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第七十四章 帰省早々 3.強者vs強(したた)か者(その1)

 ~Side ネモ~


 水産ギルドに挨拶(あいさつ)に出向いたら、ギルド長から会ってほしい相手がいると紹介された。そこはかとなく嫌な予感がしたんだが、ギルド長直々(じきじき)に宜しく頼むと言われちゃ断りづらい。

 気の進まないまま渋々と、相手が泊まっているという宿に出向くと……(あん)(じょう)。待ち構えてたのはハラディンじゃねぇか。アスランの御用商人の。


 一体どうすりゃいいんだ? こんな展開、ゲームのストーリーにゃ無かったぞ?



 ********



 ~Side ハラディン~


 大水蛇の素材を求めてタイダル湖畔の水産ギルドに赴いたところ、〝ものが大水蛇狙いなら、丁度凄腕の狩人が帰省する頃合いだ〟と聞かされて、これ幸いと紹介してもらう事にした。その名前が「ネモ」だというのには驚いたが……(かね)甥っ子(エル)から聞かされていた怪人と同一人物だろうか? 子供とは思えぬ存在感の持ち主だという話だが……



・・・・・・・・



「ギルド長から紹介されて来た者ですが」


 ――そう言って自分の目の前に現れたのは、確かに〝子供とは思えぬ存在感〟……いや、威圧感(・・・)を放つ人物だった。

 ……エルのやつめ。それならそうと、はっきり言ってくれればいいものを。……いや、それは確かに、子供の〝威圧感〟だなどと言われても、まともに取り合わなかったような気もするが……


 まずこの少年――「少年」でいいんだよな?――は、背丈からして大人並みに高い。自分も背はそこまで高い方ではないが、その自分と目線がほぼ同じ……いや、少し高いくらいだろう。

 その彼の頭上に鎮座しているスライムからも挨拶(あいさつ)を受けたのだが……自分より高い位置からスライムに挨拶(あいさつ)されるというのは……これはこれで貴重な体験だと思っておこう。


 その全身から放たれる強者のオーラ――気のせいか、スライムからも同様のオーラが放たれているような気もするが――は(さて)()くとしても、前髪の間から覗く眼……あれが曲者だ。


 単に目付きが悪いとか鋭いとか……そんな月並みな言葉で片付けられるものじゃない。鋭く、力強く、異質で――それでいて禍々(まがまが)しさは感じられない。闘神という存在がいるのなら、きっとああいう眼をしているのではないか……そんな風に思わせる眼だった。

 彼にもその自覚はあるようで、前髪で隠してくれているのが幸いだった。あんな眼で真っ向から睨まれた日には、腰が砕けてもおかしくない。……なるほど、唯の子供だなどと侮っていい相手では確かにないな。

 エルだけでなく殿下からも、粘着するなと釘を刺されている事だし……ここは飽くまで一介の商人として、大水蛇の取引を持ちかけるだけにしておくか。



 ********



 ~Side ネモ~


 ハラディンの依頼ってのは、ギルド長が言ってたとおり大水蛇(ヘイラーダ)の素材の取引だったんだが、


「どちらかと言えば、こちらが欲しいのは(むし)ろ肉なんだが」


 ――と、言い出したのには驚いた。

 自分で言うのも何だが、〝大水蛇(ヘイラーダ)を食う〟ってのは世間的には悪食(あくじき)の範囲に属するからな。干して旨味を凝縮させてやれば結構いけるんだが、そのままだとちと水っぽくて大味だし。他に食糧食材が無いというんなら別だが、敢えて食べる必要を認めない――ってところだろう。

 それに、最近になって知ったんだが、大水蛇(ヘイラーダ)みたいな蛇型の魔獣は、仕留めた後()ぐに(さば)かないと「魔素酔い」ってやつを起こすらしい。俺は仕留めた直後に【収納】に突っ込んでたから気付かなかったが。


 何でそんな扱いづらいものを欲しがるのかと思って訊ねたら、


「いや、皮とかの素材は競争が激しくて手に入りにくそうだし、肉には滋養強壮の効果もありそうだから」


 ――という答えが帰って来た。

 確かに大水蛇(ヘイラーダ)の肉には滋養強壮の効果があるが、食材として認識されていない事もあって、それを知る者は――俺たち家族の他には――ほとんどいない筈だ。例外はレクター侯爵(ネイトさん)とミリィ、あとは王家(ジュリアンのかぞく)ぐらいの筈だが……

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干し肉にしたのが収納に入ってたりしません?
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