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第二十二章 ウォルティナの町にて 3.祖父・ゼハン(その2)

 ~Side ネモ~


「……ラティメリアの商人?」

「うむ。確か……ハラディンとか名告(なの)っておったな」


 ハラディンって……あの(・・)ハラディンか? エルの叔父の? アスランの腹心として、将来アスラン軍の補給関連を司る?


「つい昨日会って話したんじゃがな。大水蛇(ヘイラーダ)の皮を探しているようじゃった。ウォルティナの町(こ こ)で探すより、タイダル湖に出向いて水産ギルドと直に交渉した方が早いと教えてやったんじゃがな。そこまでの時間は取れぬと残念そうじゃった」


 あ……あっぶねぇ~……。下手するとハラディンとバッタリご対面……なんて事になってたのかよ。冗談じゃねぇ。これ以上妙なフラグを立てて(たま)るか。


「それで唐突に大水蛇(ヘイラーダ)の素材なんて言い出したのか……」

「需要があるなら供給があって然るべきじゃからな」

「水産ギルドの手前もあるしなぁ……代わりと言っちゃ何だけど……」


 丁度好いから熊公(バイコーンベア)の毛皮を押し付けたんだが……


「……また面倒臭そうなものを寄越しおって……一体全体、こんな代物をどこで手に入れたんじゃ?」

「正面から殴り合ったわけじゃないぞ?」


 ハーディボアの群れと争っている現場に()(くわ)したんで、巧く立ち廻って漁夫の利を得たんだと説明すると、最後には納得してくれた。


「……とりあえず出所を隠した上で、他所(よそ)の町で処分した方が良いじゃろう。じゃがな、ネモ」


 祖父ちゃんはジロリとこっちを向いて、


「多分ヴィクレムさんからも聞いとるじゃろうが、こうまでデカいバイコーンベアとなると、なぜ大きく育ったというのが問題になる。解っておろうな?」

「魔石を食べたとかどうとかの話か?」


 ヴィクレム祖父ちゃんも言ってたけど……そんなに気にするような話かね?


「魔獣化だの巨大化だのの原因としては、強い魔素に(ばく)()したというのが、一番ありそうな話じゃからな。魔石はその一つじゃが……必ずしも魔石が原因とは限らん」


 ふむ?


「魔力の(よど)みが現れたという可能性もあるからの」

「……それって、大事(おおごと)なんじゃないのか?」

大事(おおごと)じゃとも。(しか)るべき筋に報告する必要がある程度には、の」


 う~む……。面倒だから口を(ぬぐ)って知らんぷりしてようかと思ったんだが……それは(まず)いのか?


「まだあるぞ? 何者かが意図的に魔石を与えて、魔獣化や巨大化を促した――という事も考えられる。敵国内を混乱させる方法としては、()く知られた手じゃな」

「いや……そりゃ無いんじゃないのか? こんな僻地で騒ぎを起こしたところで、効果は薄いだろ? 実験という事も考えられなくはないけど、祖父ちゃんの話だと、それなりに確立された技術なんだろ? もう実験が不要なくらいには? だとしたら、今更ここで実験しても、王国が警戒を強めるだけで得るものが無いだろう?」


 ゲームでも、タイダル湖が陰謀の舞台になるイベントなんて無かったからな。


「ま、バイコーンベアの話は、(わし)の方でそれとなく流しておこう」


 おぉ、それは助かる。


「恐らくじゃが、バイコーンベア自体は大水蛇(ヘイラーダ)を何頭か食ったせいで巨大化したんじゃろう。大水蛇(ヘイラーダ)が多数発生した理由は不明じゃが……前例が無かったわけでも無いしのぅ」


 〝これは貸しじゃぞ?〟と言う祖父ちゃんに感謝して、この話はそれで打ち切りとなった。大水蛇(ヘイラーダ)一頭分の皮を供出したんだが……何か代金多くないか?


「水産ギルドやら仲買人やらの手数料や仲介料やらが無いからの。その分を上乗せしとるだけじゃ」


 おぉ……中抜き分を上乗せされると、こんな値段になるのか……


 ……だがまぁあれだな。水産ギルドや冒険者ギルドの場合は、手数料の上前をはねるというより、商業ギルドや職人ギルドとの伝手(つて)を確保しておくために仲介しているんだろう。それを考えると、ウォルティナ(こ こ)で祖父ちゃんにばかり売るのも問題だろう。……そこ、舌打ちとかしないように。

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