18話 目標
他の神官から助言という形で反対されたが、私は意見を押し切り、彼が私の専属神官になることになった。
一度、2人でお話してみて下さい、と言われて話し合いの場が設けられた。今からでも、専属神官を変えることができますから、と念を押されたけど。
部屋に入った瞬間に、この部屋の周りに誰の気配もないことを確認する。よし、大丈夫そう。喋ろうとした瞬間、先にダニエルが口を開いた。
「あの、聖女様。私は」
「私にはエリザベス・ブローシュっていう名前がちゃんとあります」
私の言葉にダニエルは一瞬動揺したようだが、すぐに真剣な顔に戻る。
「…エリザベス様。私は平民なのです。あなたの後ろ盾にはなれません」
予想が当たっていたようだ。思わず口角が上がる。
聖女の後ろ盾となる神官が高位貴族出身だと、当主の思惑通りに神官は動く。教会と貴族は切っても切れない存在なのだ。
だが、私に後ろ盾は必要ない。だって…
「全然問題ありません。私、いつかは教会を出て行きたいのです」
「……はい?」
ダニエルは目を丸くした。
「私、目標があるんです」
ずっと考えていた。前世の記憶を取り戻したことは、何か意味があるのではないか。
そして、この結論に至った。リーファとしての心残りを叶えるために、私は記憶を取り戻したのではないか。
だったら、私がやる事は既に決まっている。
「目標、ですか?」
「そうです」
「……それは?」
ダニエルは恐る恐るといった様子で私に質問した。
私はにっこりと笑って答えた。
「人生の恩人に私の全てをかけて仕えること。それが1番の目標ですね」
今度こそ、何からもレイラ様を守り切る。それが1番だ。
「なるほど。その方の名前や特徴が分かれば今すぐにでも「名前どころか、年齢、性別、容姿、全て分からないんです」」
「…え?それでは、その方に会っても分からないのでは」
「そうかもしれません。でも、必ず見つけます」
ダニエルは私と暫くの間睨めっこを続けたが、ハァとため息を吐くとそれ以上は追及してこなかった。
「1番ということは他にもあるのですか?」
「そうですね。もう1つあります。復讐です」
魔人達に復讐する。それがもう1つの目標だ。
だがそんな事は言えないので、何に対して、の部分はぼかしたが。
ダニエルは、私の言葉にポカンとした後、頭を掻きむしった。
「…随分過激ですね。…ちなみにですが、誰に、どんな復讐がお望みなのですか?」
…おや。取り合って貰えないと思っていたので、少し驚いた。
彼は、私の意見をちゃんと聞いてくれる。本当に良い神官に巡り会えたかもしれない。
「命に変えても守りたかった人を殺した彼らに、彼らの命をもって償って欲しいです」
自分の気持ちを素直に答えた。実際のところ、もしこれで専属神官を辞退されたらと思うと少し怖い。だけど、ここで本当のことを言っておかなければ。
ダニエルは、ゴクリと息を呑む。
「あなたは何者なんですか?5歳児とは到底思えない」
うーん。何と答えれば良いか…
「でもまぁ、良いです。あなたが誰でも」
ダニエルの言葉に、私はビクッとしてしまう。
「私は、色持ち神官の中では異質の孤児院出身でして。孤児院の院長に推薦してもらった分、恩返しをと思って努力をしたは良いが、色持ち神官になった途端、肩身が狭いんですよ。嫌がらせなんて毎日だ。流石に神官を辞めてやろう、って思っていたんですよ。だけど、あなたと一緒にいる毎日は楽しそうだ」
「それは、つまり…」
「ええ、あなたの専属神官になりますよ」
「本当ですか!ありがとうございます!」
こうして、私の専属神官は確定したのだった。
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