第七十一章 相乗り帰省道中記~五日目 カソルの町~ 2.冒険者ギルド(その2)
~Side ドルシラ~
ネモさんは留めを刺すかのように、地面に叩き付けられてバウンドした男の蟀谷を文字どおり一蹴して、男の身体を蹴り飛ばしておしまいになると、その場でジロリと辺りを睥睨しました。
「どうした? 〝生意気な王都のガキに、目上に対する礼儀ってもんを教えて〟くれるんじゃなかったのか?」
冷笑を浮かべて挑発し返すネモさんですが、地元の冒険者たちは皆一様に俯いて目を合わせようとしません。……当たり前ですわね。
苟も「大陸七剣」の一人、「剛剣アレン」と互角に渡り合ったネモさんです。同じく「大陸七剣」の一人、お祖父様の護衛を務める「双剣のレミディオ」も、ネモさんには一目置いているようですし。田舎の燻り冒険者如き、逆立ちしても敵う筈がありませんわ。
何はともあれ、良い見物でしたわ。得難い交渉カードも一枚手に入りましたし♪
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~Side ネモ~
カソルのギルドへ行ってみたら、去年の中二小僧はいなかったが、代わりに図体のデカいだけの燻り冒険者が絡んできやがった。この町にゃ碌な冒険者はいねぇのかと言いたくなるが、冒険者なんて大なり小なりこんなもんだろう。王都にも似たような奴がいないわけじゃなかったし。……ビルとマットとかいったっけか? 「フクロウの巣穴亭」で暴れてたやつら。
ま、それはそれとして……曲がりなりにも貴族であるお嬢たちが一緒にいるってのに、気にも留めずにやらかしやがったからな、このバカ。ここは同じ冒険者ギルドの末席を汚す者として、俺がケジメを付けなきゃ拙いだろう。ちょいと手荒い教育になるが、身から出た錆と思って諦めるんだな。
燻りが偉そうに上から目線で、
「生意気な王都のガキに、目上に対する礼儀ってもんを教えてやる」
――なんて抜かしやがったんで、
「そのチンケなお頭に、他人様に教えられるような上等なもんが詰まってんのか? 腹に較べりゃ大分ささやかみてぇだが?」
――と、少しばかり煽ってやったら、煽り耐性の無い単細胞だったらしく、逆上して殴りかかってきやがった。
身を躱し様に一撃入れてやってもよかったんだが、ここは一つ派手に決めてやるか。
殴りかかって来た手を押さえて引き倒す振りをしたら、奴さん慌てて身体を起こそうとしたんで、そのまま卓袱台返し……じゃねぇ、仏壇返しに決めて、喉輪から地べたに叩き付けてやった。
留めに一蹴りくれてやって、追加はいないのかと辺りを見廻したら……どいつもこいつも気後れしたように目を伏せて、こっちを見ようともしねぇ。突っ張り通す事もできないようなら、最初から喧嘩を売るなってんだ。
……こりゃ、あの青二才以外にも躾直しが必要だな。
関わっちまった責任もあるし、何なら手伝おうかとギルマスに言ったんだが、
「いや……それには及ばねぇ。……希望者がいりゃ別だがな」
一斉に顔を背けたところを見ると、参加希望者はいないって事か。多少不安と不満は残るんだが、あとはギルドに任せるしか無いだろうな。
あぁそうだ。お嬢たちの素性については、一言ギルマスに説明しておくか。場合によっては領主に釈明する必要もあるだろうしな。




