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第十九章 郷里 3.弟妹の指導計画

 ~Side ネモ~


 さて、そういう事情で弟妹(チビ)たちに――【生活魔法】以外の――魔法の()(ほど)きをしておこうという話になったんだが……弟妹(チビ)たちも【魔力操作】が生えてるみたいだし、魔力の動きを見せた方が早いんじゃないか?


「学園では色々な事を習ったけどな、今のお前たちにそれを説明しても解らんだろう。とりあえず俺が魔法を使ってみるから、魔力の動きを感じ取ってみろ」


 そう言ってやると、二人は真剣な顔で(うなず)いた。木火土風水の五属性魔法のうち、魔力の使い方が少し異なる木魔法を除いた四属性魔法の初級を使ってみせる。魔力の動きが判り易いように、やや大きめの魔力を込めてゆっくりと発動させる。魔法の理屈とかは後回しにして、魔力がどう動いているかだけを捉えさせる。


「……ボール系の魔法は大体こんなもんだ。魔力をエネルギー……各属性の力に変えて現出させ、それを放出する。……魔力の流れは見えたか?」


 俺の問いかけに神妙に(うなず)く二人。


「よし。だったらまず一人ずつ、同じように魔力を動かしてみろ。もう一人はその魔力の流れを観察、俺の時とどこが違うのかをしっかり確認する事」


「「はい!」」


 威勢良く返事して練習を始めたものの、やはりそう簡単にはものにできないようだ。飽き始めた頃合いを見計らって、学園で習った方法を教えたりもしてみたんだが……まぁ、俺だってどうにか発動できるようになったのは五日ほど経ってからだもんな。さすがにその日のうちにってのは……いや……魔力の流れを見る限り、いいとこまではいってるみたいなんだが……待てよ? ……試してみるか。


「ネロ、ちょっと試してみたい事があるから、もう一遍やってみろ」

「え……あ、はい」


 俺が背中に手を当てると、ネロは少しビックリしたような顔をしたが、俺の言うとおりもう一度トライした。……ここだ!


「ヒャウッ!?」


 俺の魔力をネロの魔力に同調させる事ができるかどうか試してみたんだが、上手くいったようだ。あとは……ネロの魔力を正しく動かしてやれば……


「わ! ……できた!?」

「わぁ! ちぃ兄ちゃま、すご~い!」


 おぉ……やってみるもんだな。ちゃんと指先に炎が(とも)ってるじゃねぇか。……【魔力操作】って、他人の魔力も動かせるんだな。


「よし、今の感じを憶えておけよ? 忘れないうちにもう一度やってみろ」

「うん!」


 その後は何度か失敗を交えながらも、ネロはどうにか火魔法の初歩、【灯火(トーチ)】の魔法をクリアーできた。ネイラにも同じようにして教えてみると、ネロより少し時間がかかったが、やはり同様にクリアーできた。これなら、俺がいる間に属性魔法の初歩ぐらいは何とか憶えられるかな?


「よし、後は各自で練習するんだが……他人に見られないようにしろよ?」

「「うん!」」



・・・・・・・・



 そうこうしているうちに(ひる)になったので、飯を食いに家に戻る。父さんと祖父ちゃんは漁に出ているし、昼飯は母さんと祖母ちゃん、それに俺と弟妹(チビ)たちだけだ。献立は既に決まっている。夏と言えば素麺(そうめん)か冷や麦だろう。この辺りじゃ小麦粉なんて贅沢(ぜいたく)(ひん)だが、それは俺が王都から土産に持って帰った。こういう時に【収納】は便利だ。(かさ)も重さも考えなくていいからな。乾麺など無いから手作りになるが、打ちたてが食べられると考えれば、多少の手間はご(あい)(きょう)だろう。


「お兄ちゃま、これおいしい!」

「小麦の粉って、こういう風にして食べるのね」


 ――いや、これが普通かどうかは知らんけど。


「夏に冷たいものを戴くというのは、ありがたいもんだねぇ。寿命が延びる気がするよ」

「大袈裟だな、祖母ちゃんは」

「大袈裟なもんかね。冷たくして美味しく戴ける食べ物なんて、そうそうありゃしないよ」


 ――あれ? そうなのか?


 ……考えてみれば、前世でも冷菜の類はそう多くなかったな。サラダはドレッシングが無いと美味くないし、冷たいスープはヴィシソワーズかとろろ汁くらいしか知らん……そもそも、冷たい主菜っていうのが少ないのか。冷や麦や素麺(そうめん)以外では刺身やコールドミート、サンドイッチ……(ざる)蕎麦(そば)殊更(ことさら)冷やしては食べないしなぁ。あとは白玉粉ぐらいか。……確かに少ないな。


「ネモ、これも魔法なの?」

「まほうがくえんって、こういうのも教えてくれるんだ」


 正確には神様からガチャで貰ったスキルだけどな。悪路を凍らせる以外にこういう使い方も……って、こっちの方が普通か。


「……まぁ、正規の授業以外にも、課外で色々教わったりするからな」


 ――そういう事にしておこう。


「肉もこういう風にすると、夏でも食べ易いわね」


 今回は甘辛く煮込んだものを、冷や麦の具にしている。濃い味付けが冷や麦に合うんだよな。あ、肉と言えば……


「母さん、マジックバッグが余ってるから、渡しておくよ。肉とか傷み易いものも、この中に入れておけば大丈夫だから」


 このマジックバッグ、実は春に王都へ行く途中に返り討ちにした盗賊が持っていたものなんだよな。使用者固定がかかっていたけど、【浄化(クリーン)】で簡単に解除できた。……知られると面倒になりそうだから、先生方には黙っているけど。

 俺は【収納】持ちだから使う機会が無かったが、そこそこ容量はあるから、魔獣の肉とか保管しておくのに便利だろう。帰って来る途中に少しは狩っておいたから、これもこっちのマジックバッグに移しておくか。

 何しろ魔獣の肉や内臓が、弟妹(チビ)たちの魔力の源泉なのかもしれんからな。俺がいない間の食材の確保は喫緊(きっきん)の課題だろう。その点マジックバッグなら、肉の保管には打って付けだ。干し肉や塩漬けなんかの保存食にする事も考えたが、栄養素はともかく魔素や魔力を保っておけるかどうかは解らない。

 入学後に思い付いて、缶詰ならぬ瓶詰めも実験中ではあるんだが……生活魔法の【浄化(クリーン)】で殺菌した後、同じく生活魔法の【施錠(ロック)】で密封――って……自分でやっておいて何だけど、本当に上手くいくのかね。【眼力】の鑑定によれば今のところは魔素の漏出も腐敗も無いが、少なくとも一年間は経過観察の必要があるだろう。


 あとは……授業で習った魔力水でも飲ませてみるか。魔石を水に浸けておく事で、水に僅かな魔力を帯びさせる事ができるそうだけど……。眉唾というより、効果は誤差の範囲なんじゃないのか? まぁ、魔石は結構余ってるし、試してみても悪い事は無いか。


 魔法以外でも、そろそろ護身術の手解きくらい、始めた方が良いかもな。

「ぼくたちのマヨヒガ」更新しています。宜しければご笑覧下さい。

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― 新着の感想 ―
[一言] 弟妹が入学した時に 「この子何者だ?……なんだあいつの弟(妹)か(理解放棄)」 って成りそうやなww
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