12話 喪失とそれから
「何が…起こったの…」
家屋の下敷きになっていた町の住人2人を見つけ、テントへと馬を走らせた。
テントが見えた途端、強烈な違和感を感じた。
先ほど来た時はあんなに騒がしかったのに、今はテントの周りがやけに静かだ。
なぜだ。胸騒ぎがする。
テントに近寄ってみると、下を向いた騎士団員達が立ち尽くしていた。
誰も傷を負ってはいない。だけど…
「レイラ様は…レイラ様はどこに…」
レイラ様だけがどこにもいらっしゃらないのだ。
見る限り、聖女護衛騎士団のほぼ全員がここに集結しているだろう。
なのに、レイラ様だけが見当たらない。
そんな、まさか…
「……レイラが攫われた」
団長が重々しく呟く。
「…ならどうして、誰も魔人を追わないのですか。今ならまだ!!」
最悪の事態だ。どうしてレイラ様が…いや、それよりもどうして全員がここに居るんだ。一刻も早く、魔人を追うべきだろう!
「転移魔法だ」
「へっ?」
「あいつら、転移魔法を使ったんだよ」
団長は吐き捨てると、唇を血が滲むほど噛み、拳を強く握った。
「そんな…ありえません。転移魔法は神話上でしか…」
冗談なんて1回も口にしたことのない団長が、こんな時に冗談を言うわけがない。
そんなことは分かっていたが、頭が受け付けようとしなかった。
「じゃあ、俺が見たのは何だったって言うんだ!3人の魔人がレイラに一直線に向かっていったと思えば、レイラを抱えて一瞬で消えたんだぞ!あれが転移魔法じゃ無いって言うのなら、何なんだよ!」
団長は、「くそ!」と拳をテントの柱に叩きつける。
「そんな…」
絶望で何も考えられない。どうしてレイラ様が…
「副団長を含めた治癒師3人とそこの2人は、引き続き住民の避難と治癒を。残りは今から言う町へ向かって、レイラ様が攫われたこと、魔人が転移魔法を使ったことを伝えてくれ」
団長が全員へと指示を飛ばす。
そうだ、放心している場合じゃない。
「「「…っ!はい!」」」
やれる事をやるしかない。
レイラ様、どうかご無事で。私は、そう思いながらもう一度町の中へと馬を走られるのだった。
♢♢♢
レイラ様が攫われたという情報は、その日のうちに国中の、いや隣国の騎士団にも伝わった。レイラ様は隣国でも治癒活動をした事があったため、捜索には協力的だった。
だが、1週間経っても、2週間経っても、1ヶ月経っても…レイラ様が見つかることはなかった。
私と団長は、魔人の一件における処分が決定するまで、自宅謹慎が言い渡された。
守りきれなかった事が悔しくて仕方なかった。魔人を討伐できなかったばかりか、レイラ様を守れなかった。どれだけ悔いても、喚いても、レイラ様が見つかったという報告を聞くことはなかった。
私達は厳しい処分が下された。私は騎士団から除名。団長は一般兵への降格となった。
同時期、地下迷宮と呼ばれる魔物の巣窟が各地で出現するようになった。どのような構造なのか、魔物は何処から湧いてくるのか全て不明。
だが、魔人と関係があるのは間違いないだろう。何せ、ほとんどの地下迷宮には転移魔法が施されていたのだから。
国は、騎士団を各地に出現した地下迷宮へ派遣したが、構造は全く理解できなかった、らしい。
私は騎士団を除名された後、冒険者となった。
レイラ様を探すための魔道具、転移魔法や魔人について独自で研究を続けるためだ。毎日毎日、地下迷宮へと潜り、転移魔法の魔法陣を描き取ったり、魔物を倒したりし続けた。
魔法師・騎士として働いていた時の知識をフルに使った。年という月日を掛け、私は転移魔法について完全に理解し、使えるまでになった。
そして、私は再び魔人と相対することになる。
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