13話 嵐の塔への挑戦
灰色の石造りの塔は、どこまでも高くそびえ立っていた。見上げても上部は雲に隠れ、全容がまったく見えない。周囲には強い風が渦巻き、冷たい空気が肌に刺さるようだ。
「ここがBランクダンジョン『嵐の塔』か…さすがだな。」
俺は塔の入り口で一息つき、改めて装備を確認した。最近手に入れた『精霊のアーマー』は、風属性の攻撃を軽減してくれる優れものだ。だが、それでもBランクダンジョンだ。気を抜けば命取りになる。
隣を見ると、葵が真剣な表情で弓の具合をチェックしている。彼女も緊張しているようだが、それでも冷静さを保っている。
「健斗、準備はできてる?」
「もちろん。葵も無理はするなよ。」
「わかってる。でも、あんたが先走らないように見張るのも私の役目でしょ?」
そう言って軽く笑う彼女に、俺は肩をすくめるしかなかった。これまで何度も一緒に探索してきたが、葵は俺の無茶をよく止めてくれる頼れる存在だ。
「行こうか。」
「ああ。」
塔の中に足を踏み入れると、空気が一変した。外の風が冷たいなら、ここは鋭い。風が切り裂くような音を立て、肌に当たるたびにゾクッとする。
最初のフロアでは、すぐにモンスターの気配を感じた。現れたのは、小型のウィンドスピリット。透明な体に青白い光が揺らめいている。それが宙を漂いながら、鋭い風刃を放ってきた。
「動きが早いな…!」
俺は素早く空中ジャンプを発動し、モンスターの攻撃を避けながら間合いを詰める。空中で加速しながらドラゴン・スレイヤーを振り下ろすと、一撃で消滅した。
「1体なら楽勝だが…」
油断したのも束の間、周囲からさらに多くのウィンドスピリットが現れる。
「囲まれたか…!」
「こっちは任せて!」
葵が的確に弓を放ち、俺が対応しきれない位置のモンスターを次々と撃ち落としていく。彼女の狙いは正確で、矢はほぼ外れることがない。
「頼もしいな、葵!」
「口を閉じて集中しなさい!」
軽口を叩く間もなく、俺たちはモンスターを相手に連携を続けた。息の合った動きで、20分ほどの激戦を経てフロアを制圧することに成功する。
「やれやれ、これでまだ1階かよ。」
「これがBランクってことね。でも、悪くない滑り出しじゃない?」
彼女が矢筒を確認しながら笑う姿に、少しだけ気が楽になる。
2階に進むと、モンスターだけでなくトラップが待ち構えていた。風で動く仕掛けが通路に施されていて、一定のタイミングで突風が吹き抜ける。
「なるほどな…罠まであるのか。厄介だ。」
「突風を避けながら進むしかないわね。」
俺は突風のタイミングを見計らい、空中ジャンプで一気に飛び越える。だが、その瞬間、背後からストームバードが襲いかかってきた。
「くそっ!」
とっさに回避しようとしたが、強烈な風圧でバランスを崩し、壁に激突しそうになる。しかし、葵の矢がモンスターを牽制してくれたおかげで、体勢を立て直すことができた。
「もっと気をつけて!」
「助かった、葵!」
ストームバードは中型の鳥型モンスターで、風を纏った体当たり攻撃が厄介だ。俺は空中ジャンプを使いながら壁を蹴って加速し、隙を突いてドラゴン・スレイヤーを振り下ろす。
「よし、これで片付いた!」
「さっきのフロアより手応えあるわね。でも、この調子でいきましょう。」
葵の冷静な声に、俺は小さくうなずいた。
3階にたどり着くと、空気がさらに重くなり、風の音が耳に響く。このフロアでは、モンスターの数も強さも格段に上がっていた。
現れたのはウィンドエレメンタルという中型のモンスターで、これまでよりも風の攻撃が強力だった。
「ここが最後の試練ってわけか…。」
俺と葵は互いに背中を預け合いながら戦い抜いた。攻撃の合間に回復アイテムを使い、徐々に数を減らしていく。
「これが最後の一体だ!」
「一緒に決めるわよ!」
俺の剣と葵の矢が同時に放たれ、最後のウィンドエレメンタルを撃破した。
フロアの奥には巨大な扉があった。その向こうには、このダンジョンのボスが待ち受けているのだろう。
「ついにここまで来たな。」
「でも、一度地上に戻ったほうがいいかもね。」
葵の提案に、俺も賛成した。Bランクダンジョンのボスは、これまでのボスとは比べものにならないだろう。準備を万全にして挑まなければならない。
「次は絶対に勝つために、しっかり備えよう。」
「そうね。私は矢をもっと増やしておくわ。」
そう言って微笑む葵の横顔を見て、俺は改めて彼女が頼もしい相棒であることを実感した。




