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5 《スノウ》
自分の名前の意味を知ってからというもの、自分が嫌いになった。
もっとも私は「それ」を見たことはないのだけど。
だって生まれてから今まで、空から降るものといえば、紅い閃光だったり、灰だったり、ときには黒い雨だったり。
でも「それ」は「とてもとても清くて美しいものよ」と死んだ母は言っていた。
だけどそれも、幼い日のおぼろげな記憶。
それから長いときが経ち「それなら汚し甲斐があるな」とあの夜、私の名前を知った人は嗤った。
私もそうだと思った。
そして、ますます、自分が嫌いになった。死にたいほどに。
助けて。ここから誰か連れ出して。
いつしか、そう叫ぶことも、もがくことも、忘れていた。
忘れたいことは、増えていくばかりだったと、いうのに。
そんなある日、唐突に、戦争は終わった。




