25話 教会の朝
朝、目が覚めたのは、まだ日の出前の時間だ。普通の5歳児であればまだ寝ている時間帯だが、レイラ様の専属魔法師だった時は、いつもこの時間に起きていたからだろう。
ベットから降りてクローゼットを開くと、中には昨日の聖女達が来ていた服と同じデザインのものが入っている。サイズから見て私のものだろう。
服を着替えることなくクローゼットを閉じ、ベットに腰掛けた。
「やっぱり、朝は鍛錬だよね」
今後は、光魔法を使う活動が主になるだろうが、いざという時のために自分の身体を鍛えておくべきだろう。
そう思った私は、室内でできる基礎体力向上訓練を始め、リチャードとダニエルが起こしに来るまで続けてしまった。ダニエルに「何をなさっているのですか!!」と説教されたのだった。
「貴方は聖女様なのです。もう少しその自覚を…」
「おい、そろそろ時間的にまずいぞ」
延々と説教をしていたダニエルに、ドアの側に立っていたリチャードが声をかける。
やった…この魔王みたいなダニエルから解放される…
ホッとしていた私だが、ダニエルはリチャードの言葉にハッとすると、いきなり私の服を剥ぎ取った。
「ぎゃー!何するんですか!!」
「これから朝の礼拝の時間なのです!今日はその説明の為に早めに起こしにきたのですが、貴方が妙なことをしているから、その説明が出来ませんでした。今から急いで着替えさせますので、じっとしていて下さい」
確かに身体は5歳児だが、私はリーファとして24歳まで生きた記憶があるのだ。成人した男性に着替えを手伝ってもらうなど…色々と恥ずかしくて仕方がない。
だが、そんなことを考えているうちに私の着替えは終わり、ダニエルは私の手を掴むと部屋を出て足早にどこかへ向かい出した。
小走りで連れていかれるうちに、あれ?と思う。
昨日、部屋に案内された時には廊下の端に何人かの神官を見かけたのだが、今日はまだ誰ともすれ違っていない。
「え、あの、ちょっと!どこに行くのですか?」
ダニエルは何も言わずにただ私の手を引きながら歩いていたが、後ろから付いてきていたリチャードがかわりに答えてくれた。
「これから大聖堂で朝のお祈りの時間だ。聖典の一部を教皇が拝読した後、一緒にお祈りをするんだよ。君は周りと同じようにすれば良い」
にこりと私に微笑みかけてくれるが、普段あまり笑わないのか口元がピクピクしている。
リチャードが話し終えると同時に、ダニエルが立ち止まった。
急に立ち止まるものだから、私の顔がダニエルの太腿に直撃して、「ぶへっ」と変な声が出てしまったじゃあないか。
文句を言おうと、上を見上げるとダニエルは厳しい顔で私に話しかけた。
「ここから先では私語を慎んでください。話して良いのは、教皇に話しかけられた時のみです。宜しいですね」
あまりにも怖い顔で言うものだから、私はただ、こくこくと頷く。
ダニエルは後ろにいるリチャードに目配せをすると、リチャードは私達の目の前にある大きな扉の取手を掴んだ。
「私はここまでしかお供できない。武運を祈る」
「…え?」
リチャードの物騒な言葉に吃驚して、それはどういう意味か聞こうとしたが、その前にリチャードによって扉が開けられてしまったのだった。




