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Deadman's Dawn  作者: U
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第1話

 リンリン♪ リンリン♪


 耳を刺すような電子音が大音量で鳴り響き、思わず顔をしかめる。けたたましい不快な音楽がスマホから鳴り響いていた。


「うるせぇよ……」


 ベッドから手を伸ばし、騒音の原因を掴む。聞き覚えの無いやかましさの原因は緊急地震速報か、はたまたミサイルのアラートか。まるで他人事のように焦ることなくスマホの電源ボタンを押す。むくんで開きづらい瞼を無理やりこじ開けると、


「暴…動……屋内待機……?」


 ぼんやりする視界の中でかろうじて文字を読む。

 どうやら地震やミサイルではないらしい。暴動の2文字に完全に興味をなくす。


「地震じゃねえなら起こすなよ。誰も外なんか出ねえよぉ……」


 掛け布団を頭までかぶり、情けない声を出す。

 浅野岳は実に平凡な人間だった。趣味も夢もない岳にとっては毎日が単調で、未来に期待できるものなど何もない。中小企業での人事の職に就いて半年、期待していた社会人生活は、厳しい現実とともに彼を打ちのめした。上司からのパワハラ、手に負えない仕事量、プレッシャーの中で、自分の価値が見えなくなり、ついにうつ病と診断されてしまった。1か月の休職を言い渡され、現在自宅で過ごす日々が続いている。


 午前10時、最近こうしてベッドに横たわっているだけで、なぜだかものすごく疲れる。仕事もしていないし、何か特別なことをしているわけでもないのに心が空っぽだ。

 ぼんやりとしたままスマホのロックを解除する。そこで目に入ったのは、大量の不在着信、両親からだ。


「なんだよ……」


 かけ直してみるが、二人とも出ない。


 まあ、やばいなら後でまた連絡してくるだろ。


 大きく息をつき、ベッドから起き上がった。いつも通りテレビをつけ、YouTubeを立ち上げる。休職してから毎日意味もなく垂れ流しているため、とっくに見たいものなんてなくなっていた。

 適当にランキング上位の動画や、ライブ配信をBGMに一日中ひきこもってゲームをする。それがここ最近のルーティーンだ。


 今配信中のライブ配信がずらりと並ぶ画面。普段なら特に興味もないタイトルが並んでいるだけのその画面一番上、興味深いタイトルが俺の目に飛び込んできた。


『東京でリアルゾンビ発生!?』


 その日は観るものがすぐに決まった。ゾンビやらサメやらエイリアンやら男の子はそういうのが好きなものだ。岳も例外ではなかった。

 小学4年生のころ、たまたまみかけたウォーキングデッドにはまった。今思えばただグロいということしか理解していなかったというのに、なぜか不思議な魅力を感じ、何度も親におねだりしては、DVDをレンタルしてテレビにかじりつくように観ていた。


 あの頃は、ゾンビの世界に入り込んで、怖いもの知らずで夢中になれた。「こんな世界、あり得ない」とわかっていながらも、現実以上に生きてる実感があった気がする。今は…どうなんだろう。


 しかし、動画を再生する直前にふと現実が頭をよぎり、俺は悟ってしまった。今日は10月15日。ハロウィンの時期なのだ。街中は、にやついたかぼちゃの首がそこらじゅうに並べられており、テーマパークでは夜になるとゾンビが追いかけてくるようなそんな時期。

 リアルゾンビなんて言ってもどうせ偽物。ひどい時はつまらない若者ユーチューバーが町を練り歩いてはゾンビのコスプレした女の子にナンパするだけの取るに足らないものだ。それがわかっていても、一応動画を再生する。せめて偽物でもいいからちゃんとゾンビ役の人が追いかけてくるような、最低限マシな映像作品であることを期待して。


 その期待は思いがけない形で裏切られることになった。


 映像には東京の街が映し出されている。しかし、ただ街が映されているだけではなかった。大勢の人々が、暴れ狂い、走り回っている。カメラも固定されているわけではなく、上下左右に振り回されて、何を映しているのかギリギリ判別がつくレベル。音声は撮影者が走る荒い息遣いと、街中で響き渡る悲鳴。まさに阿鼻叫喚の地獄絵図といったような映像であった。

 なんのストーリー性も会話などの演出もないその映像からは、ただ起きている事実を見せようとしているような不気味なリアルさが感じられた。


 とはいえ、それを正面から信じるほど俺も馬鹿じゃない。そういう設定の映像なんだろう。にしてはやけに大規模だけど映画の撮影風景か何かだろうか


 すぐさまスマホを手に取り、検索にかける。すると、奇妙なニュースタイトルが次々と表示された。


『東京で暴動発生』

『大阪でも同様の事態が』

『名古屋でも暴動か!?』


「これ、マジのやつか?」


 一通りニュース記事を読み漁ると、数時間前から様々な都市で同時多発的に大規模な暴動が発生しており、現在日本中で鎮圧活動が始まっているという内容であった。


 落ち着かない気分になった俺は、玄関に向かって走り、勢いよくドアを開けた――――――











 そこにはいつも通りの住宅街が広がっていた。雲ひとつない快晴の空の下、小鳥のさえずりが聞こえる。


「……んだよ、何もねえじゃん」


 少し気が抜けた。何も変わらないこの平和な景色が、かえって嫌になる。自分だけが取り残されているようで、息が詰まる。「何か、何でもいいから変わってくれ」と、どこかで期待していたのかもしれない。


 そもそも暴動ったってこんな住宅街のど真ん中で起きてるわけねえか。


 グオオオオ!


 外にも鳴り響いたのではないかと勘違いするほどの大きな音でお腹が鳴った。

 空腹を満たすためにキッチンに向かう途中ふとあることを思い出す。


「あ、カップ麺きれてるんだった」


 俺はカップ麺を調達するためにコンビニへ向かった。

第1話を読んでいただきありがとうございます!

初投稿で右も左もわからないので、感想やアドバイスを頂けるととても助かります!

頑張って登校するのでよろしくお願いします!

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