第七十章 相乗り帰省道中記~二日目 サラゴスの町へ~ 6.再びレンフォール家別邸(その2)
~Side ネモ~
そうすると、残るは〝遊ぶ時に使うもの〟――か。まぁ、子供への土産だと考えれば、当たり前のセレクトではあるな。
「あの『覆面チェット』をお考えですの? ネモさん」
あー……それも考えなかったわけじゃないが……
「アレは一応、フォースに献上したって体裁になってるからな。俺が勝手にどうこうするわけにゃいかんだろう?」
「それは……確かにそうですわね」
「それに、弟妹たちが寝食を忘れてのめり込む可能性が、無きにしも非ずってところがな」
「あぁ……それもありますわね」
前に二枚貝の貝殻でリ○ーシを作ってやったら、文字どおり寝食を忘れてのめりこんで、母さんから叱られてたからな。その後は父さんとヴィクレム祖父ちゃんまでのめり込んで、こっちはハンナ祖母ちゃんから叱られてた。……原因を作ったって事で、俺まで叱られたのは納得いかんが。
で――結局、○バーシ擬きは当面、ゼハン祖父ちゃんにも秘密って事になったんだよな。世の家庭の平和を守るためとかいう理屈で。
そんなところへチェットの新作なんぞ持ち込んだ日にゃ、何が起きるかは明らかだ。俺が大目玉を喰らう未来しか見えてこんわ。却下だ。
他だと……チンチロリンとか教えるわけにもいかんし……前世で子供の頃にやってたのは……投げ独楽、ビー玉、ミニボウリング、お弾き、綾取り、釘刺し、輪投げ、的当て、凧揚げ、毬突き……そんなもんか?
独楽は轆轤が無きゃまず作れんし、ビー玉やボウリングは球を作るのが難しい。手毬もそれは似たようなもんだ。釘刺しや的当ては、遊びと言うより投擲の訓練になっちまいそうだし……この世界で凧なんて揚げてたら、飛行系のモンスターが寄って来そうだしな。綾取りはあんまり憶えてねぇし、輪投げは……的を揃える方が大変そうだ。
消去法で残ったのはお弾きか? まぁ、あれならビー玉と違って球である必要は無いから、楽と言やぁ楽なんだが……前に硬貨を使ってやってみせたら、〝金を遊びに使うもんじゃない〟――って怒られたんだよな。後でヴィクレム祖父ちゃんに訊いたら、酒場で酔っ払いが似たような事をやるんだと。教育に悪いから止めとけって言われたんだ。
ガラスとかでちゃんとしたコマを作って、お弾きの復権を目指してもいいんだが……そこまでやるとゼハン祖父ちゃんが絡んできそうだな。
もちっと穏当に時間を潰せそうなのは……ジグソーパズルとかか? しかし、まさか絵や版画を切り刻むわけにもいかんしな。割れた絵皿でもありゃ代用できるか? だけど皿だと、破片を平面に並べても綺麗にゃならんからなぁ。……土魔法で皿の型を取って、台でも作れば何とかなるか? ……後でお嬢に訊ねてみるか。
最悪、俺が適当な絵を描くって手もある。絵心とか芸術センスは致命的なまでに無い俺だが、無味乾燥にして精確・写実な図面や見取り図は描けるんだよな。魔道具作製のメイハンド先生にも褒められたし。
あとは……楽器とかか?
ガラクタ市で手に入れた木材を使って、一応それっぽいもんは組んでみたが……
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~Side ドルシラ~
フェリシアを交えての相談の後でネモさんから、割れた絵皿は無いかと訊ねられました。
そんなものをどうするのかと怪訝に思っていたのが、顔色に現れていたのでしょうか。破片を並べて元の絵に直す、暇潰しの遊びに使うのだと説明されました。ネモさんは「難問」と呼んでいましたけど。
本来は絵などを細かい破片に分割し、バラバラになったそれを並べ直して元の絵を復元する遊具なのだそうです。……学者が破損した陶器や骨格化石を復元する時にも、同じような事をするそうですけど。
ネモさんは――例によって――旅人から聞いただけだとしらばくれるおつもりのようですけど……無理というものですわよね。
生憎と割れた絵皿は無かったので、ネモさんのご希望に添う事はできませんでしたが、もしも今後絵皿を割るような事があったら、ネモさんのおっしゃっていたような台を誂えて、挑戦してみるのも面白いかもしれません。




