幕 間 座右のメロディー考
今回解らないネタは、(生)温かい目でスルーして戴けると助かります。
~Side ネモ~
一学年最後にして最大の試練となる学年末試験が迫っているせいで、クラスの空気も緊張を通り越して悲愴なまでにピリピリしてやがる。いや――学園だって留年者や退学者を量産したくはないだろうし、普通に勉強してりゃ大丈夫な筈だぞ?
緊迫する空気を少しでも弛めようと思って、即興の替え歌を――某特捜隊のメロディーで――披露したのが裏目に出たらしい。
〝留年・留年・留年 胸に 広がる その不安~♪〟――と、鼻歌宜しく歌っていたら、何人かのクラスメイトが涙目で睨んできた。無邪気な冗談を笑い飛ばす余裕も無いたぁ……こりゃ思っていたより重症かもな。
……てかエリック、お前そこまで切羽詰まっちゃねぇだろうが。
「……だからと言って、不安が収まるわけでもないからな」
「あー……不安で夜も寝られず、試験の最中に居眠りするような事になっちゃ拙いか」
そう言って同意したら、エリックの顔色が更に悪化した。……失言だったかもしれん。
殊にエリックのやつは、試験後にある騎士学園とのスケート勝負の選手だからな。メンタルやコンディションに悪影響を及ぼすような事は避けるべきか。
虚ろな目をしてブツブツ言い出したエリックのやつをどうにか復帰させ、能く能く話を聞いてみると、事は貴族家の面子にも関わってくるらしい。留年どころか補習でも、貴族家としては不名誉の極みと見做されるらしい。過去には廃嫡とか除籍になったやつもいるってんだがら、こりゃ穏やかじゃねぇわ。
まぁ尤も、折角囲い込んだ魔術師の卵を追い出すような真似を、国が看過するわけもなく、厳しい「指導」が行なわれたらしい。今じゃそこまでの事はないようだが……
「その代わり雷が落ちるんだ……主に頭とかに」
「そうか……」
ド庶民の俺なんかにゃ解らなかったが、貴族は貴族なりに大変なようだ。
これがDクラスとかだと、〝国の金で学ぶ期間が伸びてラッキー〟……ぐらいに考えるやつもいるだろうが。
……いや……問題児のエディス・ニコラテス辺りは、それくらい考えそうな気もするな。
……まさかとは思うがエディスのやつ……態と留年したりはせんだろうな? あの危険人物と同学年なんてのは真っ平なんだが。
・・・・・・・・・
さっきの歌は何だったのかというヴィクの質問から、話はテーマソングへと転がった。
テーマソングというものをヴィクに納得させるのが、ちと骨だったけどな。
『マスターの テーマソングって なーに?』
『――俺の?』
いや、別にさっきの留年ソングが、エリックのテーマだなんて言った憶えは無いんだが。
まぁ、その誤解は後で解いておくとして、
『俺のテーマソングねぇ……』
考えた事も無かったが……何だろうな?
難しく考えずに、単にお気に入りの歌だとして……しょっちゅう口遊むような歌……心当たりが無ぇなぁ……
家族のお気に入りって事なら……弟妹たちは「水戸○門」、父さん祖父ちゃんは「帰って来た○ッパライ」、母さんは「矢切○渡し」がお気に入りだったんだが。……前世の歌を教え過ぎたか? いや、つまりは俺がそれだけ歌ってたって事なんだろうが……
俺の場合だと何なのかな? 「決断」とか「Que s○ra,sera」とかか? 「365歩のマ○チ」なんかも悪くないか?
いや……そう言えば前世の悪友が、からかい気味に歌ってたのがあったな。〝誰も~が 恐れる~ 目付き~があ~れば~〟って。……そうすると、一番の歌詞は〝学生~寮から~ 追放~された~〟になるのか? ……境遇的には合ってるんだが……やっぱり却下だな。
『あ~……ヴィク。残念だが、俺のテーマソングと言えるようなものは無いな』
『マスター さっきなにか うたってなかったー?』
『……気のせいだ』
『ざんねんー』
【蛇足な後書き】
ネモ『「宇宙○人ゴ……」の後に続くのが一文字か三文字かで、歳が判るらしいぞ』
ヴィク『ごじゅっぽひゃっぽじゃ ないのー?』




