熊のもふもふパン屋さん
1話 熊のプフ
夏花あこ「いらっしゃいませー!」
夏。7月上旬。
ここはとある森の中のパン屋"もふもふパン"
木で出来た温かみのある小さな家だ。
三角屋根と小窓が特徴的でペンションの小さいバージョンみたいな感じの建物だ。
店内は星型のペンダントライトとレトロな時計が壁に掛けてあり、可愛いらしい雰囲気だ。
従業員は私と一匹の熊である。
カラン。入り口のベルが鳴る。すると、一人の青年が店に入って来た。
高校生くらいの若い男の子だ。
前にも一度、お店に来てくれたことがある子だ。
明るく元気な感じで爽やかな笑顔が素敵な子だなと思っていた。
最初この店に来た時はここは山の近くにある為、学生さんはあまり来ないので珍しいなと思っていた。
風早陸「あの、ここで働かせて下さい!!」
あこ「うち、求人は出していないの、従業員を雇うお金もなくて・・・ごめんなさいね」
陸「ただ働きでいいです!俺、熊が好きで一緒に働きたいんです!!」
熊が好き、その言葉に反応したプフがお店の奥から顔を出す。
陸「あ!!あの時の熊だ!」
青年はプフを見ると目を輝かせた。
その表情から熊が本当に好きなんだと伝わってくる。
プフとは熊の名前で、種類はツキノワグマ。年齢は5歳。
プフの体高は約50cm、身長は150cmであこの身長が150cmなのでちょうど同じくらいだ。
プフは二足歩行で歩いている為、目線があこと同じになる。
あこと同じ、と言ってもサイズは多少異なるが同じ種類のエプロンとバンダナを付けている。
なぜプフという名前なのかと言うと、自分の部屋にあるプフの肌触りと、この子の肌触りが似ていたからだ。
あこ「気持ちはとっても嬉しいんだけど、さすがにただ働きさせるわけにはいかないのよ・・・」
陸「どうしても無理ですか・・・?ボランティアでいいんです・・」
あこ「ボランティア・・・」
プフはあこの肩に顔をちょいちょいっとつついた。
プフ「くまくまくまくま」
あこ「え、ここまで言ってるんだからボランティアしてもらえばいいじゃないって?」
プフはうんうんと頷く。
陸「え!?熊の言葉が分かるんですか!?」
あこ「ええ、私、動物の言葉が分かるのよ」
陸「す、すっげー!!いいなぁ!!」
より一層、青年の目から輝きが放たれる。
その姿を見たあこは決心する。
あこ「分かったわ、ボランティアとしてなら店で働いてもいいわ」
陸「まじっすか!!やったー!!」
陸はバンザイをしながら喜んでいる。
あこ(ふふ、可愛いなぁ)
陸「あの、俺、風早陸って言います!よろしくお願いします!」
陸は元気良く自己紹介をした。
あこ「私は夏花あこよ(なつばあこ)よ、このパン屋のオーナーをやっているの、よろしくね、この子はツキノワグマって言う種類の熊で性別はオス、名前はプフ、見ての通り、人間に危害を加えるようなことはしないから安心してね」
陸「はい!へぇ、プフって言うんですね!可愛い名前ですね!でも、どうしてまたプフなんですか?というかプフって何だ!?」
陸は初めて聞く名前に首を傾げている。
あこ「プフっていうのはモロッコで伝統的に使われている、山羊革でできたクッションスツールのことよ、
私の部屋にあるやつは山羊革じゃなくてもふもふしたタイプのなんだけどね、
お気に入りのやつなんだけど、お腹の感触がこの子に似ていたの」
陸「なるほど!それでプフなんですね!プフ、これからよろしくね!」
陸が挨拶をするとプフは手を出した。
あこ「プフが握手したいみたい、握手してあげて」
陸「はい!わあぁ!熊の肉球だぁ!思ったより柔らかいんですね!」
あこ「そうなの、本来、熊の肉球は硬いグミみたいな感じらしいのだけどプフの肉球は普通のグミみたいにプニプニしているわ」
