24話 Bランク昇格試験
「Bランク昇格試験を受ける?」
俺はギルド受付の女性からの言葉に、一瞬言葉を失った。ここ最近、Cランクの冒険者としてダンジョン探索やモンスター討伐を重ねてきたが、ついにこの話が来るとは思っていなかった。
「はい、あなたの実績と戦闘能力を総合的に評価した結果、ギルドとしてBランク昇格試験の受験資格を認めます。」
受付の女性が微笑む。その背後にはギルド掲示板があり、そこには数多くの試験対象者の名前が並んでいる。俺の名前もその中にあった。
「おめでとう、健斗!」
葵が背後から嬉しそうに声をかけてきた。彼女も試験資格を手にしたらしい。
「葵も受けるんだな。」
「当然でしょ。ここまで一緒にやってきたんだから。次のランクも一緒に目指さないと。」
俺は自然と笑みがこぼれた。葵とは、数々の冒険を共に乗り越えてきた仲間だ。彼女と一緒なら、どんな試験でも乗り越えられる気がした。
試験当日、俺たちは試験会場であるコロシアムに到着した。ギルド本部に併設されたこの巨大な施設は、昇格試験だけでなく、大規模な模擬戦やイベントにも使用される。
「すごいな…。これが試験会場か。」
初めて目にするその壮大な光景に、俺は思わず息を呑んだ。
「健斗、ぼーっとしてる場合じゃないよ。」
葵が俺の肩を軽く叩く。その表情には緊張感が漂っていたが、どこか楽しそうでもある。
「わかってる。」
会場の中央には試験官が立っており、受験者たちに概要を説明し始めた。
「これから冒険者Bランク昇格試験を開始する! 試験は三つの段階に分かれている。以下の内容を全てクリアした者のみが、Bランクの冒険者として認められる。」
試験内容
1.能力検定
試験官が提示する条件に基づき、自分のスキルや戦闘能力を正確に発揮する。特に、バランスの取れたステータスが求められる。
2.模擬戦闘
他の受験者との模擬戦闘で戦術やスキルを駆使し、自分の実力を証明する。
3.ダンジョン攻略
指定されたダンジョンの一部を短時間で攻略する能力が試される。チームで挑む場合もあり、仲間との連携力も重視される。
「これらの試験は、一筋縄ではいかないぞ。全力で挑むように!」
試験官の厳しい声に、俺たちは思わず背筋を伸ばした。
試験開始直前
受験者たちは控え室で待機している。俺は持ち込んだ装備を最終確認していた。新たに手に入れた防具と武器、そしてバグ技をどこでどう活用するかを頭の中でシミュレーションする。
「健斗、大丈夫?」
隣に座る葵が心配そうに聞いてきた。
「ああ、平気だ。これまでの冒険でやれることはやってきた。あとはやるだけだ。」
「ふふ、頼もしいね。」
彼女の微笑みに少しだけ緊張が和らぐ。俺たちは互いに励まし合いながら、試験開始の時を待った。
コロシアムの中央に立った俺は、周囲からの視線を感じながら深呼吸した。
「ここで結果を出す。俺は、もっと先に進むんだ。」
試験官の声が響き渡り、いよいよ試験が始まる。
第46話:冒険者Bランク昇格試験
俺はコロシアムの中央に立ち、改めて試験の流れを確認する。周囲にはほかの受験者たちが並んでいるが、皆それぞれ緊張した表情を浮かべている。背後から葵の声が聞こえた。
「緊張してる?」
振り返ると、彼女は微笑んでいたが、手が少し震えているのがわかる。
「ああ。でも、ここまで来たんだ。失敗するわけにはいかない。」
「その意気だね。私も頑張るから、健斗も全力でね。」
試験官が現れ、試験の開始を告げる。
第一試験:能力検定
試験会場の端に設置された機械が俺たちを待ち受けていた。これは受験者のステータスや能力を測定し、スコアとして評価するものらしい。
「受験番号45番、水島健斗!」
名前を呼ばれ、俺は深呼吸して装置の前に立った。
最初は力の測定。全力で模擬武器を振り下ろすと、機械が軽い振動音を立てて数値を表示する。
「……悪くないな。」
続いて、スピードや反射神経、魔力の操作能力などを次々と試されていく。バグ技はもちろん封印しているが、それでも俺の成長を数字が証明してくれる。
結果発表で、俺の総合スコアが上位10%に入っていると聞き、ひとまず安心した。
第二試験:模擬戦闘
「次は模擬戦闘だ。受験者同士の実力を試す試験となる。武器とスキルの使用は自由。ただし、致命傷を与えないように!」
試験官の声が響く中、俺は一人の受験者と向かい合う。名前は聞いていないが、どこかギラついた目つきが印象的だった。
「覚悟しろよ、手加減はしないからな!」
相手は剣を構え、瞬時に俺へ向かって突進してきた。
(速い!)
