表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/17

-07- 引きこもり と ダンジョンバトル

「メイ、お前も探索者試験を受けるなら持って行け」


探索者試験のテキストは公開されていた。俺は印刷した物をメイに渡した。

既に探索者試験は各地で始まっており、俺の住む地域でも近々受付が開始される予定だ。

地域差があるのは、海外からの影響が大きい。国内のダンジョンは発生騒動が有った時に全て閉鎖された。しかし海外では探索が進められた国もあり、大きな成果がもたらされた。

世界から後れを取る事にはなったが、資源の乏しい日本が閉鎖を続けられる訳が無かった。ダンジョンの一般開放が行われる事となったが、全国で足並みをそろえる時間も無く順次解放となった。


「有難う。カゲちゃんは探索者になって、ダンジョンを攻略して回るの?」


「違うぞ。俺は実業家になるんだ!」


「ジツギョーカ?って?何?」


メイが、コテッと頭をひねって訊いて来た。


「つまり、会社を作って部下を働かせて、俺はゴロゴロするって事だ」


「・・・今と、あまり変わらないね」


「何を言ってるんだ。沢山の人からお金を集めるから、ガッポガッポ儲かるんだ。(ダンジョン)(ポイント)だけ有っても贅沢は出来ないからな」


「そんな都合の良い事が出来るの?」


「勿論だ。仕方が無いなぁ。少しだけメイにも俺の計画を教えてやろう。 俺はこのダンジョンを毎日毎日改造している」


『実際に働いてるのはボクだけどね』


「ダンジョンを天然温泉のスーパー銭湯にする!」


(ダンジョン)(ポイント)が足りなくてお湯がヌルイけどね』


「更に家族連れも楽しめるように、簡単なアトラクションも併設する」


(ダンジョン)(ポイント)が足りなくて落とし穴くらいしか作れないけどね』


「将来的にはダンジョン内に宿泊施設も作りたいが、まだ手が回っていない」


(ダンジョン)(ポイント)が足りなくて宿泊施設どころかトイレも作れてないけどね』


「へ~。つまりプルちゃんに働かせてカゲちゃんはゴロゴロするの?」


おい!毛ムクジャラ!! お前が余計な情報を言うから、俺が悪者のような印象を持ってしまっただろ。


「・・・メイ。どうも悪意が有るのように聞こえるんだが。俺だった働くぞ。その為に探索者に成るんだ」


「本当に~?」


「本当だぞ。それにダンジョンに多くの人間が入れば(ダンジョン)(ポイント)だって貯まるんだ。ただ働きさせてる訳じゃ無い。みんな幸せになるWin-Winな関係なんだぞ」


「カゲちゃん、こんな田舎にお客なんて来るの?」


「『 あ・・・ 』」


地元民の公衆浴場としてなら・・・ムリだな。それじゃあ人数が少な過ぎる。やはり客を呼ばないと出来れば団体客だな。だがどうやって呼べば良いんだ。

こんなド田舎に来るような人は変わり者しか居ないだろうな。


「ま、まぁ。その辺は、これから、追々、おいおぃ・・・考える」


ダンジョンを使って商売するのに、法的な事だけを考えていた。色々調べたが探索者に成れば問題ないようだった。たぶん法整備が進んでなくて禁止する法律がまだ出来てないだけだろう、とは思ったが今なら合法的にヤリ放題なのだ。だから数カ月もかけてダンジョンの改造を頑張って来たが、集客方法を考えて無かった。


集客は設備が整ったら、なんとな成るだろう。未来の自分に期待しよう!



「カゲちゃんが引きこもりを卒業するなら、私は応援するよ」


そう言いながら、メイは俺が渡した探索者試験のテキストをペラペラとめくって見ている。

やはりメイも興味はあるようだ。俺も勉強を始めないとな。筆記試験で不合格になるような不名誉は要らないからな。


「カゲちゃん、ここに書いて有る事って本当なの?」


メイが頭を傾けながら俺に訊いて来た。

俺はまだ読んでないが、テキストは正式な物だ。嘘が掛かれている訳がない。


「3ページ目に、モンスターはダンジョンから出て来ない。って書いて有るよ」


俺とメイは同時に、毛ムクジャラを見つめてしまった。

コイツは勝手にダンジョンから出て、俺の家の中や庭も歩き回っている。


『それはその記載が間違ってるよ! モンスターはその気になればダンジョンから出れるよ。 出ないのはダンジョンマスターが命令しないからだよ!』


「プルちゃん、どうして命令しないの?」


『スタンピードっていう技を使うと外に沢山のモンスターを出して一気に人間を倒せるんだ。(ダンジョン)(ポイント)を沢山稼げるけど折角増やしたモンスターも居なくなっちゃうから、その後が困るんだよ。人間から危険だと思われて攻略部隊を送られても困るけど、一番はダンジョンバトルだね。モンスターが減ってるから、格下が格上を倒すチャンスなんだ! だから、まともなダンジョンマスターだったらスタンピードは使わないよ』


「じゃあ、みんな知らないだけなんだぁ。 でもブルちゃんは普通に出入りしてるよね」


『ボクはダンジョンマスターだから自分の意志で好きに動けるんだよ』


「そうなんだぁ。プルちゃんて凄いんだぁ」



俺は毛ムクジャラの話しを聞いていて1つの可能性に気が付いた。

Sランクダンジョンで在りながら(ダンジョン)(ポイント)を激減させたダンジョンを、他のダンジョンマスターがどう見ているのか?

間違いなく、ポンコツマスターだと思っているだろう。だがポンコツでもSランクだ。ダンジョンバトルで簡単に勝てるとは思えない。ならどうする?

簡単だ。自滅するのを待った方が良い。それほどのポンコツなら必ずスタンピードをやらかす。そこを叩けば簡単に勝てる!無理に攻める必要なんて無い。

普通に頭が回るダンジョンマスターなら、この考えに行き着くだろう。


つまり、ダンジョンバトルの可能性は極めて低く、安全って事だ。



この物語はフィクションです。  

実在の人物・団体・地名とは一切関係が無い訳が無い。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