陸「へー!なんとも言えない!このプニプニ感!」
あこ「プフは稀なケースで安全な子だけど、野生の熊を見ても近付いたらだめよ?」
陸「はい!もちろんですよ!普段はぬいぐるみで我慢してます」
あこ「え、熊のぬいぐるみを持っているの?」
陸「はい、友人と動物園に行った時に買った手のひらサイズのぬいぐるみですけど」
あこ「そうなの」
陸「友達には男なのにぬいぐるみ買うのかよって笑われちゃいました笑」
あこ「んー、私はいいと思うけどなぁ・・癒しは大事だもの!」
陸「ありがとうございます!そう言ってもらえて嬉しいです」
あこ「ボランティアは何曜日に来るの?」
陸「平日は学校なので土日ですかね」
あこ「パン屋は火曜と金曜と日曜がお休みよ、ちなみに営業時間は13時から17時ね」
陸「じゃあ土曜ですね!」
あこ「分かったわ」
陸「えーと、パン屋だから仕込みの時間とかももちろんありますよね?」
あこ「ええ、10時から始めているわ」
陸「結構ゆっくりなんですね!?パン屋って朝早いイメージが強かったですけど」
あこ「このパン屋はね、沢山売る為にやっている訳じゃないの、あくまで私の趣味、だから無理のない範囲でしかやらないの」
陸「あ!それで一番混む時間帯や日曜はやらないんですか?」
あこ「あんまり大きな声じゃ言えないんだけどね」
あこは人差し指を口に置き秘密よと笑った。
陸「いいと思います!無理すれば偉いってわけじゃないですもん!それに、人生楽しめなかったら辛いだけですからね!」
あこ「そうそう、あ、そうだ、陸君、お店に来る時間はどうする?大変だから私的にはお店の営業時間だけでいいと思っているんだけど」
陸「いえ!10時からやらせて下さい!最初は分からないことだらけでいっぱい迷惑かけてしまうと思いますけど俺、頑張りますんで!」
あこ「ありがとう、助かるわ、10時からだけど初日だけは9時に来てもらえるかな?色々と説明もしたいし、
その後は15分前に来てくれればいいわ」
陸「分かりました!」
こうして、もふもふパンに新たな従業員が加わった。
次の土曜日。
陸「お願いします!!」
陸君は素直で言ったことをきちんと守ってくれるので安心して作業に取り掛かることができた。
パンの仕込みは力仕事が多いので助かる。
プフが来てからは今まで台車を使って一つずつ運んでいた重い材料も、軽々運んでくれるし、パン生地をこねる作業もプフ専用の手袋をつけてやってもらっている。
陸君は細身ながら空手をやっているらしく、力仕事なら任せて下さいと言ってくれた。
プフと陸君が加わってくれれば百人力だ。
一生懸命なその姿が可愛いらしい。
力仕事はプフと陸君に任せ、私は別の細かい作業に専念することになった。
あこ「お疲れ様、休憩にしましょう、今12時だからお店の開店時間までゆっくりしてて」
陸「ありがとうございます!」
あこ「飲み物何にする?と言っても牛乳か麦茶しかない
けど、他に飲みたいものがあったら近くにコンビニもあるわよ」
陸「いえ、俺、牛乳飲みたいです!」
あこ「分かったわ」
あこは冷蔵庫から牛乳を取り出し、コップに入れた。
あこ「はい、どうぞ」
陸「ありがとうございます!」
あこは陸に牛乳を渡すと、今度は別の口の広めのマグカップに入れてレンジで人肌ほどに温め、その中に蜂蜜を入れて溶かし、プフに出した。
陸「え!それ、あこさんのじゃなくてプフのだったんですか!?」
あこ「ええ、私は麦茶を飲むからこれはプフのよ」
プフはイスに座るとマグカップを器用に両手で持ち、ゴクゴクと一気に飲み干した。
すると、手であこの裾を引っ張ってきた。おかわりが欲しいという合図だ。
プフ「くまっくまっ!」(ちょーだいちょーだい!)
