表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
眼力無双~目つきで苦労する異世界転生。平穏なモブ生活への道は遠く~  作者: 唖鳴蝉
第一部 一年生一学期~裏腹な新生活の始まり~
54/356

第十二章 ネモの金策論議 3.調薬の補習依頼

 ~Side ネモ~


 手っ取り早い金策にはならんが、先の事を見据えて調薬の技術は早めに身に着けておいた方が良いだろう。という事で、薬学と調薬基礎を担当するマーディン先生に、課外補習をお願いできないかと頼みに行く事にした。


「……そのつもりだったんだが……何でみんなが()いて来るんだ?」


 俺と一緒にいるのは、お嬢・ジュリアン・コンラート・アスラン・エル……要するに実習班の連中だった。


「あら、ネモさんが調薬の補習を受けるというのなら、便乗しない手はありませんもの」

「万一の事を考えると、薬草の使い方は知っておきたい。郷里(くに)の薬草ならまだ判るが、こっちの薬草にはそれほど詳しくない」

「これでも王族の一員として、戦場に出る覚悟は持っているからね。薬の使い方が文字どおり死命を制する事も聞いているし」


 それぞれお嬢・エル・ジュリアンの答だった。まぁ、そういう事なら俺に(いな)やは無い。


「それに、王族である僕からの頼みなら、マーディン先生も断りづらいんじゃないかな」


 おぉ、ナイス判断だ、ジュリアン。


 ――というわけで、俺たちはマーディン先生の教官室を訪れた。



 ********



 ~Side マーディン教授~


「ふぅむ……前倒しで調薬の実習ねぇ……」


 課外補習を行なう事があるのは事実だが、それは授業に()いてこれない生徒の救済措置だ。授業内容を前倒しで進めるような事は想定していない。()して調薬の技術を修得するためというのは……


「難しいでしょうか」


 妙な存在感を放って問いかけてくるのはネモという少年だ。あちこちで色々と話題を振りまいている有名人だし、何より私が担当している生徒だから、勿論顔は知っている。ただ……ここまでの存在感を発するとは知らなかった。威圧と言うまでには至っていないが……これは……ジュリアン殿下の要請以上に断りづらいな。


「その前に確認しておくが……調薬技術を得たい理由は?」

「皆それぞれに理由はあるみたいですが、自分としては身の安全を確保する手段は幾つでも欲しいというのと、もう一つはぶっちゃけ金策のためです。……将来的な、という意味ですが」


 これはまた……断りづらい理由を出してきたな。殿下や他の生徒たちは別の理由で受講を希望している事を(ほの)めかした上で、自分は金策目的だとあけすけに言い放ってきた。ここでネモ君だけを拒否したら、同行している殿下たちの顔を潰す事になる。何より安全保障を理由にされている時点で、学園の教官としては断れぬ。

 ふむ……


「ネモ……確か君は【収納】持ちだったね?」

「そうですが……?」

「条件が二つ。一つは私が薬草採集に出る時に同行して、その【収納】を役立ててもらいたい。【収納】に仕舞っておけば、新鮮な状態のままで持ち帰る事ができるからね」


 一応マジックバッグは持っているが、それに加えて【収納】持ちに同行してもらえるなら、それに越した事は無い。


「構いませんが……【収納】持ちの自分は、王都を離れる場合には事前に申請と許可が必要になるのはご存じですね?」

「あぁ、そっちは私の方で手配するから心配は要らん。で、もう一つの条件だが、この先授業で実際の薬草を扱う時に、助手を務めてもらいたい。……これは殿下たちも同じですぞ?」


 「調薬基礎」ではもうすぐ実際の道具を使った実習に入るが、毎年のように一時間では時間が足りなくなる。その分は直前の「薬学」の時間を潰して(まかな)っているのだが……彼らが助手として指導に当たってくれれば、少しは楽になるだろう。何しろ家柄・実力・威圧感と、それぞれの理由で反抗しづらい面々が揃っておるからな。



 ********



 ~Side ネモ~

 

 条件付きではあったが、どうにか課外補習をお願いする事ができた。ジュリアンたちの存在が役に立ってくれたようだ。こいつらと(つる)んでいて益があったのって、ひょっとして初めてじゃないか?


 そう言や、【収納】持ちという理由で俺が移動を制限されているのは、皆知らなかったみたいだな。驚いてるが……密輸に持って来いのスキルを持ってるんだから、警戒するのは当たり前だと思うぞ? ま、この世界の【収納】ってスキル、便利は便利だが、容量があまり大きくないみたいなんだよなぁ……精々が荷馬車一台程度って思われてるし。……俺? 余裕でそれ以上……家一軒くらいは入りますけど、何か?

 まぁ、そんなわけだから戦術レベルの物資輸送などは想定していないみたいで、どちらかと言うと品質を維持したまま運べる事の方が重要視されてるみたいなんだよな。けど、それもマジックバッグに取って代わられているのが現状だ。魔道具であるマジックバッグなら、魔石さえあれば誰でも使えるし、容量も大きめに揃っているしで、そりゃこっちの方が使い勝手が良いよな。

 だから【収納】持ちは、付与術を憶えてマジックバッグを作製した方が良い稼ぎになるらしい。……頑張ってみるか、「魔道具作製」。


 そう言えば……俺って器用値も何気に高いんだけど……調薬にも関係するのかね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