。その一瞬を逃さず、僕は全力で剣を振り下ろした。剣が異次元の力を受けて光り輝き、モンスターの体を切り裂いた。


その瞬間、モンスターは完全に消え去り、周囲の空間が静寂を取り戻す。


「やった…」

僕は息を呑みながら、倒したモンスターが消えるのを見守った。異次元の力が収束し、空間が安定し始めた。その後、異次元の扉が再び開かれ、次の試練へと続く道が現れた。


「次もきっと、さらに強力な敵が待っている…」

僕はそう呟きながら、葵に目を向けた。葵も心配そうにこちらを見ていたが、その瞳の奥には揺るぎない決意が宿っていた。


「大丈夫だよ、健斗。二人でなら、きっと乗り越えられる。」

葵の言葉に力をもらい、僕は再び足を踏み出す。


次の試練が待っている。異次元の迷宮を抜け、僕たちの冒険はまだ続く。

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