あこ「はいはい、おかわりね」
陸「水じゃないんですね」
あこ「そうなの、プフは牛乳が好きでね、蜂蜜も好きだから試しに混ぜてみたら気に入ってずっと飲んでいるのよ」
陸「夏なのにあっためるんですね」
あこ「冷たいのよりぬるめがいいみたい」
陸「ホットミルク飲んでる熊なんて可愛いですね!」
あこ「でしょう?ふふ」
あこさんは牛乳を飲んでいるプフを微笑ましく眺めている。
何だかあこさん、プフのお母さんみたいだなぁ。
いいなぁ・・・。
陸は幼い頃に母親を亡くしている為、プフが羨ましく思ってしまうのだった。
先程お母さんとは言ったが仲のいい兄弟にも見える。
弟の面倒を見る良きお姉さんみたいな感じもする。
あこ「?どうかした?」
陸「え!?あ、いえ・・あこさんとプフ、兄弟みたいで微笑ましいなって、背丈も同じくらいですし」
あこ「あー、私、弟いるからかな」
陸「え、あこさんって弟がいたんですね」
あこ「うん、弟が落ち込んでる時によく頭撫でてたからその癖が出たのかも」
陸「優しいお姉さんなんですね・・いいなぁ・・」
プフは陸に近寄ると、手を伸ばし、肉球で頭をプニプニと押した。
あこ「あらあら、頭を撫でてくれてるみたいね」
陸「プフ・・・」
あこ「よしよし」
陸「え!あ、あこさんまで!?」
あこ「あ、ごめんつい・・・セクハラで訴えないでね?」
陸「そんなことしませんよ!とゆうか嫌じゃないですし・・・」
よく見るとあこさんはプフと俺の頭を両方撫でていた。
俺は何だかくすぐったい気持ちになっだけど、それが心地良かった。
ここは温かい場所だなぁ。
17時。
あこ「お疲れ様ー!初日よく頑張ったわね」
陸「ありがとうございます!楽しかったです!」
あこと陸とプフはそれぞれエプロンとバンダナを外した。
あこ「どう?続けられそう?」
陸「はい!これからもよろしくお願いします!」
陸は元気よく頭を下げた。
あこ「こちらこそよろしくね」
陸「あれ?そう言えばあこさんはこのお店で生活してるんですよね?」
あこ「そうよ」
陸「プフはどうしてるんですか?」
陸はあこの隣に立っているプフを見た。
あこ「プフは普段は森の中で生活しているの、
仕事の時間になるとお店にやってくるわ」
陸「へぇ!自由でいいですね!」
あこ「プフも自由な時間が必要だと思うから」
陸「優しいんですね」
あこ「そうかな?」
プフが擦りすりとあこに体をよせ、あこが頭を撫でる。
するとプフは嬉しそうな表情を浮かべ、森の中へ帰っていった。
そして7月下旬になり、陸は夏休み期間になった。
その為、夏休み期間中だけ営業日である月水木土にお店に行くことになった。
あこ「せっかくの夏休みなのにありがとう」
陸「いえいえ!俺、ここの仕事、じゃなかった、ボランティア楽しんでやってるんで」
あこ「ありがとう、休みたい日は自由に休んでいいからね」
陸「はい!」
こうして夏休み期間中、オーナーのあこと熊のプフと陸の三人・・・二人と一匹でお店を回すことになった。
2話 プフとあこ
陸「そういえば、ずっと気になってたんですけど、あこさんはプフとどうやって知り合ったんですか?」
あこ「ん?あー、それはね」
3年前の春。あこがもふもふパンを始めてすぐのこと。
もふもふパンは民家に近い場所にあるが、少し歩くとすぐに山道が見える。
休みの日に時々ハイキングに行っていた。
頂上を目指して山を登っていく。
頂上には休憩用のベンチがいくつかある。
あこはそのベンチで休憩しながらサンドイッチを食べようと考えていた。
しかし、山道を登っていく途中、
