第七十四章 帰省早々 5.強者vs強者
~Side ネモ~
ハラディンをどうにか丸め込んだ後、水産ギルドに戻る事にした。交渉結果の報告と、この件についてのクレームを届けなくちゃならないからな。
で――ギルド長に面会して、ハラディン所望の大水蛇の肉は、水産ギルドから融通するように話を纏めてきたと言ったら、
「あぁ? 勝手な真似をするんじゃねぇ!」
おっと、ギルド長は激オコのようだが、腹に据えかねてんなぁこっちも同じだ。言うべき事ぁ言わせてもらうぜ。それに第一、水産ギルドにゃ他の選択肢は無ぇんだ。そこんとこ気付いてんのか? ギルド長。
「なら言わせてもらいますがねギルド長。大水蛇の素材は、王都の三ギルド……薬師ギルドと魔導ギルド、皮革ギルドに卸す事になってる事をお忘れですか?」
王都の三ギルドを差し置いて、隣国の一商人に素材を融通するなんて事をして、三ギルドが黙っているわきゃ無ぇだろうが。顔を潰された三ギルドの相手、水産ギルドがやってくれんのか?
「いや……そりゃ承知してるが……肉はお前んとこで食ってんだろうが?」
あぁ……そいつを廻せば済むだろうと、安直に考えちまったのか。
けどなギルド長、問題はそんなとこじゃねぇんだよ。
「肉についちゃ自家消費をするからって事で、王都のギルドにゃお目零しを願ってるんですよ。それを、王都に一言の相談も無く勝手に、しかも他所の商人に融通する? あんた王都のギルドに喧嘩を売るつもりなんですか?」
マムシの肉だけでも騒ぎになったってのに、こっそり王子に融通した大水蛇の肉と内臓の事がどっかから漏れたらしく、あちこちの商会が血眼になってる事を教えてやったら、ギルド長の顔色が目に見えて悪くなった。
けどな、そんだけじゃねぇんだよ。解ってんのかギルド長?
貴族は素より王家だって、自分たちをスルーして他の国に大水蛇の肉を流すなんて聞いたら、面白く思わねぁなぁ当然だろう。その矛先は俺んとこに向くんだぞ? それとも何か? お偉いさん方の追及は、水産ギルドの方で一手に引き受けてくれるってのか?
――面倒な話はそれだけじゃねぇんだ。
「外務閥の貴族に話を通す事も無しに、隣国の商人に優先的に魔獣素材を流すなんて真似、外務の面子を潰すようなもんでしょうが」
それだけじゃねぇ。ハラディンのやつ、どうやらレンフォール公爵家の招きでこの国へ来たみたいだからな。騒ぎの原因を作ったって事で、公爵家にも矛先が向きかねん。……ってぇか、公爵家の足を引っ張りたい連中が、そこを突くなぁ目に見えてる。貴族間の不和を煽ったって咎も付きかねねぇんだ。
そうなった時、水産ギルドがきっちり始末を付けてくれんのか?
……そう言ってやったら、ギルド長の顔色が更に悪くなった。
そこまでの話とは思ってなかったみたいだな、やっぱり。
********
~Side 水産ギルド・ギルド長~
…………参った。
あの商人が大水蛇の素材が欲しいって言ってたから、深く考えずにネモの名を出したんだが……んな面倒な話になってるたぁ思わなんだ。
水産ギルドとしても王都のギルドの面目を潰すなぁ得策じゃねぇ。しかも何だ? 皮革ギルドに魔導ギルド、おまけに薬師ギルドだと? 全国規模の大手ギルドばっかりじゃねぇか。んなとこと正面切って喧嘩なんぞやっとれんわ。
なのにネモの坊主、駄目押しとばかりに……




