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眼力無双~目つきで苦労する異世界転生。平穏なモブ生活への道は遠く~  作者: 唖鳴蝉
第一部 一年生一学期~裏腹な新生活の始まり~
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第一章 学園入学 3.能力測定前日(その1)

 ~Side ネモ~


 俺にとってのその凶報は、担任の()()無い一言から始まった。


「あぁネモ」

「はい?」


 話しかけてきたのは一年Aクラス担任のアーウィン先生。本業は王都の騎士団に所属する若手騎士で、学園へは出向という形でやって来ている。担当科目は格技で、長剣・短剣・格闘技の基礎を教えている。(さわ)やかなイケメンキャラだが、実は結構おっちょこちょいなところがある。ゲームでは、そんなところも女生徒に人気という設定だったが……


「君は確か特例進学生だったな?」

「そうですが……?」


 特例進学生というのは、「祝福の儀」における能力鑑定でユニークスキルを見出されて、王立魔導学園に入学した者の事だ。俺のユニークスキルはバレてないが、ユニークスキル持ちに特有の魔力特性を持っている事がバレたため、将来に期待という事でここに編入された。まぁ、ユニークスキル持ちというのは極めて少ないそうだから、少しでも可能性のある者は逃がさないという事なんだろう。

 ちなみに、ユニークスキル云々はゲームには出てこなかった設定で、少なくとも今年は俺一人らしい。


 ――で? それがどうかしたんだろうか?


「前回の能力鑑定から二年が経過しているという事で、正確を期すために明日再鑑定を行なうそうだ。一般進学生は受験の時に鑑定しているのに、君一人だけ二年前のデータというのは色々と問題だからな。成長期なのでステータス値が変化している筈だし、丁度好いだろう。詳しくはここに書いてあるから、読んでおくように」

「……え?」

「じゃあな。忘れるなよ」


 ぽいとプリントを放って寄越し、そのまま軽快に立ち去るアーウィン先生。


 ――いやちょっと待って!


 二年前は何とかなったけど、今回はあの時みたいに、鑑定水晶に(おどし)が通用するかどうか疑わしい……ってか、無理だから!

 魔法の専門家が揃ってる王立魔導学園(こ こ)で、魔法の専門家が見ている前で、眼力(ユニークスキル)を使って鑑定水晶とO・HA・NA・SHI……なんて、できるわけが無い! もしも実際のステータスがバレたら……即行で囲い込まれて籠の鳥だ! 冗談じゃねぇ!

 何とかして鑑定を誤魔化す方法を考えないと……ここは仮病か何かを使って検査をすっぽかし……いや、それだと問題の先送りにしかならん。ここは抜本的な打開策が必要だ。いっその事、夜のうち忍び込んで水晶玉を脅迫……駄目だ、潜入のスキルなんか持ってないし、万一見つかったら説明のしようが無い。


 ……手持ちのカードではどうにもならない以上……ここはユニークスキルに頼るしかないか? 今まで使った事の無い、【願力(がんりき)】というスキルに。



・・・・・・・・



 俺は今、(ひと)()の無い校舎の裏手に独りで来ている。今まで使った事の無いユニークスキルを初めて使おうと言うんだ。誰かに見られて不審に思われるのも面倒だしな。寮の俺の部屋は二人部屋で、詮索好きそうな何とかいうやつと相部屋になったから、自室でスキルを使うわけにはいかん。本来なら寮生は個室を貰える筈なんだが、入寮者が多い時などは、平民出身の寮生が二人部屋に廻される事があるらしい。不便と言えば不便だが、今更どうこう言っても始まらん。


 さて……問題は俺の前に浮かんでいる半透明なウィンドウだな。


《【願力(がんりき)】の発動条件を満たしています。使用しますか? Y/N》

《クーリングタイムは十日間です》


 初めてこのスキルを使うと言ったが、実は使おうとした事が無かったわけじゃない。ただ、《【願力(がんりき)】の発動条件を満たしていません》って表示されて、そこから先に進まなかったんだよな。スキルの説明文には、《一心に神に祈る事で、窮状を打開する力を得る》ってあったから、窮地に陥らないと発動しないとかの制限がかかっているのかもしれん。

 しかし……完全にゲームみたいな仕様だな、これ。俺が理解し易いようにという配慮なのか、それとも神様が見ていて面白いようになのか。……何となく後者のような疑いもあるが、俺だってこっちの世界を楽しんでいるんだから、文句を言えた義理じゃない。

 ともあれ、ここはこいつに頼るしか無いんだから、迷う事は無い。ポチっとな。


 思い切り良くYを押したところ、新たなウィンドウが出現した。


「神引き・通話・召喚……?」


 どうやらこの【願力(がんりき)】というスキルでは、三つのメニューから一つを選ぶようになっているようだ。SP(スキルポイント)というのを消費するようだが……「通話」の必要ポイント数が物凄い事になってるな。まさか……これって神様に繋がるホットラインなのか? そりゃ、必要SPも跳ね上がるわ。で、最後の「召喚」だけは文字が灰色になっている。どうやら今の俺には選べないらしい。


 となると、現状俺が選べるのは「神引き」しか無いんだが……何だろ、これ? 「福引き」なら聞いた事があるんだが……  


 説明文を読んでみると……神様版の福引きだった。要するに前世のガチャとか(ちゅう)(せん)器……ガラポンと同じか。SP(スキルポイント)を支払ってガチャを引き、アイテムやらスキルやら加護やらを得るようだ。当たったものを活用して上手く難局を切り抜けたら、ご褒美にSPが貰えるという仕様らしい。こういうところはゲームっぽいよな。

 しかもっ! 何と今ならSP還元セール中! これはいくしかないだろう! 規定のSPを支払って、いざガチャを回そうとしたタイミングで――

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― 新着の感想 ―
[良い点] 願力、仕様がユニークで驚いた。 [一言] 読ませて面白い。
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