草むらからガサガサッと音がし、びっくりしたあこは咄嗟に音のする方へ視線を向けた。
そこには小さな熊がいた。
あこ「く、熊!?・・・ど、どうしよう・・この子はまだ子どもみたいだけど近くにお母さん熊がいるよねきっと」
子熊はあこに何かしてこようとしてくる気配はない。
しかし、何かを呟いているようだ。
子熊「くまくま・・・くまぁ・・くまくま!くまくまくまくま、くまぁくまくまくま」
(お腹空いたな・・・ママ・・だめだめ!僕はもう親離れしたんだからママはもう頼れないんだ)
あこ「・・・」
そうか、もう親離れしてるからお母さんは近くにいないんだ。
あこはリュックからサンドイッチと水筒の水を出した。
サンドイッチは鯖サンドだ。
温かい時期だったら食中毒が怖いが、春のまだ涼しい時期だったので、大好きな鯖サンドにした。
焼いた鯖に塩を降り、レタスと一緒に自家製の食パンに挟んだだけのシンプルなものだ。
あこ「おいで」
子熊は恐るおそるあこに近寄るが、あこが害のない相手だと分かり、さらに近寄ってきた。
あこの側まで寄るとサンドイッチを受け取り、座った。
すると、よほどお腹が空いていたのか勢いよくむしゃむゃと食べ始めた。
あこ「可愛いなぁ・・・」
まだ自分の膝丈ほどしかない子熊の可愛いらしい姿につい頬が緩んでしまう。
あこ「お水もあるよ」
あこは水筒のカップに水を出すと子熊に差し出した。
すると子熊は座ったまままるで人間のように器用に両手で掴んで水を飲んだ。
子熊「ごくごくっ」
あこ「器用だなぁ・・・」
子熊「くまー!くまくまー!!」
(はー!美味しかったー!!)
子熊は満足した顔を見せた。何とも人間より表情豊かな子熊だ。
あこ「良かった」
子熊はよっぽど鯖サンドが気に入ったのかあこに近寄ると擦りすりと体を寄せてきた。
あこ「もう鯖サンドないんだ、ごめんね」
子熊「くまくまー」(また食べたいなー)
あこ「そんなに気に入ってくれたんだ、また持ってくるね」
子熊「くまー!!」(わーい!!)
子熊はどうやら私の言葉を理解しているようだった。
あこは自分が動物の声が分かるが、意思疎通できることはなかった為驚いたが子熊の可愛さに細かいことは気にしないようにした。
それからほどなくして、その子熊はパン屋の前に現れた。
どうやらあこの鯖サンドが忘れられず、山の上の方から
民家があるこの場所まで降りてきてしまったらしい。
あこ「困ったな・・・パンの仕込みしないといけないんだけど・・」
子熊「くま?」(仕込み?)
あこ「あー、んーと、パンを焼く準備のことだよ」
子熊「くま!くま!」(仕込み!仕込み!)
子熊は立ち上がるとあこの足に肉球でプニプニした。
仕込みの意味は理解していないようで遊びだと思っているみたいだ。
あこ「え、一緒にやりたいの?熊がパン作るなんて聞いたことないよ・・大丈夫かな・・・」
心配していたあこだったが、やり方を教えていたら意外にも子熊は簡単な作業ならできるようになってしまったのだ。
それどころか、子熊はあこより力があるようで、こねる、重いものを運ぶ作業をよく手伝ってくれるようになった。
あこ「な、なんか段々人間みたいになってってる、い、いいのかな・・・」
いいのかなと言いつつも自分に懐いてくる子熊が例え鯖サンド食べたさ故だとしても可愛くて仕方なかった。
そうこうしているうちに子熊は二足歩行になり、エプロンを付け、バンダナまで頭に巻くようになっていた。
あこ「そろそろ名前決めなきゃだよね、何がいいかな・・・」
子熊は首を傾げている。
あこ「この子のこの肌触り、何かに似てるんだよね・・・あ!!部屋にあるプフだ!名前プフにしよう!
