第六十八章 卒業祭~楽日~ 5.援軍徴募
~Side ネモ~
妙な成り行きで、お荷物抱えて迷子捜しをする羽目になっちまった。このイベ、前世の腐妹が雑にすっ飛ばしたせいで、俺も詳しくは知らんのだよなぁ。王子が俗界で迷子捜し……なんて展開、あったっけか? このイベントに王子襲撃ルートが無かったのは確かだと思うんだが……
万一の事を考えると、手持ちの戦力は厚くした方がいいな。こうなりゃ他のやつらも巻き込もう。毒を食らわば皿までだ。
ゲームだと、確かこっちで蜷局を巻いてやがった筈なんだが……いたいた。
「おぅお前ら、暇してんならちょっと付き合え」
「「「「「ネ、ネモ(君)?」」」」」
お~し、ナイジェルにクラリス、アグネスにレベッカ、ついでにレオの五名様ご案内~。
斯く斯く然々と事情を話したら、すんなりと協力を得る事ができた。狙いどおりだ。何だかんだと柵の多い貴族組とは違って、ゲームでもこいつらは動かし易かったからな。これでちったぁマシになるだろう。
新たに五人を加えた事で大所帯に膨れ上がっちまったが、ま、手分けして動くのに充分な人数が揃ったと思やぁ悪くない。いや寧ろ、手分けして動く事を考えるんなら、もちっと多くてもいいぐらいだ。
んな事考えながら歩いてたら、ひょっこりと面白いやつにぶつかった。これも神様のお導きってやつか?
「おや、君は確か――」
「はっ! リスカー伯爵家の次男、エドマントにございます! 殿下におかれては、ご機嫌麗しく」
「うん、リスカー伯のご子息か。……そちらは?」
「ははっ! ジュード子爵家の次男、イーサック・ジュードと申します」
んー……お嬢の友達のシェルミーネ・リスカー、その野菜嫌いの兄貴だったな。年末の舞踏界で挨拶してもらったから憶えてるが、野菜嫌いは治ったのか?
で、隣にいたのはその友人か。イーサック・ジュード……ゲームにゃ出て来なかったと思うが……何かユダヤ人っぽいネーミングだが、隠しキャラか何かじゃないだろうな? 出自とかについて詮索すると、ヤバい地雷を踏むかもしれん。要注意だな。
まぁ、それはどうでもいいんだが……リスカー兄の友人って事は、二人とも「騎士」学園の生徒だよな? 護衛役にはぴったりじゃねぇか?
チラリとジュリアンに目を遣ると、微かに頷いていたから、俺と同じ思惑を抱いたんだろう。
俺たちが――騎士学園生二人の視点からするとジュリアンが――今正に踏み込んだどツボの事を話して協力を求めたら、あっさり同意を得る事ができた。
……チョロ過ぎて心配になるレベルだな。お嬢も後で複雑な表情をしてる。
とは言えまぁ……
「王子の身で軽率との誹りを受けるのは覚悟している。だがそれでも、反王室派の暗躍が懸念される時に後方で一人のうのうとしているというのは、オルラントの者としての選択肢には無い。非力な自分に力を貸してもらえないだろうか?」
……なぁんて事を真顔で言われちゃあな。騎士のタマゴとしちゃ受けるしか無いだろう。
「「この身に代えましても!」」
こんな風にジュリアンの面前で跪いて――だな。
正直、小芝居を見せられてる感はあるが、腐っても騎士学園だ。最悪でも肉壁ぐらいにゃなってくれるだろう。……スケート勝負の時を思い出すと、本当に〝腐ってる〟疑惑が首を擡げてくるのが困りものだけどな。