10話 町到着
次の日、私達はいつでも剣を抜ける状態で警戒態勢を取りながら進んだ。
ようやくこの森を抜ければ町が見えるだろう、というところまでやって来ているが、私達は皆、険しい表情だ。
この位置からでも町から煙が上がっているのが分かる。
もう町は全滅しているかもしれない。唇を噛み締めながら、私達は全速力で馬を走らせた。
町の城壁の近くまで行くと、人々の叫び声が聞こえる。
その声で、まだ人が生きているのだと安堵した私は、その時既に心が壊れていたかもしれない。
普段なら、早く助けなきゃと思ったはずなのに、まだ魔人がここに留まって他の町には被害を出していないことにほっとしてしまったのだ。
「行くぞ!全員いつでも戦闘開始になって良いよう準備しろ!」
「「「「はっ!」」」」
「レイラ達はここで待機していろ」
「「はっ!ご武運を!」」
事前にレイラ様の護衛は決まっている。
私と同じか、それ以上の剣の実力者の2人だ。
2人に預けてある救援笛が鳴ったら、何が何でも全員駆けつけることになっているし、それまで持ち堪えられる実力も持っている。
「ちょっと、クリフ。私も一緒に中へ!」
突然、大声がしたため振り返ると、レイラ様が2人の騎士に足止めされながら、叫んでいる。
事前に私から知らせる、とクリフが言っていたが、こうなることを読んで知らせていなかったのだろう。
「お願い、私も行かせて」
レイラ様の声に誰も振り返る事はせず、私達は町へと急いだのだった。
この時が、レイラ様と話す最後の機会だと思わずに。
♢♢♢
町の中は酷いものだった。
「団長、私達は町の人々の手当てにまわります」
「あぁ、頼んだ」
町中で生きている人を見つけた場合、私の魔法で手当てし、レイラ様のところへ連れて行く手筈になっている。もし、私の魔力でも治せない人がいれば、できる限り治療した後レイラ様に治してもらうのだ。
町に入るとすぐに怪我をした人々が目に入る。
一気に魔法で治すこともできるが、範囲を広げれば広げるほど魔力の無駄が増えてしまう。なので、今回のような大人数を治療する時は範囲を狭めて何回も魔法を使うのだ。
「光魔法 効果任意 前者5名」
取り敢えず、目の前の5人に向かって魔法を放つ。
「効果任意」は、その人に適した魔法効果を自動で発動させる高等技術だ。
使用魔法を完全に使うことが出来なければ、発動できない。
光魔法の中で、怪我の治療に使われる魔法はヒール、ミドルヒール、ハイヒールがある。
本人の魔力量に効果が左右されるため、一概には言えないけど、ヒールが擦り傷や切り傷。ミドルヒールが骨折や体の一部の欠損。ハイヒールになれば瀕死の怪我を治す。
ただ、ハイヒールは込める魔力量が半端なく、1人の治癒師が全ての魔力を使って発動できるかどうかというものだ。
ちなみに、光魔法は他にも、解毒、解呪などができ、効果任意ではその人の状態にあった効果全てが発動する。人の状態異常を治す以外には、ライト、聖光防御、闇魔法の打ち消しなんかもある。
「5名治療完了。運んで」
「「はい」」
今回、私の下で一般人を運ぶ役割の騎士が5人。
2人の騎士が、それぞれ2人ずつ軍馬に乗せて運んでいく。
ちなみに、今回私達が使う事がゆるされた軍馬は、軍最高峰の軍馬だ。速さはもちろん、3人の大人を乗せても大丈夫な体を持つ特別な馬達だ。
まあ、今そんな事はどうでも良い。
「光魔法 効果任意 前者3名」
私はひたすら魔法を発動し続けたのだった。
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