いいかな?」
子熊は頷く。
あこ「よし、今日から君はプフだ!よろしくねプフ!」
プフは名前を付けてもらって嬉しかったのかあこに抱き付いた。
あこ「可愛い!!」
あこはソッコー抱き締め返した。
こうしてプフとあこはパン屋を一緒にやることになった。
プフはパン屋の営業時間が終わると山に帰っていく。
最初はもう来ないかもしれないと思っていたあこだったが、仕込みの時間になるとやってくるプフをいつしか迎え入れ、一緒にパン作りをするようになった。
あこ「細かいことは気にしない!」
プフ「くーまくーま!」(そーだそーだ!)
3話 プフと仲直り
夏休み期間。
喧嘩中のカップルが来店してきた。
彼女が店の中で泣き出してしまう。
彼氏「おい、店で泣くことないだろ」
彼女「だって・・・ぐすぐすっ」
その時、プフが彼氏の前に出てきた。
彼氏「うわ!?く、熊!?」
咄嗟に彼女を庇う姿勢に入る。
プフが手を差し出してきたため、思わず彼氏は目をぎゅっとつむる。
彼女「きゃあ!!」
彼女も思わず目をつぶった。
プフは彼氏の肩を両手で掴み、彼女の方へ向き直らせた。
彼女「え?」
彼氏「!?な、何だよ?」
プフは自分の方へ振り返ろうとする彼氏の背中を顔でぐいぐいと彼女の方へ押す。
するとプフは彼氏に何やら伝えたいことがあるらしい。
プフはジェスチャーをし始めた。
プフ「くま!」
プフは彼女を手で指す。
あこ「なになに、女の子を」
プフ「くま!」
プフは泣き真似する。
プフ「くまくま〜」
あこ「泣かせたら」
プフは顔をふるふる横に振った。
プフ「くま!」
あこ「いけないよ」
彼氏「な、何であんたにそんなこと分かるんだよ?」
陸「あ、彼女、動物の言葉が分かるんですよ」
彼氏「ま、まじかよ・・・」
彼氏は数秒黙った後。
彼氏「わ、悪かったよ・・」
彼女「私こそごめん」
二人はプフのおかげで無事仲直りできたようだ。
帰りは手を繋ぎながら帰っていった。
あこ「良かったよかった、プフ、ありがとね」
陸「プフ、お手柄だね!」
プフ「くまー!!」(わーい!!)
