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第十七章 カソルの町 1.青二才(その1)

新年おめでとうございます。今年も宜しくお願いします。

 ~Side ネモ~


 帰省のために王都を発ってから五日、街道沿いの山の中を歩いていると、何か(わめ)くような声が聞こえた。


 ……面倒事(トラブル)の予感しかしないが、アルバイトとは言え冒険者ギルドの職員だし、確認くらいはするべきだろう。ヤバそうだったら尻に帆かけて逃げ出せばいい。何よりゲームでは、この場所で起きるイベントは無かった筈だ。そう考えて足を向けた先では……


「……テンプレなイベントだな。経験の浅い駆け出しパーティが、身の丈以上の魔獣を狩ろうとでもしたか……?」


 素人臭い四人組がバイコーンベアに立ち向か……おうとしているんだが、どう考えても相手は格上だろ? 剣士っぽいやつは腰が引けてるし、後衛も逃げ腰だ。いっそ逃げられるんなら逃げろと言いたいが……この距離では逃げ切るのは無理だろうな。

 俺がファイアーボールか何かで牽制して、バイコーンベアのヘイトをこっちに向けるか? その間に逃げてくれりゃいいんだが――とか考えていたら、熊公の方が痺れを切らしたらしく先に仕掛けた。剣を持つ手を振り払われて体勢を崩す剣士。

 ――あぁ、もう、見ちゃいられねぇ。


 何でだか【生活魔法】は見せるなと言われてるんで、火魔法のファイアーボールで牽制する。俺は【魔力操作】持ちで魔力量も多いせいか、初級魔法のファイアーボールでもそこそこの効果が出せる。着弾箇所に威力を抑えた【着火(イグニッション)】を同時に放って駄目押ししてやったら、熊公はあっさり沈んだ。これなら【生活魔法】だとは判らないだろう。


「大丈夫ですか?」


 怪我でもしてたら(まず)いだろうと思って、一応声をかけたんだが……


「あ……君が助けてくれたの?」


 後ろでへたり込みそうになってたお姉さんだな。ぱっと見には怪我(けが)は無いようだ。


「危なそうに見えたものですから。お怪我は?」

「えぇ、大丈夫……それより、そのマント。魔導学園の?」


 お? 学園支給のマントに気付いたか。帰省の道中は制服着用の事――って言われて、雨具兼用のマント――って、短いからケープって言った方が良くないか? コレ――を羽織っていたんだが……気付いたという事は、魔術師なのか?



「へぇ……魔導学園の生徒なんだ。道理で、見かけより威力のあるファイアーボールだったよね」


 こっちは斥候役かな? しかし……しくじったか。見る者が見れば、あのファイアーボール、おかしいと気付くのか。今後は注意しないと――と考えていたら、


「おぃっ! 勝手に割り込むんじゃねぇよ!」


 へっぴり腰だった剣士の兄ちゃんがいちゃもんをつけてきた。……さては、身の程知らずに熊公に突撃かましたのはこいつか? 軽く【眼力】で鑑定してみたが、バイコーンベアに手を出すのにはまるきり力不足だ。


「おぃこら、小僧! お前なんかが出しゃばらなくても、俺だけで……俺たちだけで狩れたんだよ! 上前はねようったって、そうはいかねぇぞ!」


 上前も何も、バイコーンベアには(かす)り傷一つ付けられていなかった。()(ろう)()(だい)もここまでくれば大したもんだと感心していたが、


「ル、ルイス、ちょっとやめなよ」

「俺たちだけじゃ危なかっただろう? 感謝こそしても……」

「あぁ? お前らまで、どこに目を付けてんだよ!? あと少しであのベアを叩っ斬るところだったろうが?」


 あと少しで叩っ殺される――の間違いじゃないのか?

 面倒なやつに関わっちまったと内心で嘆息していたところ――


「おいっ、無事か!?」

「アレンさん!?」

「どうしてここへ!?」


 ……パーティメンバーも驚いているようだが、俺も全く同感だ。

 何で「大陸七剣」の一人、「剛剣アレン」がここへ出てくるんだよ?

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― 新着の感想 ―
[一言] イキリストな兄ちゃんやな。 誰かが助けなきゃ全員死んでただろうな。
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