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第二十章 スネーク狩り 2.弟妹たちの大水蛇(ヘイラーダ)狩り

 ~Side ネモ~


 一旦実家へ戻った俺は、親たちとも相談の上で、弟妹(チビ)たちに大水蛇(ヘイラーダ)を狩らせてみる事にした。勿論、俺が付ききりで指導するわけだが。

 俺が一人で大水蛇(ヘイラーダ)を狩ったのは十歳の時だが、狩り自体には七~八歳の頃から参加してるし、問題は無いだろ。


「丁度好い機会だからな。どうする?」

「――やってみる!」

「みる!」


 おぉ、弟妹(チビ)たちはやる気満々だな。


「今回上手く狩れても、自分たちだけで狩ろうなんて気を起こすなよ? 俺か父さんか祖父ちゃんと、一緒の時だけだからな?」

「「解ってる!」」


 よし。んじゃまぁ、連れてくか。



・・・・・・・・



 二人を連れて、大水蛇(ヘイラーダ)が目撃された場所に行ってみた。狩るにせよ何にせよ、見つけ出さなきゃ話にならんからな。俺は【眼力】で隠れている大水蛇(ヘイラーダ)を見つけられるけど、弟妹(チビ)たちはそういうわけにはいかない。地道に痕跡を探すしか無いので、知る限りの大水蛇(ヘイラーダ)の生態を教えてやった。


「――この辺りを川に向かって進んでいたというんだから、隠れ場があるのもこの辺りの筈だ。大水蛇(ヘイラーダ)の上陸地点は、大抵が巣の近くだからな。川岸の蔭を探してみろ」


 そう言って弟妹(チビ)たちに探させているうちに……見つけた。まだ魔物化して日が浅い個体のようだな。【隠身】のスキルも持ってない。これなら弟妹(チビ)たちでも見つけられるかも……とか思っていたら、


「……兄ちゃん、あそこのくぼみ、あやしくない?」

「なにかうごいたきがする」


 ほほぉ……俺の弟と妹は優秀だな。

 俺に狩りの事を教えてくれた猟師さんたちは【狩人の眼】というスキルを身に着けていた。【看破】の変種と言うか、狩りに特化したスキルらしいけど、さすがに弟妹(チビ)たちじゃまだスキルを得るには修行不足だ。しかしその代わりに――


「お前たち、多分【魔力操作】は憶えてるみたいだから、魔力を操る感じで怪しい場所を探ってみろ」


 俺の【眼力】の事は、家族にも内緒にしておかなきゃ(まず)い。弟妹(チビ)たちに【魔力操作】のスキルが生えてるなんて教えるわけにはいかないから、〝多分〟なんてあやふやな表現になってしまったが……弟妹(チビ)たちは別に疑問も抱かずに俺の言う事を聞いてくれた。素直な子に育ってくれて、兄は嬉しいぞ。


「……何かいるみたいなきがする」

「あたしも」


 どこだと訊いたら二人して同じ場所を指差した。間違い無く見えてるようだな。


「当たりだな。大水蛇(ヘイラーダ)は魔物だから、魔力を探る事で居場所も判る。ただ、魔物の中には魔力を隠す事ができるものもいるし、魔力を持たない熊とかには使えないから、あまり過信するなよ?」

「カシンって何? お兄ちゃま」

「えーと……頼り過ぎるなって事だ」


 ネイラにはまだ難しい単語だったかな。……さて、次のステップに進むか。


「居場所が判ったら、棒とかで(つつ)いて巣穴から追い出してやるんだが、その前に逃げられないように準備しておく必要がある。普通は川の上流と下流に網を張るんだが、今回は他に人がいないから、【施錠(ロック)】を使ってみろ」


 俺の【生活魔法】はあまり人目に(さら)すなと言われてるが、弟妹(チビ)たちの訓練は必要だ。川の流れを【施錠(ロック)】で抑える訓練をしておけと入学前に言っておいたんだが……さて、どこまで上達したかな? 一応ネロはワイルドベアー、ネイラも鹿くらいなら、不意さえ()けば短時間の足止めはできるらしいが……


「「やってみる!」」


 二人して川の流れに向けて渾身の【施錠(ロック)】を放ったが……まだ()き止めるまではいかないな。だが、言ってみれば水路に弱い結界を張ったようなものだから、突破するのは難しいだろう。


「よし! ネロ、【施錠(ロック)】が効いているうちに(つつ)き出せ! ネイラは【施錠(ロック)】が弱まった時に継ぎ足せ!」

「「うん!」」


 元気良く返事した二人が言われたとおりにして……おぉ、出てきたな。


「二人とも、大水蛇(ヘイラーダ)に【施錠(ロック)】をかけろ!」

「「はいっ!」」


 【施錠(ロック)】は名前のとおり鍵をかける魔法だと思われているが、俺は〝動きに制約を課す〟というのが【施錠(ロック)】の本来の効果じゃないかと思ってる。分子の動きを停めているのかと最初は思ったが、そんな事をすれば絶対零度の低温が発生する筈だ。なので今では、慣性とか摩擦力に干渉してるんじゃないかと(にら)んでる。……動物の筋肉にそんなものが発生するのかと言われると困るんだが。

 ともかく結論として言えば、【施錠(ロック)】は魔獣の動きを停める事もできる。ただ……状態の固定とか封印とか、そっち系の魔法という可能性もあるような気もしてるんだよな。魔法ってイメージが大切だとか教わったし……前世の記憶が原因で、俺のイメージってやつが平均より少しズレてる可能性も無視できないし……


 さておき、弟妹(チビ)たちも二人がかりでどうにか大水蛇(ヘイラーダ)の動きを停めたようだ。年齢を考えると大殊勲だな。

 あとはロープを掛けて引き摺り上げ、俺が首を()ねて終わりだな。さすがに弟妹(チビ)たちの腕力じゃ、まだ大水蛇(ヘイラーダ)の首を()ねるのは無理だ。


「ちゃんと【施錠(ロック)】を使えたな。俺が留守の間も真面目に練習していたみたいだな」

「「うん!!」」


 ちなみに【解錠(アンロック)】の訓練は、お互いがかけた【施錠(ロック)】を外す事をやらせている。「解錠(アンロック)」と言うより「錠前破り(ロックピッキング)」のような気がするが、スキル名は【解錠(アンロック)】のまま変わっていないのが或る意味凄い。この程度は想定内の使い方だって事なんだろう。


 大水蛇(ヘイラーダ)は頭を落とした後、皮を剥いで内臓を分けておく。頭と皮は一応ギルドに提出するが、肉と内臓は家族で食べる事にしよう。弟妹(チビ)たちの成長を考えると、魔獣の肉や内臓を食べておく事は悪くない筈だからな。


 さて、もう二箇所ほど目撃地点があったな。手早く片付けたいが……弟妹(チビ)たちの魔力量がそろそろ限界だ。今日はここまでにしておくか。


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