表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/357

幕  間 熊の胆顛末

 ~No-Side~


 王都に戻って来たネモが深い考えも無しに(くす)()ギルドに売り払った、巨大バイコーンベアの(くま)()は、(あん)(じょう)(くす)()ギルドで盛大に物議を(かも)していた。



「……どこからどう見ても、普通のサイズじゃないな」

「あぁ……ネモは何も言わずに置いていったが」

「彼はなぁ……解っていて置いていったのか、全く気が付いていないのか、判断しにくい部分があるからなぁ……」

「大きい事は承知していても、気に留めていない――という可能性もあり得るぞ?」

「う~む……」



 冒険者見習いの身でありながら、大水蛇(ヘイラーダ)だのメデューサボアだのスキップジャックヴァイパーだのといった蛇系の魔獣を立て続けに狩っているネモの名前と業績は、冒険者ギルドのみならず(くす)()ギルドや皮革ギルド、魔導ギルドにまで鳴り響いている。「蛇狩り職人」などという称号まで頂戴したそうだが、その手並みが蛇に限ったものではない事も知られている。大っぴらにはできないが、ディオニクスを丸焼きにしたという――ネモ以外であれば信じられない――逸話の持ち主でもあるのだ。

 しかも、当人がその事――自分が規格外だという事――をまるで理解していない。ちょっと大きいだけの熊だと信じて疑っていない……という事も、大いに考えられるのであった。



「……まぁ、(ネモ)の事は一旦忘れよう」

「……だな。今はこの(くま)()の事に集中すべきだ」



 (くす)()たちは問題の(くま)()に目を()った。……通常よりも五割増しで大きなそれに。



「……一応言ってみるんだが……偶々(たまたま)でかいだけという可能性は……」

「無いな。偶々(たまたま)で済ませられる大きさじゃない」

「うむ。偶然でなく必然。そう考えるべきサイズだろう」

「とすると……その必然をもたらした原因が問題になるわけだが……」



 そこまで話が進んだところで、(くす)()は黙り込んだ。この先待ち受けている結論を口にするのが(はばか)られるというように。



「……他の魔獣か……或いはその魔石を喰らって急成長した。……そう考えるよりあるまい」

「……だな」

「胆だけでこのサイズなんだ。本体もそれ相応に巨大だった筈だが……」

「〝蛇狩り〟ネモには問題にならんのだろうよ。いや……この場合は〝鉄風〟と言うべきか」

「〝(らん)(じょう)〟かもしれんぞ? 或いは〝恐怖の大王(アンゴルモア)〟かも」

「……一応肉は食える筈だから、〝食卓の番人〟が顕現したのかもな」



 ――と、一頻(ひとしき)り現実逃避が済んだところで、



「……まぁ、コイツに限って言えば、ネモが狩ってくれたわけだから一安心だが……」

「だとしても、一応は国王府の方に報告するしかあるまい」

「うむ。魔石を与えて魔獣を巨大化させるというのは、謀略戦の手段として、一頃(ひところ)()く使われた手だからな。……効果が不確かに過ぎるとして、今では(すた)れた手ではあるが」

「だが、その懸念がある以上、我らとしても黙っておるわけにはいかん。……彼に迷惑がかかるのは不本意だが」

「……国王府に直接報告するのではなく、先に魔導学園の方に報告するか? 彼は魔導学園の生徒なんだし、頭越しにするのは角が立つだろう」

「国王府には魔導学園の方から報告してもらう……そうだな、その方が良い」

「うむ、そうしよう」



 ――と、一応結論が出たのだが……



「……それにしても、惜しいな」

「あぁ、胆がこれだけのサイズなら、魔石はどれだけ大きかったか」

「地元の商人に売り払ったそうだが……王家だけでなく魔導ギルドも執着しそうだな」



 ――後日、魔導学園の教師陣からネモが追及を受ける事になるのだが、それはまた別の話になる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