俺は横へ飛び退りつつ、剣を抜いてカウンターを狙う。しかし、相手はすぐに体勢を立て直し、再び襲いかかってきた。攻撃のテンポが速く、隙がほとんどない。
「やるな…けど!」
相手の隙を狙い、一瞬のタイミングで突きを繰り出す。かろうじて相手の剣を弾き飛ばすことに成功した。
「くそっ…負けたか。」
相手が剣を下ろし、試合終了が告げられる。勝利はしたものの、全力で戦ったせいで息が上がっていた。
葵も無事に模擬戦闘を突破しており、軽く目を合わせて頷き合う。
第三試験:ダンジョン攻略
最後の試験はダンジョンの一部を攻略するというものだった。試験官の指示で、受験者たちは数人ずつのチームに分けられる。俺と葵は同じチームに入った。
「いよいよ最後だね、健斗。」
「ああ、気を引き締めていこう。」
与えられた目標は、ダンジョン内の特定のエリアにあるモンスターの討伐とアイテムの回収。制限時間内にクリアしなければならない。
俺たちはダンジョンの入口から内部へ突入した。モンスターの襲撃をかわしながら進む中、チーム全員が互いの役割を果たしていく。葵は弓を駆使して遠距離攻撃を繰り出し、俺は前衛としてモンスターを引きつける。
「健斗、左!」
葵の声に反応し、左から飛びかかってきた狼型のモンスターを剣で迎撃する。
ダンジョンの奥へ進むにつれ、モンスターの数と強さが増していく。だが、チームの連携が功を奏し、何とか最深部へ到達した。
「ここが…目的地か。」
最終地点には巨大なモンスターが待ち構えていた。全身が鎧のような鱗で覆われ、口からは炎のような息を吐き出している。
「行くぞ!」
俺と葵は声を合わせ、最後の試練に挑む。
巨大なモンスターは、鋭い爪と分厚い鱗を持ち、こちらを睨みつけている。その咆哮は洞窟内に響き渡り、まるで俺たちを威圧しているかのようだ。
「これは…普通の試験のモンスターじゃないでしょ!」
葵が弓を構えながら叫ぶ。確かに、これほどの威圧感を放つ敵が試験に出るとは思えない。だが、今さら後戻りはできない。
「気をつけろ、手を抜けばやられるぞ!」
俺は剣を構え、モンスターとの間合いを測る。
まず、俺が前衛として飛び出し、モンスターの注意を引きつける。巨大な爪が振り下ろされるが、素早く横へ飛んで回避。その隙に、葵が矢を連射する。
「よし、今だ!」
だが、矢が鱗に当たるたび、金属音が響くだけでダメージは通っていないようだ。
「鱗が硬すぎる!突破口を探さないと!」
「待って、健斗。あの胸元…少し隙間がある!」
葵が指差したのは、モンスターの胸部。確かに鱗の合間に僅かな隙間が見える。
「了解!近づいてみる!」
俺はモンスターの攻撃を避けつつ、その隙間を狙おうと接近する。しかし、モンスターの動きは想像以上に速く、鋭い爪と尾が容赦なく襲いかかってくる。
「くそっ、このままじゃ埒が明かない!」
俺は咄嗟に剣を構え、バグ技を発動させることを決意する。
「伸びろ…!」
刃が光を帯びたかと思うと、剣が不自然に伸び、モンスターの胸元へ突き刺さる。鱗の隙間に見事に命中し、モンスターが苦しそうに咆哮を上げた。
「やったか!?」
だが、モンスターはまだ動きを止めていない。それどころか、怒りを露わにしてこちらへ突進してくる。
「健斗、危ない!」
葵が俺の肩を引っ張り、直撃を避ける。
協力プレイでの決着
「もう一撃必要だ!」
葵が最後の矢に魔力を込める。
「健斗、次の突進を止めて!その隙に私が仕留める!」
「わかった!」
俺はモンスターの進路上に立ち、全力で盾を構えた。そして、モンスターが突進してきた瞬間、その動きを剣で受け流す。
「今だ!」
葵の矢が放たれ、光の軌跡を描きながらモンスターの胸元へと吸い込まれる。矢は深々と突き刺さり、モンスターが咆哮を上げながら倒れる音が洞窟内に響いた。
「…やったのか?」
俺は息を切らしながらモンスターを見つめる。完全に動かなくなったその巨体を確認し、ようやく勝利を実感する。
「お疲れ、健斗。」
葵が疲れた表情で微笑む。その顔を見ると、自然と笑みがこぼれた。
「これで試験は終わりだな。あとは結果を待つだけか。」
俺たちはギルド試験官の指示でダンジョンを出る。全力を尽くした結果を信じ、次のステージを目指して歩き出すのだった。
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