9話 決戦前夜
レイラ様が、今回応援部隊として派遣されたくない者は派遣しないと言ったが、聖女護衛騎士団員全員が派遣されることに同意した。
2、3人は嫌がると思っていたので正直驚いた。
会議の次の日、私達は朝早くから荷物を纏め、昼頃に出発する。
レイラ様も馬車に乗る事なく、とにかく速さを重視する。
ただ、ヘトヘトで戦場に向かっても戦力にならないため、適度に休憩を入れつつ目的の町に向かう。
ただ、今この瞬間にも人が亡くなっているかもしれないと思うと、中々体を休められず、段々疲労が蓄積していく。
それは他の騎士達も同じで、少しずつ皆の顔が険しくなっていき、口数も少なくなっていった。
「よーし。今日はここで野営する」
王城を出て3日目。
明日には目的の町に着くから、今日こそ体を休めなければ。
だが、そう思えば思うほど目が冴える。
自身の野営テントから出て、空を見上げる。
この国では、亡くなった人は100年間、星になると言われている。その後、また再び人として生まれて来るのだ。
そう思いながら見上げると、嫌になるくらいの満天の星だ。
いつもより星の数が多いように感じるのは、魔人の襲撃によって死んだ者達が数多くいるからだろうか。
「はぁ…自分の思考が嫌になる」
「全く同感だな」
まさか独り言に返答が返ってくるとは思わず、ビクッとしてしまう。
声の方向に向くと、2つの湯気が立ったカップを持って、クリフが立っていた。
「ほら。体あったまるぞ」
「…ありがとう、ございます」
ホットミルクだ。牛乳は痛みやすいから、夕方に少しだけ立ち寄った町でもらった物だろう。
有り難く頂戴し、コクっと一口飲む。
「明日にはこの星達の1つになっているかもしれない。そう思っているんだろう?リーファ副団長」
「…クリフ団長」
この人は本当に鋭い。どうやったら人の気持ちをドンピシャに当てられるのだろうか。
「お前は結構、考えが顔に出てるぞ。星空を睨みながら見上げていたら、誰だってどんな気持ちか想像がつく」
ククッと笑いながら話す彼は今、一体どういう心境なのだろうか。
「俺はレイラが好きだ」
突然の告白に何も言えない。
「今回、全員で帰られる可能性はないに等しい。俺はレイラを守るためなら、団員の命も、自分の命も、何を犠牲にしてもレイラを守るだろう。その時、どんな非情な決断をしたとしても後悔はしないと思う。だが、心が痛まないわけじゃない」
「……」
何か言葉をかけなければと思うが、どんな言葉をかければ良いか分からない。
「明日はいよいよ魔人と戦う事になる。もう寝るぞ」
団長は、明るい声で言うと、パシッと自身の膝を叩いて立ち上がり、自身のテントへと戻っていく。
「私も寝なきゃ」
独り言を呟いて、私もテントへと戻ろうとした時だった。
「………っ!!」
突然視線を感じ、振り返るが誰もいない。
「…気のせいよね。明日は戦いになるから過敏になっているんだわ」
そのまま私はテントに戻るのだった。
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