第十章 校外実習 1.班分け
本日21時頃、「ぼくたちのマヨヒガ」更新の予定です。宜しければこちらもご笑覧下さい。
~Side ネモ~
中間試験から一週間後の水の日の四時間目から五時間目にかけて、俺たちは生物と美術の実習という事で、学園の外に出る事になった。こないだの恐竜の事もあるからだろうか、森に近い訓練場ではなくて、学園にほど近い農地という感じの場所だ。学園が所持している実習地の一つらしい。
今回の実習は幾つかの薬草などを自分で発見、スケッチをした上で採集するというものだ。それぞれの薬草がどういう場所に、どういう具合に生えているのかを自分の目で確かめる――というのが狙いらしい。前世でもよくあったやつだ。
それ自体は別に問題は無いんだが……これって班単位での実習なんだよ。
で……俺の班のメンバーというのが……
「……自分で言うのも嫌になるが……敬遠されたボッチどもの集まりって事だよな、この班」
「あら、聞き捨てなりませんわね、ネモさん。私のどこがボッチだとおっしゃるのかしら?」
「現実にどこの班からも誘われなかったんだろうが」
「家格というものがありますもの。仮令学園の実習でも、家格が下になる貴族家の方からは、私は勿論、殿下をお誘いするような不敬な真似はできないのですわよ」
「理由はともかく、現実にどこの班からもお誘いが無かったから、俺たちは此処に斯うして一絡げにされてるんだろうが」
そう言ってやるとお嬢は黙り込んだが……
(「……皆さん、奥床しいだけなんですわ。私が敬遠される理由はありませんもの――ネモさんと違って……」)
――聞こえてるぞ、お嬢。
そう。この班、選りに選ってAクラスの主役組で固められてるんだよ。
お嬢とジュリアンたちは家柄で、アスランたちは異国人という事で……そして、俺は目つきの凶暴さが原因で、それぞれあぶれる羽目になったんだろうな。まぁ、こいつらが似たような境遇の俺を気遣って、仲間に入れてくれたとも思えるんだが……それはそれとして――
「止ん事無き方々を差し置いて、何で俺が班長なんかやらなきゃならんのだ?」
「ネモ君が言うと皮肉にしか聞こえないね……」
――実際に皮肉だからな。
「理由は簡単だよ。遺憾ながら僕たちの誰もが、この手の野外活動に縁が無かったからさ」
肩を竦めて――主役組だけあって、何気無い仕草なのにサマになってるな――ジュリアンが説明してくれたが、
「おぃフォース、したり顔で言ってくれるが、それって別に自慢になる話じゃないからな」
「僕も別に自慢しているつもりは無いよ? ただ、現実にそうだというだけさ。たかが四番手に過ぎないとは言っても、外に出る機会はそうそう貰えないんだよ」
「王宮にだって雑草ぐらい生えてんじゃねぇのか?」
「雑草は生えてるかもしれないけど、授業で扱うのは雑草じゃないだろ? 小さな薬草畑はあるけど、そっちは人手が入ってるし……」
「あぁ……〝自然な状態〟ってのが無理なのか」
だったら他の連中はどうなんだと、視線を巡らせたんだが……
「付き人である私の事情も、基本的に殿下と同じでね。知識として知っている事はあっても、実際の生育状況は知らないし、それ以前に外へ出る機会もあまり無かった」
「花壇に植わっている花ぐらいなら諳んじてますけど、こういう野草の類は存じませんわね」
「だったらエルはどうなんだ?」
アスランは隣国の王子だったから事情はジュリアンと同じだろうが、エルは子供の頃は普通に生活していた筈だ。
「従者の身で主に指示など出せんし、それ以前に俺はこの国の生き物には詳しくない」
……それもそうか。……はぁ……将来巻き添えになるのを避けるためにも、「運命の騎士たち」の主役組とお近付きになるのは避けたかったんだが……だからと言って授業を蔑ろにするわけにはいかん。
「……俺がやるしかねぇか……」
「「「「「よろしくお願いします、班長」」」」」
……ちくせう。