4話 プフの癒しの肉球
夏休み期間。
お店に男性二人が来店した。
偏見はよくないと思いつつも、ガラが悪そうな服装とガニ股歩きをしている目つきの悪い二人だ。
男1「熊がいるって噂聞いてきましたー!」
陸「な、何だあいつら?」
あこ「陸君、刺激しないようにね」
あこはこそっと陸に耳打ちする。
陸「は、はい」
プフは熊という言葉に反応したらしく、店の奥から顔を覗かせた。
男2「うお?!本当にいやがる!!」
男1「ばーか、何ビビってんだよ、ただの着ぐるみに決まってんじゃん!」
男2「はは、だよな!」
男1「つーか、店員さん可愛いね!俺ちょータイプなんだけど!」
男2「俺らと遊ぼうよー」
二人の男がふざけてあこに近寄ろうとする。
陸「ちょっと、何なんですかあなた達は」
陸は咄嗟にあこを庇う。
あこ「陸君・・・」
男1「なになに、ヒーロー気取りかー?」
男2「お子ちゃまはすっこんでろー」
その時、プフがあこと陸の前に立つ。
男1「な、なんだよ、そこどけよ!」
男2「そーだそーだ!」
二人はプフをどけ、あこと陸に近付こうと試みるが・・・。
プフは男1の頭を肉球でポンっとおさえて動きを止め。
男1「なにしやが・・・」
男の2の顔を肉球でおさえて動きを止めた。
男2「何す・・・」
男1「な、なんだこのあったかくてプニプニとした感触は・・・ほわほわ」
男2「な、なんだこの妙に安心感のある温かい感触は・・・うおぉ!お母さあぁん!」
一人目の男は何故か癒されたらしく落ち着きを取り戻している。
二人目の男は何故か泣きながらお母さんと叫んでいる。
陸「・・・汗」
あこ「・・・汗」
陸とあこはそれを呆れた様子で見ている。
男1「俺らが悪かったよぉ!!あんぱんとサンドイッチ買うよぉ!!」
男2「俺も俺も!メロンパンと焼きそばパン買う!!」
陸「な、なんかよく分からないけど丸くおさまったみたいですね」
陸はひそっとあこに話しかける。
あこ「ほんとね!お店で暴れられたらどうしようかと思ってたけど、プフありがとう!おかげで助かったよ」
プフは誇らしげな顔で両手を腰に当てた。
陸「あ、めちゃくちゃ満足そう笑」
あこ「ふふ、あ、陸君もさっきは庇ってくれてありがとね」
陸「いえいえ!男として当然のことをしたまでです!」
あこ「頼もしいわね」
お会計終了後。
あこ「ありがとうございましたー!」
陸「ありがとうございました!!」
二人はすっかり改心したらしく、帰り際には深く頭を下げ、ありがとうございましたー!!と大声で言うと帰っていった。
陸「まさか肉球で解決しちゃうなんて・・・」
あこ「ねー、私もびっくりだよ」
二人はプフを見ると抱き付いた。
こうしてプフの肉球パワーで平和的解決をしたのであった。
5話 プフとおばあちゃん
夏休み期間。
おばあちゃんとその息子が来店してきた。
息子ははプフを見るや否や・・・。
息子「え!?く、熊!?な、なんだ着ぐるみか・・・」
あこ「いえ、本物ですよ」
息子「え!?」
陸「えーと、この子プフっていう名前で、熊なんですけど安全な子なんです!」
息子「いや、でも・・・ってばあちゃん?」
おばあちゃん「あんたはあの時の・・・」
プフとおばあちゃんが見つめ合う。
あこ「え?プフと知り合いなんですか?」
おばあちゃん「ああ、昔、おじいさんが生きていた頃、
まだこの熊が小さかった頃だね、
私達はピクニックをしていてね、
そんな時、お腹を空かせたこの子がいたんだ、
親熊が見当たらなかったから襲われる心配はないと安心したと同時にこの子が心配になっちまってね、
持っていたおにぎりを全部あげたんだ」
あこ「そうだったんですね・・・」
プフ「くま!くま!」(久しぶり!久しぶり!)
