第六十五章 学園対決! 白銀の疾走~団体戦の決闘~ 3.500mを突っ走れ!
~Side 騎士学園チーム第二走者~
自信たっぷりに名告り出たから先鋒を任せてみれば……ただ鈍間なだけじゃ飽き足りず、すっ転んで敵チームにアドバンテージを献上しやがって……
まぁいい、あの無能は後で粛清するとして……既に敵選手とは百m以上……いや、二百mに届こうかという差が付いている。自分一人で挽回するのは厳しいな。向こうの選手も中々優秀らしく、距離を詰めさせてもらえない。……と言うか、今もぐんぐんと引き離されているんだが。
……あの極端な前傾姿勢のせいか?
あの姿勢を真似てやれば、自分も同じように速く滑れるのか……?
――いや! 自分は栄えある騎士学園の生徒であり、王国貴族の一員だ!
あんな無様な格好で滑るような真似をせず、正々堂々と戦って敵を下すのが、栄光ある騎士の進むべき道だ!
……幸か不幸か、向こうの選手はそろそろ一周を終えて、次走者と交代するようだ。そして――次の走者は女子のようだ。
何でまた女子なんかをレースに参加させたのかは解らないが……多分、滑れる者がいなかったんだろう。
……少しばかり気の毒だが、勝負の世界に情けは無用! 選手交代後に、一気に距離を詰めさせてもらう!
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~Side ネモ~
ナイジェルのやつは着々とリードを稼いでるな。あいつの属性は闇と火で、風魔法は使えんが、基礎体力はエリックのやつより上だからな。スピードで言えば負けず劣らずってところだ。ぐんぐんと差を広げてやがる。
……こりゃ、騎士学園の二番手に留めを刺すのは、第三走者のクラリスの役目って事になりそうだな。女子なだけに持久力にはちと不安があるが、ノルマはコース半周だけだから大丈夫だろう。「運命の騎士たち プレリュード」の公式設定に従えば、俊敏性ならナイジェル以上だった筈だからな。
懸念と言えば……女子が前傾姿勢で走ってる後から騎士学園のやつらが追い縋って来た場合、乗馬服だとヒップラインが丸見えになる可能性があったんだが……後続との差は疾っくに二百m以上。直線コースの長さを超えているから、後から見られる心配は無いか。……寧ろ次のお嬢の時に、一周以上の差が付くのを警戒するべきかもしれん。
ま、女子二人にはあまり深く前屈みになるなと言っておいたから大丈夫だろう。何だったら、追い付いても敢えて抜き去らず、後から煽ってやるという手だって使えるし。……お嬢なら嬉々としてそっちを選びそうだな。
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~Side クラリス~
うっわー……
ネモ君に教わったとおりに滑ったら、速い速い。あっという間に景色を置き去りにしちゃうんだもん。
練習の時にも速いのは解ってたし、ナイジェルが滑ってるのを見てもそれは解ってたつもりだったけど……実際に全力で滑ると実感が違うわね。ナイジェルが息を弾ませてたのも納得だわ。
練習の時は普通に制服だったもんね。そのせいで、あたしもレンフォールのお嬢様も、あまり前屈みにはなれなかったし。乗馬服に着替えて遠慮無しに前傾姿勢になったら、こんなに速く滑れるだなんて……
……思えば今までの氷滑りの時は、他人にぶつかりそうであまりスピードなんか出せなかったもんね。ネモ君の実家は湖水地方で、川や池には不自由しないから、氷滑りも全力で楽しめたっていうんだけど……コレを体験したら、ちょっと羨ましくなるわよね。
学園の冬の受業で取り入れてくれないかしら?