1 《イヴァン》
戦争が終わったら、俺の顔の半分は、機械になっていた。
「よお、イヴァン、気が付いたか? 気分はどうだ?」
見覚えのある軍医が、意識を取り戻した俺に呼びかける。
ここは軍の医療施設か。
それはつまり、俺は生きているということだ。
俺はようやくそこで、記憶の最後に残る閃光を思いだし、あの宇宙船の爆発の中、よく生き延びたものだと自分で己の運の良さに感心する。
「まったくお前は悪運が強い。あの敵襲での生き残りはお前だけだ」
「そうか、皆、死んだか」
集中治療室の白いひかりのなか、俺は、戦友たちの顔ひとりひとりを思い出しながら、呟いた。
「ああ、だがお前だって無傷じゃないぞ。今は分からないだろうが、お前の顔の右半分は吹き飛んじまったんだ」
「そうか、じゃあ俺の顔は、もはや機械か。科学技術の発展に感謝だな」
努めて皮肉っぽく言い放ってやったつもりだが、通じたかどうか。
ともあれ俺はリハビリに励み、その甲斐あって一ヶ月後には退院となった。ただ、身体は使い物にならないということで、軍は退役、お役御免となったが。
そして、さて、これから、どうしようかというところで、彼女に出会ったのだ。