26話 朝の礼拝
左右に木製の10人掛けの椅子がいくつも並べられ、そこに神官がずらりと着席し、中央には赤色のカーペットが敷かれている。
一番奥には女神様と思しき像が置かれ、その前には、昨日ダニエルを専属神官にしたい、と言った時に話し合いを提案してくれたお爺さんが立っていた。刺繍が紫色だし、多分教皇だろう。
ダニエルは何も言わず私の手を引きながら歩き出した。
「遅かったではないか。お前が遅刻など珍しい」
歩いている途中で黄色の刺繍をした神官に話しかけられたが、ダニエルは一切無視した。
話しかけてきた神官は無視されたことが気に食わなかったのか、青筋を立て身体を震わせている。
「専属神官に任命されたからって。調子に乗るなよ」
さっきよりも小さい声だったが、シーンとした聖堂の中にはよく響いた。
その瞬間場が凍ったが、言った張本人気づいていないのか、足を組んでふんっと鼻を鳴らした。
なんだあいつ。
何か言い返してやろうと思い、ダニエルとの約束を破って彼に抗議しようとした瞬間、教皇が口を開いた。
「バーナード神官、大聖堂内では口を慎むように」
ギロリと神官を睨み、発せられた威厳のある声に場がさらに緊張した。心なしか神官全員がさらに姿勢を正した気がする。
「も、申し訳ございません」
先程までの威勢はどこへ行ったのか。名指しで責められたさっきの神官は下を向いて青ざめている。教皇は彼を一瞥すると視線を前に戻す。
教皇は教会内でこれほどの権力を持っているのか。独裁を実現しようと思えばできるだろうな。今後敵に回さない方が良さそうだ。
確か、筆頭聖女の専属も務めているのだったか。
筆頭聖女にも会った時は敵に回さず、顔を立て、波風を立てないのが賢明だな。
なぜ今こんなことを考えているのか、というと現実逃避だ。
神官達の視線が痛いが、手を引っ張られているため、逃げ出すことができない。元々注目されることが好きじゃない。涙が出そうになるが、そこだけは必死に耐えた。
ダニエルはどうしてこんなゆっくり歩くんだ。
走るのはいけないと分かるが、何もこんなにゆっくり歩く必要はないだろう。
明日からは早めに着席させてもらおう、と決意する。
なんとか一番前の席まで行くと、そこには昨日見た聖女達が座っているのが見えた。
その後ろには赤色とかオレンジ色の神官が座っているが、色順ではなくバラバラに座っているから、もしかしたら専属神官なのかな。
案の定、ダニエルは空いている席に私を座らせると、私の後ろの席に腰を下ろした。
教皇が私達2人が座ったのを確認すると再度口を開く。
「今年、新たに聖女様をお迎え出来たことを嬉しく思う。では、朝の礼拝を始める」
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