おばあちゃん「おや?何か言ってるみたいだけど・・・」
あこ「久しぶりって言ってます」
息子「え、言葉分かるんですか!?」
陸「はい、彼女は動物の言葉が分かるんです」
息子「な、なんと・・・」
おばあちゃん「そうかい、元気にやってるんだね、安心したよ、
おじいさんが死んでから外に出るのが億劫になっちまってだけど息子が私を連れ出してくれて良かったよ、
ありがとうね」
息子「ばあちゃん・・・」
おばあちゃん「おかげであんたに会えた」
プフは久しぶりに会えて嬉しそうにしている。
おばあちゃん「触ってもいいかい?」
プフは頷いた。
おばあちゃん「ありがとう」
おばあちゃんはプフに抱き付いた。
おばあちゃん「あったかいねぇ」
プフはおばあちゃんを両手で抱き締めた。
息子とあこは顔を合わせて涙ぐんだ。
おばあちゃん「本当にありがとう、また来るよ」
あこ「はい!いつでもお待ちしています」
陸「ありがとうございましたー!!」
プフは二人がお辞儀すると同じようにお辞儀をした。
6話 プフとほのぼのピクニック
もふもふパンが休みの日。
パン屋の近くにある川であこと陸はプフと一緒にピクニックをすることになった。
今日は平日なこともあり人はほとんどいない。
晴天。夏場とは思えないほどここは涼しい。
天然のクーラーだ。
川の流れの音も聞こえてきて癒し効果抜群な場所である。
川の近くに少し坂になっている草むらがあり、そこにレジャーシートを広げる。
あこ特製の鯖サンドを食べる。
陸「んー!うまぁ!!あこさんの鯖サンド最高です!」
あこ「ありがとう」
プフ「くまくま!!」(おいしいおいしい!!」
あこ「ふふふ、プフもありがとう」
陸「はー!お腹いっぱい!ねむーい!」
満腹からくる眠気に勝てず、陸はそのままレジャーシートの上に寝転がろうとした。
プフ「くまくまくーま」
あこ「陸君、プフがお腹借りていーよって言ってるよ」
陸「え!?ほんと?いーの?」
プフは頷く。
陸「やったあ!!プフありがとー!」
陸はそっとプフのお腹に横になる。
陸「わあぁ、プフのお腹モフモフだぁ!!」
あこ「プフが大きくなってからは時々こうやってモフモフなお腹を借りてお昼寝してるんだよ」
あこは陸が横になっている反対側のプフのお腹のところに座る。
陸「それ、めちゃくちゃ最高ですね!!プフ、二人分で重くない?」
プフ「くまくま!」(大丈夫だよ!)
あこ「大丈夫だよって」
陸「良かったー!俺、少し寝ますね・・・すやぁ」
あこ「うん、おやす・・・ってもう寝てる・・・」
陸はあこが羨ましく思うほどに寝入りが早かった。
プフも陸が眠ってすぐに寝息を立て始めた。
あこは寝ている二人の姿を見て微笑ましい光景だなと目を細めた。
あこはプフのお腹に寄りかかり座ったまま空を眺めていた。
あこ「晴れて良かった」
こうして約1時間。二人と一匹の熊は日向ぼっこをして過ごした。
番外編 鈍感
俺は街中で偶然、あこさんを見つけた。
男の人と二人で歩いている。
彼氏、なのかな?いや、あこさんは俺より7コ上で24歳。
彼氏の一人や二人いてもおかしくはない・・・。
もや・・・。
後日。
あこ「え?彼氏?」
陸「このあいだ、街で見かけて・・・」
あこ「あー!もしかしてこの人のこと?」
あこは陸が街中で見た男の写真を見せた。
陸「しゃ、写真まで・・・ガーン・・」
あこ「この人、彼氏じゃなくて私の弟だよ」
陸「え!?あ、この人があこさんの弟さん・・・」
あこ「うん」
陸「な、なんだ、ほっ・・は!でも、その彼氏は・・・」
あこ「いないよ」
陸「ぱあぁっ、そ、そうですか」
あこ「?何でそんな嬉しそうなの?」
陸「え、俺嬉しそうな顔してました?」
あこ「うん、なんかまるでお姉ちゃんを取られたくない弟って感じ、可愛い」(鈍感〜)
陸「そ、そうですね、そんな感じです・・・」(ず〜ん)
プフはそんな陸の肩にぽんっと手を置くとうんうんと頷いた。
プフは俺の気持ちが分かっているようだ。
陸「プフ・・・お前って奴は〜!」
陸はプフに抱きつく。
あこ「仲良いわねぇ、ふふふ」(分かってない)
プフ(がんばれ!りく!!)