第二十章 スネーク狩り 3.報・連・相~討伐報告と貝殻素材の相談~
~Side 水産ギルド長~
ネモの坊主に話を持ちかけて二日後にゃ、坊主め大水蛇三頭の討伐報告を上げてきやがった。中間報告だなんて言ってやがったが、相変わらず手早いやつだ。これでまだ十二にしかならねぇってんだから詐欺だよな。来年にゃギルドに引っこ抜いて扱き使えると北叟笑んでたんだが……その前に国に引き抜かれちまった。まさか魔導学園に目を付けられるたぁ思わなかったぜ。
「もう少し数が揃ってから報告に来ようと思ってたんですけどね」
ネモのやつぁ気楽な感じで言うが、ギルドとしちゃあ討伐の進捗具合を掴んでおく必要があるんだ。狩ったその都度たぁ言わねぇまでも、もちっと頻繁に報告を上げてほしいもんだ。
しかし、二日の間に三頭かよ。ヘイラーダはどっちかってぇと見つける方が難しいんだが……ま、ネモは昔から規格外……つーか、埒外のところがあったからな。このくれぇなら普通か。
にしても……
「肉はともかく、魔石ぐらいは売ってほしいとこなんだがな」
「王都の魔導ギルドからも引き合いがあるもんで」
まぁ、魔導学園に入学したってんなら、そっちの方で使うか。
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~Side ネモ~
弟妹たちに狩らせたのと俺が狩ったのを合わせて大水蛇が三頭ほどになったんで、水産ギルドに討伐報告を入れに来た。討伐の証拠は頭なんだが、あまり数が多いと運ぶのも大変だからな。……あぁ、学園から【収納】持ちだって事はあまり触れ廻るなと言われてるから、えっちらおっちら頭を運んで来た事を見せておかなきゃならんからな。
にしても……ギルド長、魔石の事は口に出したが、皮の事は何も言わなかったな。お目零しって言うより、皮の状態を知らないんだろうな。
大水蛇を狩る時は、普通は大勢で囲んでボコっちまうからな。皮の状態なんて気にしてられんわ。実際、そうして狩った大水蛇は傷だらけになるからなぁ……
ま、俺としては余計な注文を出されないだけ気楽なもんだ。薄情なようだが、ここで皮の事を出しちまうと、後々面倒な事になりそうだからな。
おっと……折角ギルドへ来たんだから、貝殻の件を相談しておくか。
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「貝細工だ?」
「えぇ。王都でちょいと訊かれたんですよ。障りがあって詳しくは話せませんけど」
確か前世の記憶だと、貝ボタンの材料になってたのは白蝶貝・黒蝶貝・夜光貝……アワビにサラサバテイ(茶蝶貝)なんかも使ってた筈だ。あと、ボタンじゃないがハマグリが碁石に使われてた。シェルカメオなんてのもあったっけな。材料はマンボウガイ・トウカムリ・ホシダカラだったか。
前世だと南の海に棲息していた筈のシロチョウガイ・クロチョウガイ・ヤコウガイはともかくとして、アワビやハマグリならこの辺りでも採れるんじゃないか? ……俺は見た事が無いけどな。タイダル湖にゃいなくても、海にはいるのかもしれんし。
仮にも水産ギルドのギルド長なんだから、何か少しくらい知ってるだろ。
――そう思って訊いてみたんだが……
「いや、細工物の素材になるような貝殻ってんなら、殻もそれなりに厚いんじゃねぇか? そんな割りにくそうな貝を採るやつがいるもんかよ。んな苦労をしなくったって、他に食える貝は幾らでもあるだろうが」
……言われてみれば、そうか……
「細工の素材として使うったって、職人の当てが無きゃどうしようもあんめぇが」
……そうだよな。俺もこの辺りで貝殻細工なんて見た事が無いんだし。だったら職人だっていないよな。
「少なくともこの湖水地方じゃ、そんな貝の事を聞いた事ぁ無ぇな」
……こりゃ、ゼハン祖父ちゃんの伝手で探してもらった方が早いかもな。