第六十八章 卒業祭~楽日~ 6.捜索班編制【地図あり】
~Side ネモ~
当初より人数が膨れ上がった事で、これだけいるなら二手に分かれて捜索に当たるべきじゃないかとの意見が出た。確かにその方が効率的じゃあるんだが、互いに連絡が取れなきゃどうにもならんだろ? いざターゲットを確保って時になって、手勢が足りないなんて事になりかねんぞ?
「あら? 魔導通信機なら持っていますわよ? 私だけでなく、班の皆様方もお持ちの筈ですわ」
「マジか……」
これだからセレブってやつは……
まぁ、最大の懸案が片付いた以上、二手に分かれないって手は無ぇか。
ジュリアンの護衛戦力をそれなりに手厚くする――ついでに護衛対象を一つに纏める――必要があるのと、捜索戦力を有効に活用するという観点から、俺とお嬢はジュリアンたちと別行動って事になった。……正直、釈然としねぇ部分もあるんだが、面倒事を他へ押し付けられるってんなら、願ったり叶ったりの部分もある。俺は黙って頷いておいた。
「それでもまだ人数が多くないかな?」
――と、護衛対象の王子様が不服そうに宣いやがったが……心配すんな。面子の振り分けについちゃ考えてあるからよ。
「ナイジェルとクラリスは冒険者ギルドへ走れ。事情を説明して、それとなく怪しいやつの動きをチェックしてもらうんだ。派手にやり過ぎると、子供が始末されちまう虞があるから、気を付けるように伝えろ」
「わ、解った」
「あたしたちもゆっくり行った方が良いの? 目立たないように」
「いや。お前らが走る分には問題無い。何かのお遣いだと思われるだろうからな。ただ、学園の制服は一応脱いでおけ」
「伝えた後はどうするんだ?」
「サブマスかギルマスの判断に従え。何も言われなかったら自主判断で捜索に廻ってもらえると有り難い」
「「解った」」
お次は、
「アグネス、悪いが教会に行って、孤児院にそれらしい子供が保護されていないかどうか確かめてもらえるか?」
身包み剥がれて保護されるルートも一応あったからな。手を打っておいて悪くはないだろう。
「解りました。他の孤児院にも注意してもらえるよう伝えます……こっそりと」
「おぅ、頼む」
さて、
「レベッカ。話に聞いたところじゃ、下町にも顔が広いそうだな。その伝手を使って、噂噺を然り気無く訊き込んでもらえるか?」
「わ、解りました。然り気無く――ですね?」
「あぁ、然り気無く――だ」
俺とジュリアンのどちらのチームに入るか選ばせたら、躊躇無くジュリアンチームを選びやがった。面倒が無くて良いっちゃ良いんだが……何だかなぁ……
アグネスの護衛はどうするって話になったが、途中までナイジェルとクラリスが送って行くって事で収まった。
[王都オルソミア地図]
人数は減ったが、騎士学園の二人にレオまで加わってるんだ。護衛戦力としちゃ充分だろ。俺もまぁ、お嬢一人の面倒くらいならどうにかなるだろうし。頼りになるヴィクもいるからな。
『まかせてー』
んじゃまぁ、門番を出し抜いて出発するか。